“神”と呼ばれる伝説の能登杜氏、農口尚彦の酒造りを追ったドキュメンタリー作品が配信中

  • 編集&文:佐野慎悟
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「酒造りの神様」と称される伝説の杜氏、農口尚彦の日本酒づくりに迫る初の長編ドキュメンタリー作品『NOGUCHI 酒造りの神様』が、各社動画配信サービスにて配信中だ。2023年の10月に一部のプラットフォームで公開された本作は、6月よりAmazon Prime Videoのサブスク配信が開始されたほか、AmazonCHマイシアタープラス、Hulu、Leminoなどでも配信されている。

能登杜氏四天王の一人に数えられ、「吟醸酒」ブームや「山廃仕込み」復活の立役者としても知られる農口尚彦は、引退と現役復帰を繰り返しながら、90歳を超えたいまもなお、現役で酒造りを続けている。蔵の中では「酒造りの鬼」とも称される農口の姿を、長期間にわたり克明に記録し続けた長編ドキュメンタリー作品は、次世代に残すべき貴重な映像資料でもある。

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1932年、石川県能登半島で杜氏集団の集落に生まれ、杜氏として働く祖父と父の姿を見て育った農口尚彦は、自身も16歳で酒造りの道に進み、28歳の若さで杜氏に抜擢された。2006年に「現代の名工」に認定され、08年には「黄綬褒賞」を受賞。2017年11月より農口尚彦研究所の杜氏に就任。91歳を越えた今もなお現役で酒造りを続ける。 写真:「NOGUCHI 酒造りの神様」より

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室温30度、湿度60%で保たれた麹室で作業する蔵人たち。彼らは酒造りを行う半年間は、農口とともに蔵で寝食をともにする。 写真:「NOGUCHI 酒造りの神様」より

10月の蔵入りから半年間、蔵人たちは全ての時間を蔵で過ごし、酒造りに没頭する。この年に集まった蔵人8名は、半数が酒造りの経験を持たない新人だ。70余年の経験をもつ農口は陣頭指揮を執りつつ彼らに酒造りのノウハウを託し、「山廃純米大吟醸」という大きな壁に立ち向かっていく。

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大吟醸の酒造りに使う精米歩合50%以下の山田錦。この年は大雨などの異常気象によって、酒米が品質が不安定な状態だった。農口たちは吸水の温度や時間を微調整しながら、理想の麹と酒母を追い求めていく。 写真:「NOGUCHI 酒造りの神様」より

大吟醸の淡麗さと、山廃の芳醇さという、相反する性質を併せ持たせる 「山廃純米大吟醸」というコンセプトは、「世界の人たちの価値観が変わるような酒を造りたい」という、農口の熱い想いが込められたもの。しかしその実現は、もちろん容易なことではない。

数ヶ月のうちに、身体つきや目つきがみるみる変わっていく新人たちの成長とは裏腹に、理想の麹づくりは困難を極めた。蔵人全員で日々試行錯誤を繰り返しながら、究極の酒造りはついに佳境を迎える。

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酒母の製造経過表。農口たちは毎日昼夜を問わず、2時間置きに酒母や麹の状態を確認する。 写真:「NOGUCHI 酒造りの神様」より

 

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70年以上酒造りを続けてきた農口の手。 写真:「NOGUCHI 酒造りの神様」より

90歳の名工と、最先端の施設。伝統の技術と、まったく経験のない若者たち。農口尚彦研究所の蔵の中で繰り広げられる日々のドラマを、農口尚彦の酒を片手に愉しんでみるのもいいだろう。

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農口尚彦研究所の酒蔵は、石川県小松市の山間の地、観音下町(かながそまち)にある。霊峰・白山に降り積もった雪が長い年月をかけて地層の奥深くに浸透していく過程で、ゆっくりと濾過された清らかな伏流水を、農口尚彦研究所では仕込み水として利用している。 写真:「NOGUCHI 酒造りの神様」より

『NOGUCHI 酒造りの神様』

監督/山中 有
出演/農口尚彦ほか 2022年 日本映画 77分
Amazon Prime Video、AmazonCHマイシアタープラス、Hulu、Leminoなどで配信中
https://noguchi.movie/