「大人の名品図鑑」ボブ・マーリー編 #5
伝説のレゲエミュージシャン、ボブ・マーリーの生涯を映画化した映画が公開される。『ボブ・マーリー:ONE LOVE』だ。すでに公開された全米などでの興行収入は初登場No.1を記録、日本でも話題になることは必至。今回はこの映画にも登場する、ボブ・マーリーが愛用した名品について解説する。
映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』の舞台は1970年代の後半だ。作品では当時を思い出させるスタイルが次々と登場してくる。本作の衣装デザインを務めたアンナ・B・シェパードは、「この作品には役者が80人いて、なかにはステージ衣装も含めて30着もの衣裳が必要な役もあった」と話す。
「ジャマイカのエキストラのために600着の衣裳を買った。歴史的価値のあるプロジェクトだと思う。スクリーン上で目にする衣裳は、すべて本物。当時、ダブルデニム流行の最盛期だった」とも言う。彼女が話す“ダブルデニム”とはデニム・オン・デニム、つまり上下ともデニムウェアでまとめたスタイルを指しているのだろう。今回の作品でもキングズリー・ベン=アディルが演じたボブは、ベルボトムジーンズのトップスにはデニムシャツを羽織るように着ていることが多い。彼は普通のウエスタンシャツ風のものも着ているが、パッチワーク風に仕立てられたシャツを着ている場面がよく出てくる。
よく見ると、このパッチワークシャツはかなり手が込んでいる。格子柄のようにパッチワークし、それを斜めに配置したり、身頃から袖までスクエアな生地でパッチワークしたものなど、いまではあまり見られないパッチワークの手法を用いたシャツばかり。実際のボブも同様のシャツを着た写真が残されているので、衣裳を担当したアンナはそんなボブのシャツを再現したのだろう。
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日本発ブランドが手がけるアップサイクルプロジェクト
パッチワークとは、さまざまな柄布、素材、色、形の小布を繋ぎ合わせて、1枚の大きな布やシャツなどの製品に仕立てた技法を言う。1990年に発行された『ジーンズ物語』(三井徹著 講談社現代新書)によれば、「ジーンズの破れたところに、あるいは破れていなくてもとにかく飾りとして、アップリケを施したり、刺しゅうをしたりするのが流行が目立ってきたのは1971年である」とある。
また、74年発行の『ジーンズ 終りのない流行──ジーンズのすべて』(堀洋一著 婦人画報社)では「『パッチ・ワーク』とは、『ツギハギ細工』のことをいうわけだが、このパッチ・ワーク・ジーンズには、およそふたとおりのものがある。ひとつは、その昔、子どもの頃によくはかされたような、いわゆる“ツギ当てズボン”風のようなもの。(中略)また、もうひとつのパッチ・ワーク・ジーンズとは、いわゆる『パッチ・ワーク・クロス』でつくったジーンズをいう。いま流行の“リサイクルド・ジーンズ”も、これの新しいバリエーションと考えてもいいだろう」と書かれている。ボブが着たシャツはこの本で解説されている後者の手法、つまりパッチワークしたものを一枚の生地にして、それからシャツに仕立て直したものと考えられる。
ボブが着たものと同じテイストで製作されたパッチワークのデニムシャツはないかと探し当てたのが、リベア バイ ジョンブルだ。リベア(rebear)とは、「生まれ変わらせる。再び生み出す」を意味する。1952年、日本のデニムの産地、岡山県倉敷市児島で創業されたデニムブランドの老舗ジョンブルが提案するアップサイクルプロジェクトを具現化したブランドで、製品や古着、あるいは使用して残った生地などを使って、リメイクするように製品をつくり上げる。ユニセックスで着用できるゆったりしたサイジングで、モダンなテイストさえ感じられる。今回紹介するパッチワークシリーズは、一点一点、つくり手が出来上がりを想像しながら生地をつなぎ合わせていくため、どれも世界にひとつだけの製品になっている。
映画の終盤でボブは歌によって、分断するジャマイカを連帯させるという奇跡を起こす。さまざまな生地を繋げてひとつにまとめたパッチワークシャツは、そんなボブの気持ちが表れていると感じたのは私だけだろうか。
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ジョンブル カスタマーセンター
TEL:086-470-5770
www.privatelabo.jp
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