トップを走る写真家ヴィヴィアン・サッセンが日本ブランドを撮影!レインメーカーのデザイナーに聞いた「サッセンとの仕事」

  • 文:一史
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RAINMAKER 2024-25AW©Viviane Sassen

現代ファッション写真の大家であるヴィヴィアン・サッセン。彼女が撮る写真には、心を惹きつけられる強烈な魅力がある。いったいどこにその理由があるのだろうか?まずひとつは色彩の美しさだろう。色鮮やかな原色や、黒いシルエットを用いる作風。完璧に整えた絵画的な構図とその色彩を調和させる。サッセンは人工的にセットを組んだスタジオ撮影とは異なる、現実の場所を活用するロケーション撮影を好む。その効果もあり、写真に確かなリアリティが漂う。人がいて、服があり、場所がある。あとでデジタル処理を加えたとしても、間違いなくカメラのシャッターを押す“写真”だ。
さらに見逃せないのが、被写体である人と服の個性を引き出していること。これこそサッセンの最大の素晴らしさかもしれない。表現者としてのエゴで被写体をねじ伏せることをせず、それぞれの息遣いを尊重している。グラフィックデザインのごとくシャープな画面構成の裏側に、深いファッション愛を感じる稀有なフォトグラファーである。

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RAINMAKER 2024-25AW©Viviane Sassen

そのサッセンがこのたび、モードブランドのレインメーカーのキャンペーン写真を撮り下ろした。海外ハイブランドから仕事が舞い込む彼女が小規模な日本ブランドとのつながりを決めたのは、実力と姿勢に共感したからだろう。レインメーカーは京都を拠点に世界に発信する、独自スタイルのメンズブランド。先端モードと和装(和の世界観)を高度に融合させたデザインは唯一無二だ。『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024』の個展のためサッセンが来日したタイミングで、京都でのシューティングが実現。サッセン好きもレインメーカー好きも納得する、両者らしさが濃厚なコラボシリーズになった。
以下に掲載したQ&Aはこの記事をつくるにあたり、同ブランドの創業者&デザイナーである渡部宏一にサッセンとの仕事プロセスについて尋ねたもの。ビジュアル制作の裏側が垣間見える興味深いエピソードだ。

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RAINMAKER 2024-25AW©Viviane Sassen

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RAINMAKER 2024-25AW©Viviane Sassen

Q.レインメーカーとヴィヴィアン・サッセンが出会ったのはどのようなきっかけですか。

A.ヴィヴィアンはルイ・ヴィトン、ディオール、ドリス ヴァン ノッテンなど名だたるブランドの撮影やファインアートの分野で活躍されている方です。個人的にも大好きなフォトグラファーでしたので、今年の年始にエージェンシーを通じて撮影の依頼をしました。すると当人がレインメーカーを気に入ってくださったようで、「ぜひやりましょう!」という話になりました。

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RAINMAKER 2024-25AW©Viviane Sassen

Q. 2024-25年秋冬キャンペーンビジュアルを撮影した時期はいつですか。

A. 撮影場所は当初から日本で行いたいとリクエストしていました。詳細を詰めていくなかでヴィヴィアンが京都グラフィーのため来日することがわかり、そのタイミングで撮影することになりました。

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RAINMAKER 2024-25AW©Viviane Sassen

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RAINMAKER 2024-25AW©Viviane Sassen

Q. 撮影準備はどのように行いましたか。

A. 話を進めるなかで、写真で使う彫刻作品、ロケーション、起用モデル、服のコーディネートといった器をこちらで用意することになりました。そのうえで、「あなたが感じるように、あなたらしい作品にしてください」とお伝えしました。
彫刻は、京都生まれの彫刻家である樂雅臣さんの作品。ロケーションは滋賀の佐川美術館で、樂吉左衞門館に併設されている茶室です。レインメーカーが用意した要素で十分にブランドの世界観が担保されますから、そこにヴィヴィアンの感性や視点が加わることで生まれる驚きを楽しむ撮影になりました。

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RAINMAKER 2024-25AW©Viviane Sassen

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RAINMAKER 2024-25AW©Viviane Sassen

どのようなファッション撮影でも、そのブランドらしさをしっかりと表現するサッセン。今回もエキゾチックなシルエットとマテリアルを用いた服を軸にするレインメーカーと抜群の相性のよさを見せた。パリをコレクション発表の軸にシフトした同ブランドが、世界の人々へアピールする足がかりを掴むビジュアルになった。
オランダ出身のサッセンは学生時代に通った美術学校で、ファッションデザインも学んだ経歴がある。ファッションをうわべのムードで捉えず、本質に目を向ける姿勢があるのだろう。だからこそ彼女のファッション写真は、服好きの心に響く。アート好きな人は、服と人の確かな存在価値に気づく。現代における世界屈指のファッション伝道者としても、モード関係者がサッセンに寄せる期待はますます高まりそうだ。

RAINMAKER

https://rainmaker-kyoto.com
www.instagram.com/rainmaker_kyoto

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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