「KAUNIS OLO」と名づけられたこの美しいサウナ。信じられないかもしれませんが、スパでもサウナ施設でも会員制のお忍びサウナでもなく、「おうちサウナ」なんです。
自動車・航空・宇宙などの分野で総合エンジニアリングをおこなう企業タマディック代表の森實(もりざね)敏彦さんのお家のサウナです。森實さんは日本で最初に会社の中にサウナをつくった方。名古屋の本社の最上階にすばらしいサウナをつくり、社員のみなさんだけでなく森實さんのご友人たちも多く訪れるサウナになっています。こちらがそのオフィスサウナ。

「僕の本業とは違う人たちが、うちの会社のサウナに入りにきてくれるようになって、サウナってこんな力があるんだって気づいたんです。一度サウナに一緒に入れば、一気に距離が縮まっていくんです。だから家にサウナをつくるならひとりふたり用ではなくて、4人くらい入れて、その後リビングでおしゃべりできるような空間にしようと思っていました」と森實さん。

そして今回、おうちのサウナが完成したとのことで、さっそく遊びに行ってきました。まず、わたしが「家サウナ」を思い浮かべる時は「箱のサウナ」なんですが、森實さんは最初から「箱サウナ」は考えていなかったそうです。
マンションのリノベーションをするにあたってデザインをお願いしたのが、建築家の谷尻誠さん。「見ただけで入ってみたくなる美しさ」というのをいちばんに考えて、谷尻さんと相談しながらこのかたちをつくり上げたそうです。
お茶を教えていらっしゃる森實さんの奥さま、有紀子さんの友人たちがお茶会でおうちに集まった時に、健康にも美容にもいい時間を過ごせる空間にしたくて、「サウナを茶室みたいにしたい」というコンセプトが固まったそうです。
ちなみに有紀子さんが「KAUNIS OLO」の名づけ親。フィンランド語で「Beautiful Feeling」の意味なんだそうです。確かに美しい気持ちになれるサウナそのものです。
それでできあがったのがこの雰囲気。これは森實さん、奥様、谷尻さんのテイストがばっちり合ったからできあがったんだろうなって思います。茶室のような引き戸を開くと一段目から座れるようになっていて、通路をなくしています。
そしてサウナ室はガラス張り。ガラス張りのサウナってまずガラスが熱くなるし、熱が外に逃げてしまうから無理なのでは?と思っていましたが、ここにも森實さんの工夫と考えが凝らされていました。
このガラス、「スーパースペーシア」という真空ガラス。なので、サウナ室の熱が外へ伝わらない構造になっています。サウナ室側のガラスは熱くなりますが、サウナ室の外側からガラスを触っても熱くないんです。
どうしてガラス張りにしたかというと、まずは美しいサウナが見えるようにしたかったのと、広く見えるということだったそうです。そしてサウナ好きならわかる気持ちなんですが、何人かでサウナに入ると、それぞれのタイミングになるので自分はまだサウナに入っているのに、友人たちは外で休憩している。そうなるとさみしいんですよね。特にプライベートサウナだと一緒におしゃべりしたいのに、バラバラになってしまって。それで森實さんはガラス張りにすることでサウナ室にいる人と水風呂に入っている人、そして休憩している人が遮断されない空間にしたそうです。

そして見た目の美しさだけでなく、その裏側まで美しくととのっているのが森實さんのサウナ。実は、サウナも水風呂もリモートで操作可能。スマホでサウナと水風呂をオンにできるので、外出先から家に帰るタイミングに合わせてサウナを熱々に、そして水風呂をキンキンに冷やしておけるんです。
森實さんの会社の方のサウナも全自動なんですが、つくってみて水風呂の盲点に気づいたそうです。水を自動で入れられても、栓をする、栓を抜くという手作業があるということ。なので、今回のおうちサウナではそれもシステム化したいということで、水風呂をリモートでオンにすると、まず電気でモーターが弁を閉めて、水が出る。水が溜まったら今度はチラーが動き出して水を冷やすという仕組み。これ、たぶん日本初、いや世界初の可能性ありますね……。

こんな信じられないサウナを家につくっちゃった森實さんがお話してくれたことで、すごく印象に残ったことがあります。
「人間が幸せになるのに大切なのは、2つ。健康であること。そして自分の近しい人といいコミュニケーションを取っていられること。これだけあれば幸せだと思うんです。サウナにはそれがあるんです。健康でいるってことと、近くの人と心の壁を取っておしゃべりすること、これがふたつともサウナで叶えられるんですよ」
大きな企業の社長さんであり、こんなすばらしいサウナ付きのおうちをつくれ、おそらくすべてを経験して、成し遂げてきた方が定義する幸せの基礎。それをできるのがサウナだと教えていただいて、自分がサウナが好きである理由がまた増えました。

文筆家、イラストレーター
コロラド大学大学院東アジア言語文明学科卒。2009年から外務省専門調査員として在シアトル総領事館勤務。在米中に出版した『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』がベストセラーとなり世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でもあり、フィンランド政府観光局サウナアンバサダーに任命されている。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA!』がある。
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コロラド大学大学院東アジア言語文明学科卒。2009年から外務省専門調査員として在シアトル総領事館勤務。在米中に出版した『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』がベストセラーとなり世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でもあり、フィンランド政府観光局サウナアンバサダーに任命されている。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA!』がある。
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