あの名曲と歴史的事件を背景に、レゲエの英雄の生涯を描く『ボブ・マーリー:ONE LOVE』ほか【今月の映画3選】

  • 文:森 直人(映画評論家)

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今月のおすすめ映画①『ボブ・マーリー:ONE LOVE』
あの名曲と歴史的事件を背景に、レゲエの英雄の生涯を描く

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本作のプロデューサーにはボブ・マーリーの長男であり、グラミー賞ミュージシャンのジギー・マーリーのほか、ボブの妻リタ、娘セデラも名を連ねる。本作のサウンドトラックもデジタル配信中だが、なんと世界で唯一、日本のみCDとLPの発売が決定している。

レベル・ミュージック(抵抗の音楽)としてのレゲエ。その象徴的な存在である永遠のカリスマが、36年の短い生涯を鮮烈に駆け抜けたボブ・マーリー(1945~81年)だ。彼の代表曲であり、有名なスローガンでもある「ONE LOVE」をタイトルに冠した伝記映画が、遺族であるマーリー・ファミリーの全面サポートのもとで生み出された。

映画は1976年の有名なエピソードから始まる。ジャマイカの首都キングストンでボブ・マーリーと妻リタは武装した男たちに襲われた。だがその暗殺未遂事件のわずか2日後、彼は怪我をおして自身のバンド、ザ・ウェイラーとともに「スマイル・ジャマイカ・コンサート」のステージに立ち大成功を収める。以降はロンドンに移り、のちにタイム誌から20世紀最高のアルバムと評される名盤『エクソダス』の制作を始める……。

ボブ・マーリー役を演じるのはキングズリー・ベン=アディル。2020年の『あの夜、マイアミで』でマルコムX役に扮した気鋭の俳優が、厳しい減量を果たし、独特の訛りを持つ話し方も身につけ、アイコニックな伝説のアーティストに身も心も成り切った。「NO WOMAN, NO CRY」や「GET UP, STAND UP」など人気曲のパフォーマンスもさることながら、英国でパンク・バンド、ザ・クラッシュのライブを観たり、ツアー中にエチオピア帝国最後の皇帝、ハイレ・セラシエの自伝を読んでいたりなど、細部の描写も興味深い。

監督を務めたのは『ドリームプラン』のレイナルド・マーカス・グリーン。いまの世界を覆う分断や戦争といった悲痛さに向け、愛の使者としてのボブ・マーリーの美しき神話の強化が志向された。本作は既に全米および各国でヒットを飛ばし、ジャマイカでは史上最高の初日興収を記録している。

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© 2024 PARAMOUNT PICTURES

『ボブ・マーリー:ONE LOVE』

監督/レイナルド・マーカス・グリーン
出演/キングズリー・ベン=アディル、ラシャーナ・リンチほか
2024年 アメリカ映画 1時間47分 5/17よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開
※公開時期・劇場などが変更される可能性があります。

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今月のおすすめ映画②『バティモン5 望まれざる者』
パリ郊外の街で起こった、行政VS住民の激しい衝突傑作

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© SRAB FILMS - LYLY FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE – 2023

バンリューと呼ばれるパリ郊外にある低所得者層の団地の一角、バティモン5。そこに住む移民たちは、再開発と治安改善を目指して強硬な手段を取り始める白人の臨時市長に反発。行政と住民の衝突は激しい抗争に発展していく。監督は“人気ミュージカルではない方”の『レ・ミゼラブル』(2019年)でデビューしたフランス映画界の異能の新鋭ラジ・リ。強烈な怒りと騒乱のパワーが迫ってくる。大都市に渦巻く現実の闇を突きつける衝撃作だ。

『バティモン5 望まれざる者』

監督/ラジ・リ
出演/アンタ・ディアウ、アレクシス・マネンティほか
2023年 フランス・ベルギー映画 1時間45分 5/24より新宿武蔵野館ほかにて公開
※公開時期・劇場などが変更される可能性があります。

 

今月のおすすめ映画③『ミッシング』
愛する娘が突然の失踪、母親の苦悩と救済を巡る物語

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© 2024「missing」Film Partners

『空白』の𠮷田恵輔監督が、骨太な話題作を贈り続ける映画会社スターサンズと再タッグ。石原さとみを主演に迎え、幼い愛娘の突然の失踪にもがき苦しみ続ける母親とその家族をオリジナル脚本で描いた。事件をめぐるマスコミやSNSなど世間の声に翻弄されながら、出口の見えない迷路を彷徨う母親。石原をはじめ、中村倫也や青木崇高、森優作らキャスト陣の迫真の演技が胸に迫る。人間の魂の救済を問うヒューマンドラマの名作が誕生した。

『ミッシング』

監督/𠮷田恵輔
出演/石原さとみ、中村倫也ほか
2024年 日本映画 1時間59分 5/17よりTOHOシネマズほかにて公開
※公開時期・劇場などが変更される可能性があります。

※この記事はPen 2024年6月号より再編集した記事です。