「完璧な芝居は一生できないと思うから、ずっと飢えていたい」ーー板垣李光人が内に秘める、飽くなき向上心  

  • 写真:大塚三鈴
  • スタイリング:末廣昴大
  • ヘア&メイク:KATO(Tron)
  • 編集:帯刀憲一郎
  • 文:小松香里
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俳優という枠を軽々と飛び越えて、多彩な才能を放つ板垣李光人。彼が紡ぐ一つひとつの言葉から浮かび上がってくる、その原動力とは。

Pen最新号は『新時代の男たち』。ここ数年、あらゆるジャンルで多様化が進み、社会的・文化的にジェンダーフリーの概念も定着してきた。こんな時代にふさわしい男性像とは、どんなものだろうか。キーワードは、知性、柔軟性、挑戦心、軽やかさ、そして他者への優しさと行動力──。こんな時代だからこそ改めて考えてみたい、新時代の「かっこよさ」について。

『新時代の男たち』
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板垣李光人 俳優
2002年1月28日生まれ。10歳で俳優デビュー。おもな出演作はドラマ『仮面ライダージオウ』や『silent』、NHK大河ドラマ『どうする家康』、映画『約束のネバーランド』、『陰陽師0』など。8月9日公開の映画『ブルーピリオド』には高橋世田介役で出演。また、今年4月から再び日本テレビ系報道番組「news zero」の水曜パートナーも務めている。

『約束のネバーランド』『ここは今から倫理です。』『青天を衝け』『silent』『どうする家康』『マルス-ゼロの革命-』──22歳にして俳優としてのキャリアは12年におよぶ。アニメが原作の映画から大河ドラマまで幅広い作品に出演し、圧倒的な透明感を宿しながら多彩な表情を見せる役者、板垣李光人。

役者としての活躍の他に、報道番組「news zero」の曜日パートナーを務める一方で、自らが手掛けたデジタルアートを発表し、プライべートではファッションのデザイン画をしたためているファッションラバーとしても知られる。「好き」という気持ちを根源に、枠にとらわれない軽やかな活動で新しい風を吹かせる板垣李光人は、いまという時代にフレッシュな魅力を放っている。

キャリア12年目で迎えた、俳優業における転機

ここ数年、出演作が途切れない。4月には映画『陰陽師0』が公開され、この先も映画『ブルーピリオド』と『八犬伝』の公開を控える。多彩な表情を見せ続ける板垣李光人は新たな作品と向き合う時の感覚をこう語る。

「原作や脚本を読みながら、芝居やビジュアルをどんなふうにつくっていこうかを考えるのがすごく楽しいです。共演者の方々がどうキャラクターをつくってくるかということやどういうフィーリングで一緒に芝居ができるんだろうという期待もあります。いまのところ現場に入る前に不安を感じたのは『どうする家康』(2023年)だけ。プロデューサーの方が『青天を衝け』を観て、僕が演じた徳川昭武の真逆のタイプの井伊直政を見てみたいということで出演のオファーをいただきました。僕にとってまったく新しいアプローチの役であり、松本潤さん、大森南朋さん、松重豊さんといった錚々たる方々に交ざっての大河ドラマの重要なポジションの役なので、すごいプレッシャーでした。あの作品を経験したことでだいぶ肝が据わったところはありますね」

この3月に最終回を迎えたドラマ『マルスーゼロの革命ー』は、また新たな転機作になった。

 「ドラマは途中で監督が変わることが珍しくない中、最後まで役をまっとうするという責任があります。『マルスーゼロの革命ー』も途中で監督が替わりましたが、今回の僕は主人公ゼロを演じるみっちー(道枝駿佑)の右腕役というポジションということもあり、役に対する責任だけでなく、全体を俯瞰して違和感がないかを探し、監督やプロデューサーとみっちーと話し合いを何度も重ねました。いままで監督をやりたいと思ったことはありませんでしたが、そういう立場を経験しておくと、役者としてできることがまた違ってくるんだろうなと思いました」

「作品づくりも芝居も好き」と断言する表情に迷いはない。

「作品づくりは大変ではありますが、そこに面白さがあり楽しさがあるのが僕が〝続けたい〟と思う理由でもあります。なぜ台本をひたすら読んでブラッシュアップして、さらに撮影が始まってからもブラッシュアップしていくのかというと、いいものをつくりたいから。そして、届ける場所があるからです。いいものを届ければちゃんと視聴者の方からのフィードバックがあります。そのやり取りは、自分が役者をやる上での大きな醍醐味です。あと、シンプルに芝居が好きなんです。たとえば、『マルスーゼロの革命ー』の最終話にある放送室でひたすら喋るシーンのように、感情を突出させることがすごく好き。その両方がないと成立しないと思っています」

ハングリー精神を支える、やりがいと飢餓感

役者を始めて約12年。さまざまな感情を芝居で表現する方法について尋ねると、「感情の元栓を開けるんです」と答えた。

「最近みっちーにも『どうやって泣いてるの?』と聞かれたのですが、本当に感覚的なものなんです。首の付け根のいちばん大きな骨のところにガスの元栓みたいものがあって、それを緩くすることで感情の幅が広がって、欲しい感情がちゃんと出てくる。一作の中で何度か泣く芝居のある作品が続いた時期があって、だんだんやり方がつかめてきました。感情が突出した芝居が必要とされる時の僕なりのやり方ですね。現場に入ってからつくっていく部分も多いです。カットがかかってからモニターを見て第三者の視点で自分の姿を見て変更していきます。放送されたり公開された後も修正したいと思う部分は尽きません。特に映画は撮影から公開まで時間が空くことが多いので、いまの自分とのギャップが激しい。その思いを次作につなげていきます。その反省がなくなった時が役者としての死。作品には常に120%の力で向き合っていますが、長い人生の内の5%程度のことしかできていないんだろうなと考えています。その瞬間満足したとしても、長い目で見て完璧な芝居は一生できないと思う。ずっと餓えていたいです」

インタビュー後半は本誌でチェック!

インタビュー後半では、ファッションやアートへの想い、理想の男性像、そしてこれからの生き方などについて聞いた。また、板垣にとっての“カッコいい人”を尋ねると、大河ドラマ『どうする家康』で共演経験のある松本潤の名前を挙げ、その理由を明かす……。Pen最新号『新時代の男たち』は、全国の書店、コンビニ、Amazonはじめオンライン書店などで発売中。

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