【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】第198回神ずいの“軽み”はまるでメレンゲ⁉ ハイエンドな最強スポーツワゴン、ホントのところ

  • 写真&文:青木雄介
Share:
アウディ史上最強ワゴンにふさわしいRS専用カラーとデザイン。

V8ツインターボを搭載し630馬力を叩き出すアウディの最強ワゴン「RS6アバント パフォーマンス」に乗った。スーパースポーツ並みの動力性能にワゴンの実用性を組み合わせた、おいしさ2台分のクルマという意味では想像通り。

2.jpg
4LV8ツインターボエンジンとマイルドハイブリッドを組み合わせる。 

普通に街乗りで走っていて最高に乗りやすいんですよ。ステアリングの舵角やペダルの踏み代はほぼ最小限でクルマを自由に操れる。操作感が軽快だし、トルクもあるので車体が軽く感じられる。

おいしさついでにスイーツにたとえるなら、他メーカーのスポーツワゴンがのっけからチョコやキャラメルのような、コクのパンチ勝負なのに対して「RS6アバント パフォーマンス」の運転感覚はまるで高級メレンゲですよ(笑)。余韻だけを残し溶けていく、春の泡雪みたいな軽みの伝統技。だから普段乗りが最強なんだ。

「軽み」で630馬力がさらりと引き出せる。アクセルを踏み込めば、静かな車内にV8エンジンのビートがにじみ出るように聴こえてきて、爽快な加速を体感できる。まるでコントラストを調整するつまみのようにアクセル次第で、すっと臨戦態勢に切り替わる。

その理由はほとんどエアサスの乗り心地によるところが大きい。これは同じグループのベントレー・コンチネンタルGTにも通じるフラットさでサーキット仕様というより、あくまでグランツーリスモとしての特長が強い。正しいね。やっぱりワゴンだもの(笑)

3.jpg
スポーティな3スポークステアリングホイールにバルコナレザー仕立てのシートを装備。

走行モードをRSモードに入れると、ステアリングにV8エンジンの鼓動が伝わってくる。峠に行けば新たに搭載された四輪操舵で後輪もクイックな反応。タイトなコーナーを華麗にクリアしていく。これがめちゃくちゃ速い。ややオーバーステアリング傾向でもドリフトに誘う感じじゃないし、コーナリングですべてが安定したオン・ザ・レールな走りでもない。それでも速度計の数字は、あれよあれよという間に上がっていく。

アウディのクワトロ技術が「ここに極まれり」ですよ。トルクベクタリングでほとんどEV旗艦モデルである「REs-tron GT」のような反応の鋭さを実現してるんだ。ESC(横滑り防止装置)を切るとワゴン形状を反映するのか、リアの蹴り出す感じや接地感がいまひとつ感じられなくなってくるのね。それとエアサスだとRSモードでも高速コーナーの足まわりが心許なくなってくる。多少乗り心地は犠牲にしても走りにこだわるなら、中央のシリンダーに対して3方向にダンピング調整機能が付いたオプションのRSスポーツサスペンションプラス(スチールスプリング式)を選ぶのがよいかもね。これがアウディの売りであるダイナミックライドコントロールとあいまって、粋な足まわりにしてくれるらしい。

4.jpg
容積565Lの荷室。後部座席を倒せば1,680Lまで拡張可能。

個人的にはケージごとワンちゃんを載せたいから「ノーマルのエアサスかな」とは思ったものの、スプリング式も捨てがたい。ステアリングの解像度も上がるし、乗り心地も間違いないという確信があるからね。もっと言うなら、バネ下重量の軽さと天性の軽みを組み合わせれば、最高のレシピになりえる。そうね。スプリングの律動さえも感じられると期待できる
からなんだ。 

5.jpg
クルーズ走行時に4気筒を休止するシリンダーオンデマンドなど効率性も追求。

アウディRS6アバント パフォーマンス

全長×全幅×全高:4,995×1,960×1,485㎜
エンジン:V型8気筒ツインターボ+マイルドハイブリッド
排気量:3,996cc
最高出力:630ps/6,000rpm
最大トルク:850Nm/2,300~4,500rpm
駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
車両価格:¥19,100,000
問い合わせ先/Audi コミュニケーションセンター
TEL:0120-598-106
www.audi.co.jp

※この記事はPen 2024年6月号より再編集した記事です。