信念を貫き通し生きる男の姿は、ときに人の人生を変えることもある。3人の選者が感銘を受けた人物について語ってくれた。
Pen最新号は『新時代の男たち』。ここ数年、あらゆるジャンルで多様化が進み、社会的・文化的にジェンダーフリーの概念も定着してきた。こんな時代にふさわしい男性像とは、どんなものだろうか。キーワードは、知性、柔軟性、挑戦心、軽やかさ、そして他者への優しさと行動力──。こんな時代だからこそ改めて考えてみたい、新時代の「かっこよさ」について。
『新時代の男たち』
Pen 2024年7月号 ¥880(税込)
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幼い頃から家にあった小曽根真のレコードをよく聴いていたという斎藤工。自らメガフォンを取った映画『blank13』で仕事をした神野三鈴が小曽根の妻であったことをきっかけに、親交を深めた。
「小曽根さんは信じられないくらい行動力のある人。昨年はウクライナの避難民の方のためのチャリティライブを海外で企画したり、ウクライナのミュージシャンの活動支援などもしています」
デビュー40周年の小曽根はジャズピアニストとして不動の地位を築きながら、幅広い活動を行う。
「音大の教授も長く務めた小曽根さんは若い人たちに本物に触れる機会を与え、次世代に向けて精力的に活動しています。音楽を介して誰とでも家族になれる。小曽根さんに救われた人は数えきれないと思います。ひとりの人間として、音楽家としてやるべきことがはっきり見えていて、それを当たり前に実行する、素晴らしい人」
シネフィルとして知られる斎藤が、俳優として最も憧れるのは原田芳雄だ。中学生の頃、レンタルビデオ屋でハマったATG映画(1961年から80年代にかけて、芸術性・実験性の高い映画を制作)でその存在を知る。
「黒木和雄監督の『原子力戦争』(78年)は忘れられない。東京電力の福島第一原子力発電所に無許可で入ろうとして、職員に止められるシーンがあるんですが、脚本はあるものの、ドキュメンタリーのようで。芳雄さんはセリフを言わされている感じがまったくないんです。どんな作品でも、常になにかに苛立っていた。反体制で弱者の叫び、怒りを忘れない人」
そんな原田はブルース歌手としても精力的にライブを行った。
「ブルースでは普通の人々の日常を歌いました。僕も一度だけライブにお邪魔しましたが、錚々たる映画人が集っていてみんな芳雄さんを愛してる。あの松田優作さんも憧れた人です。芳雄さんはシャーマンという言葉が似合う。日本の市場には収まりきらないそのエネルギーを、いま改めて心に留めたいと思います」
3人目は『ウルトラマン』のデザインを手掛けた成田亨。一昨年『シン・ウルトラマン』で主人公を演じた斎藤には因縁深い人物だ。
「日本映画美術における金字塔のような人。成田さんのデザインはいま見ても素晴らしいアートです。彼に感化されて庵野秀明さんや樋口真嗣さんら多くのクリエイターが生まれた」
遺族の意思により、現存する初期ウルトラマンのマスクのひとつを斎藤が預かっているという。
「アナログ特撮の限界を知り尽くしたデザインは、制約があるからこそアートとして成立している。戦後の社会背景も含め、さまざまなものと闘い続けた成田さんの生き様にシビれます」
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次世代に影響を与える、信念の人
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