男性優位の音楽史に隠されていた才能が、その真価をあらわにする

  • 文:小室敬幸(音楽ライター)
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【Penが選んだ、今月の音楽】
『運命に選ばれて ~フランス17・18 世紀の女性作曲家たち~』

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ソフィ・ド・バルドネーシュ、リュシル・ブーランジェ、ジュスタン・テイラー ALPHA NYCX-10493 ¥3,300

欧米では近年、音楽の歴史を再考するべきだという問題意識が広がっており、19世紀以前に関しても白人男性以外の作曲家を再評価しようという動きが盛んだ。女性作曲家を掘り起こした本盤に収録された中で、J.S.バッハと同時代にルイ14世から寵愛を受けた作曲家ジャケ・ド・ラ・ゲールだけはまとまった作品が残っているが、それ以外は生没年が確定できない人ばかり。短い断片を聴くだけでも、彼女たちが作曲家として活躍できる可能性を秘めた存在であったことは明らか。社会がそれを許さなかっただけなのだ……。

※この記事はPen 2025年2月号より再編集した記事です。