直行便で最も近いヨーロッパのフィンランドを訪れ、 サウナの本質に触れる

  • 編集&文:渡邊卓郎
  • 写真:齋藤誠一
  • コーディネーション:前田 順
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フィンエアーに乗って建築家・クマタイチさんがフィンランドを訪ねた。国民が愛する本場のサウナは、コミュニティの中心に位置していた。

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2000年以上の歴史を持つサウナ文化に触れると、日本との共通点が見えてきた。

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クマタイチ(左):ニューヨークの設計事務所勤務を経てTAILANDを始動。「隈研吾建築都市設計事務所」のパートナー・隈太一としても活動を行う。代表作に直島のサウナ〈SAZAE〉等。
田中亜土夢(右):1987年生まれ。新潟県出身。HJKヘルシンキ所属。サウナやサッカーなどフィンランドの文化を発信するサイト『MOI SAUNA』を運営。背番号は37(サウナ)。

日本からの直行便で最も近いヨーロッパはフィンランド。日本と現地を約13時間で結んでいる。そんなフィンランドで人を健康にし、人をつなぎ、人を惹きつけるのが「サウナ」。2千年以上の歴史を有し、約550万の人口に対しておよそ330万ものサウナがあるサウナ王国を建築家のクマタイチさんが訪れた。

今回、クマさんが訪れたヘルシンキでは強力な助っ人が待っていた。HJKヘルシンキ所属のプロサッカー選手、田中亜土夢選手である。まず彼が案内してくれたのは所属するチームの本拠地「ボルト・アレーナ」。スタジアムでのサウナ体験という特別な洗礼を受け、旅が始まった。

翌日はヘルシンキから電車でタンペレへ。フィンランドサウナのルーツがあるこの地では2つのサウナを訪ねた。湖畔に立つ公共サウナ「カウピノヤ・サウナ」と「アートサウナ」だ。

最初に訪れた「カウピノヤ・サウナ」は存在感を放つ巨大ストーブが名物。地元の人々のコミュニティの中心にある。市営ではあるが、施設を利用する寒中水泳クラブの有志が、サウナの掃除などの管理を行っているのだ。

「コミュニティ・サウナの理想形を見た気がします」とクマさん。地元の人と一緒にサウナで蒸され、アイコンタクトのコミュニケーションを図り目前の湖(水温2℃)に浸かり、解放を感じる。

続く「アートサウナ」は湖畔に静かに佇んでいた。「アートはソウルを、サウナは身体を癒やします」語るのはセルラキウス美術館のカタリーナさん。アートと建築と自然が調和するこの空間では自然に溶け合う感覚を得られた。

そして、フィンランド人もサウナの原点と語る伝統的な「スモークサウナ」も訪れた。通常のサウナは常に薪火でサウナストーンを熱し続けるのに対し、スモークサウナは閉め切った状態でサウナストーブを8時間ほど熱し、室内にこもった煙だけを逃がして余熱で暖まるというもの。その手間と効率の悪さからフィンランドでも減ってきているサウナ様式だが「クーシヤルヴィ・サウナ」はいまも伝統的なスモークサウナを守っている。“スモーク”という名の通りサウナ室の内部は真っ黒に燻されている。ロウリュウをすると、「ズン!」と他のサウナストーブでは聞いたことのない大きな音がした。その後に生まれる蒸気の気持ちいいこと。「ロウリュウの水蒸気がきめ細やかで驚きました」とクマさんも上機嫌。静寂の森とキラキラと輝く湖面に囲まれロケーションも完璧だ。

「サウナで裸のコミュニケーションができるフィンランド人と温泉を愛する日本人は、人と人、人と自然の距離の取り方が似ている気がします」とクマさんが言うように、温浴文化の古い歴史をもつ両国に共通点は多い。フィンランド同様にサウナ文化のあるエストニア、リトアニアも魅力的だ。フィンエアーならヘルシンキを経由して乗り継げる。まだ見ぬサウナに想いを馳せながら、クマさんのサウナ旅は続く。

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ボルト・アレーナ

田中亜土夢選手が所属するHJKヘルシンキの本拠地「ボルト・アレーナ」にも本格的なサウナがある。フィールドをレンタルすると選手でなくても利用可能。試合開催時にVIPルームを利用するとサウナに入りながらサッカーの試合観戦をすることができる。

