高級クチュールの代名詞「ディオール」と、テクニカルウェアの先駆者「ストーンアイランド」。一見すると相反するこの二つのブランドが手を組み、洗練された機能美と遊び心を併せ持つラウンドバッグを世に送り出した。このユニークな出合いを演出したのは、ディオールのメンズ アーティスティック ディレクター、キム・ジョーンズだ。

2024年フォール コレクションで実現したコラボレーションから生まれた本作は、両ブランドの個性を見事に調和している。最も目を引くのは、その愛らしいフォルムだ。まるで丸い月のような、コロンとした形状は、従来のラグジュアリーバッグの概念を覆す。この意外性こそが、「コロかわいい」という新しい魅力を生み出しているのだ。流線型のシルエットは現代的でありながら、どこか懐かしさも感じさせ、思わず手に取りたくなる衝動を誘う。さらに、スムースレザーの表面に施された繊細なエンボス加工が、このバッグの存在感を際立たせる。そこに刻まれた二つのロゴは、まるで異なる文化の融合を象徴するかのようだ。

機能面でも妥協がない。コロンとしたフォルムの中に、使いやすさを追求した大きなジップコンパートメントを配置し、日常的に使用する小物類を効率よく収納できるスペースを確保した。さらに、アウトドアからインスピレーションを得たというストラップは、長さ調節が自在。ピンバックルとスナップボタンで簡単に取り外せる仕様により、さまざまなシーンに柔軟に対応する。ディオールのもつ優雅さと、ストーンアイランドの実用性が、このユニークなフォルムの中で見事に調和を果たしていると言えるだろう。

カラーバリエーションは、イエロー、ブルー、そしてディオールの創設者クリスチャン・ディオールが愛したグレーの3色展開。これらの色彩は、両ブランドの「色彩の錬金術」とも呼ぶべき特別な調和を生み出す。特にグレーは、ディオールの伝統を受け継ぐ象徴的な色彩。クラシックな雰囲気と現代的なデザインの融合を、色彩の面からも表現していると言えよう。素材へのこだわりも抜かりなく、高品質なレザーを使用し、耐久性と上質な質感を両立させた。

このラウンドバッグは、ディオールとストーンアイランド、二つのブランドが紡ぎ出した新たな物語の始まりだ。そして、その物語の主役は、まさにこの「コロかわいい」フォルム。伝統と革新が織りなす美しい調和は、このユニークな形状に集約され、ファッションの新たな可能性を静かに、しかし確実に広げていく。

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©ETHAN HART