あらゆるところで細分化が進んだ2020年代。もはや絶対的な価値観が存在しないこの時代に、それでも「かっこいい」と断言できる男は誰なのか。
Pen最新号は『新時代の男たち』。ここ数年、あらゆるジャンルで多様化が進み、社会的・文化的にジェンダーフリーの概念も定着してきた。こんな時代にふさわしい男性像とは、どんなものだろうか。キーワードは、知性、柔軟性、挑戦心、軽やかさ、そして他者への優しさと行動力──。こんな時代だからこそ改めて考えてみたい、新時代の「かっこよさ」について。
『新時代の男たち』
Pen 2024年7月号 ¥880(税込)
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それぞれの個性を活かした、スターが躍動する時代
2020年代は、フェミニンな男性が市民権を獲得し、「草食系」「草系」と揶揄する行為も鳴りを潜めた。つまり、「男性かくあるべし」という単一の理想像が共有されなくなり、それぞれの活動やスタイルに焦点が当たるようになった、といえるだろう。
そんな時代の代表的な存在が、松村北斗。SixTONES(ストーンズ)のメンバーとしてアイドル人気を確立する一方で、三宅唱監督の『夜明けのすべて』(24年)や岩井俊二監督の『キリエのうた』(23年)など、作家性が強い映画作品で重要な役を任される。そして、インタビューや作中での立ちふるまいを見る限り、本人がそこに対して意識的ではなく、あくまで流れの中にいるような印象を与える。自らの活動範囲を限定しないフラットな姿勢は、現代らしい「かっこよさ」といえるのではないか。
彼と比較して、より土臭いクールネスを体現しているのが、横浜流星だ。なかでも、水墨画によって心の傷を克服していく主人公を演じた『線は、僕を描く』は必見。わずかな表情の変化で画面を成立させる演技は唯一無二。現在はディオールのジャパンアンバサダーも務めるなど、ファッションの世界でも認知されている。
主演作『シティーハンター』での原作に忠実すぎる演技が話題となった鈴木亮平は、オトナならではのかっこよさを放つ。人生の酸いも甘いも噛み分けるようなその目は、王道の色気を思い出させてくれる。SNSでは作品PRのために積極的に発信を行うなど、スクリーンの外側での信頼も厚い。
かつてのスターに必須の要素だった不良性を引き継ぐアイコンとして、キング・ヌーの井口理は欠かせない。ステージでボロボロの古着を着ることも、SNSでお気に入りのセクシー女優の名前を挙げることも、それでいてライブでは思いっきりかっこつけることも、彼はなにもかも厭わない。唯我独尊であり、軽快。
藤井風も現代が産み落とした天才だ。YouTubeのピアノカバーでバズを起こしたことがきっかけで広まり、いまや押しも押されもせぬ世界的なシンガーソングライターへ。10年代に星野源やヨンスが更新したJポップを、20年代に彼がネクストレベルに引き上げた。また、いまどきのミュージシャンには珍しく服に頓着しないが、スタイリストの提案を見事なまでに着こなす器量は、かっこよさの概念を脱構築する。
最後に、映画『キングダム』シリーズや『ゴールデンカムイ』など、大作の主演を連続で務めた山﨑賢人の名前を挙げたい。毎回、原作ファンを唸らせる動きをみせており、その見た目からアイドル需要も高いものの、俳優として大きなものを背負っていく運命にあるのは間違いない。
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2020年代の男たち
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