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田中選手が毎日のように利用する選手用サウナを体験。「低めの天井高がもたらす熱の伝わり方とリラックスできるベンチのサイズが秀逸ですね! ちょっと採寸させてもらっていいですか?(笑)」と喜ぶクマさん。
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サウナの後にピッチの中央に横たわるクマさん。世界広しと言えど、競技場でこんな体験ができるのは、「ボルト・アレーナ」だけだろう。

Bolt Arena

住所:Urheilukatu 5, 00250, Helsinki
www.hjk.fi/info/bolt-arena

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カウピノヤ・サウナ

タンペレ市所有の施設として1977年に開業し、地元の寒中水泳クラブが掃除や管理を行う公共サウナ。一度火災で全焼したが2010年に現在の建物で再開した。男女共有のサウナ室の中にはおよそ800kgのサウナストーンが詰まった巨大ストーブが鎮座し、強烈な熱を生む。サウナ後は目の前のナシ湖に入水。地元コミュニティの皆さんに敬意を払って利用したい。10ユーロ(ビジター利用)

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Kaupinojan sauna

住所:Kaupinpuistakatu 1 A, 33500 Tampere
www:talviuimarit.fi

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セルラキウス美術館 

セルラキウス美術館」に隣接する「アートサウナ」は2022年オープン。“サウナ・ジャーニー”をテーマにして、暖炉のある休憩室からアートピースが飾られた回廊を抜け、一度外に出てサウナ室へと続く変化のある動線に心が躍る。「休憩スペースのつくりが豊かですね」とクマさん。通常は貸し切り利用で毎週火曜のみ誰でも利用できる公共サウナになる。13ユーロ(2時間)

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Serlachius

住所:Joenniemitie 47, 35800, Mänttä
TEL:+358 3 488 6800
www:serlachius.fi

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クーシヤルヴィ・サウナ

ヘルシンキから30kmほど離れたヴァンター市に位置する国立公園の森と湖に囲まれた「クーシヤルヴィ・サウナ」は2011年開業。現在では貴重になった伝統的なスモークサウナを大自然の中で堪能することができる。13ユーロ

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燻された濃厚な木の香りで幸せな気分になるサウナ室。「ベンチの下から取り込まれる光が美しいですね」とクマさん。
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サウナ小屋の前に広がるクーシヤルヴィ湖。周囲にあるのは森と湖とサウナのみ。熱された身体を湖に浸して森の風に吹かれると、自然の一部になれるような気がする。ちなみにこの日の水温は5℃。

Kuusijärvi Sauna

住所:Kuusijärventie 3 , 01260 Vantaa
TEL:+358 10 322 7090
www.cafekuusijarvi.fi/saunat

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ヘルシンキ中央図書館 オーディ

フィンランドのALA Architectsによって設計され、「世界でいちばん優れた図書館」に輝いた「Oodi」。長く暗い冬を過ごすためのコミュニティの場としての側面ももつ。

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『Helsingin keskustakirjasto Oodi』

住所:Töölönlahdenkatu 4, 00100, Helsinki
TEL:+358 9 310 85000
www:oodihelsinki.fi

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テンペリアウキオ教会

「岩の教会」として有名なテンペリアウキオ教会は、氷河期から残る天然の岩をくり抜いて1969年に完成。地中に天然岩が点在するヘルシンキの立地の個性を垣間見ることができる。

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Temppeliaukion kirkko

住所:Lutherinkatu 3, 00100, Helsinki
TEL:+358 9 2340 6320
www.temppeliaukionkirkko.fi

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ホテル セントジョージ

フィンランドの国民的建築家であるオンニ・タリアンが手掛けたヘルシンキのランドマーク的建築を改装し、2018年にオープン。洗練されたインテリアで統一され、スパやサウナも充実。

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Hotel St. George

住所:Yrjönkatu 13 00120, Helsinki
TEL:+358 9 4246 00 11
www.stgeorgehelsinki.com

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日本と北欧を最短最速で結ぶフィンエアー

羽田、成田、関西、今年運航を再開した名古屋とフィンランドの間を運航するフィンエアー。ビジネスクラスにはリクライニングを用いずにベッドポジションを実現する「レイフラットベッド」を採用。「シェルチェアに座っているような囲われ感のなか、仕事も食事も睡眠も快適に過ごせました。ファブリックが気持ちよく、手触りにもフィンランドらしさを感じます」とクマさん。ヘルシンキ空港のフィンエアーラウンジにはサウナ室も完備している。

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©AIRBUS

FINNAIR

www.finnair.co.jp

 

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