アルゼンチンの運河が、突如真っ赤に染まる現象が話題に「ゴミのような吐き気を催す臭い」

  • 文:大村朱里
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Shuttertstock-Prostock-studio ※写真はイメージです

アルゼンチンの首都ブエノスアイレス郊外を流れる小川が2月上旬、突如として真っ赤に染まるという異常事態が発生した。「まるで血にまみれた川のようだった」と衝撃的な光景を目の当たりにした住民たちは、強い不安を訴えている。

この現象が起きたのは、ブエノスアイレス中心部から南へ約8kmに位置するサランディ。投稿された画像には、住宅地を流れる川全体が暗い赤色に染まり、不気味な光景が広がっている。さらに、地元メディアの報道によると、川からは強烈な悪臭が放たれ、住民たちの生活にも影響を及ぼしているという。

「ひどい臭いで目が覚めました。川を見ると、真っ赤になっていたんです」そう語るのは、サランディの隣町アベラネーダに30年以上住むマリア・デュコムスさん。「まるで血にまみれた川のようだった」と続けた。

また、アルゼンチン紙『ラ・ナシオン』は、その臭いを「ゴミのような吐き気を催す臭い」と表現。さらにデュコムスさんによると、この川は過去にも青、緑、紫、ピンク…さらには油のような光沢を帯びた色に変化していたという。

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原因は工場の化学物質? 住民の不安高まる

地元住民たちは、この異常事態の原因として、周辺にある工場や皮なめし工場からの化学物質が川に流れ込み、色を変えた可能性があると指摘している。

CNNによると、この小川は、アルゼンチンとウルグアイの間に広がる主要な水域、プラタ川へと注ぐ水路のひとつ。かねてより水質汚染が問題視されており、特にマタンサ・リアチュエロ川流域は「ラテンアメリカで最も汚染された水路のひとつ」と呼ばれるほど深刻な状況にあるのだという。

当局は汚染対策のため、下水や工業排水の流入を防ぐ大規模な公共事業を発表しているが、今回のような異常事態が発生したことで、住民の不安はさらに高まっている。

専門家「規制と取締りの欠如が原因」

ブエノスアイレス出身で、1990年代に環境コンサルタントとして河川や土地の修復プロジェクトに携わったノースイースタン大学のモイラ・ゼルナー教授は、この汚染問題について次のように語る。

「正直なところ、驚きはありません。ブエノスアイレスの河川は長年にわたって深刻な汚染にさらされてきました。この状況が続いていることに、胸が痛みます」

彼女はさらに、「根本的な問題は、規制の不備と取締りの甘さにある」と指摘。適切な対策が講じられない限り、汚染は悪化する一方だと警鐘を鳴らした。

また、ブエノスアイレス州化学専門委員会の会長であるカルロス・コランジェロ氏も、化学物質の不法投棄が原因である可能性を示唆。

地元メディアに対し、「意図的に化学物質が流された可能性も否定できません」と述べ、事態の深刻さを強調した。

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【動画】真っ赤に染まった小川。