「可愛すぎる…」36年前に凍結した細胞から、絶滅寸前のイタチの赤ちゃんクローン2匹が誕生!

  • 文:山川真智子

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Cemx-Shutterstock ※画像はイメージです

アメリカで、36年前に採取された組織を用いて、絶滅の危機に瀕しているクロアシイタチのクローン2匹が誕生した。今後は繁殖用に使われる予定で、クローン化の成功は、絶滅危惧種を救う活動における、重要なマイルストーンだと評価されている。

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個体数回復でも、絶滅の危機

クロアシイタチは尾、足、目に黒い模様があることで知られ、エネルギッシュで好奇心旺盛。夜行性で、プレーリードッグを獲物としており、平原にある広大な巣穴のコロニーで、ネズミを狩ることもあるという。農業の拡大、餌となる動物の減少などで、1960年代に絶滅危惧種に分類された。

ガーディアン紙によれば、野生のクロアシイタチは1979年に絶滅したと思われていたが、1981年に牧場の犬が死んだ個体を持ち帰ったことで、小さな群が発見された。その後、保護活動により捕獲した7匹をもとに、繁殖プログラムが立ち上げられた。活動家の努力により、飼育下で繁殖して個体数が増えたという。

しかし、現在知られているクロアシイタチは、すべて最初の7匹の子孫だという。そのため遺伝子プールは小さく、遺伝的多様性に欠けている。環境が変化した場合は、その変化に適応できず絶滅してしまう可能性もあり、種としての長期存続の脅威となっている。

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クローン1号誕生! 繁殖はならず… 

何十万もの動植物が絶滅の危機に瀕しているなか、科学者や政策立案者たちは、クローン技術などのより特別な手段に目を向けるようになっているとワシントン・ポスト紙は述べる。

クロアシイタチの場合もそれに当てはまる。実は、捕獲された野生のうちの1匹である、ウィラというメスのクロアシイタチの遺伝子と組織サンプルが、1988年に、カリフォルニア州サンディエゴの冷凍動物園で保存された。ウィラは子孫を残していなかったため、その血統を受け継ぐクローンを作成することで、クロアシイタチの世界に遺伝的多様性をもたらすことが期待されたという。

2020年に、ウィラの遺伝子から初のクローンが誕生し、エリザベス・アンと名付けられた。しかし、クローン化が原因ではない生殖器官の問題により、繁殖は不可能だったと、米国魚類野生生物局(USFWS)は発表している。

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今後の繁殖に期待 技術の利用に課題も

今回生まれた2匹のクロアシイタチは、ノリーンとアントニアと名付けられた。ワシントン・ポスト紙によれば、2匹はウィラの細胞のひとつを、家畜化されたイタチの卵子に注入して作られたクローンだ。

ノリーンはコロラド州の施設で、アントニアはバージニア州の施設で別々に誕生。どちらも元気で健康そうだという。2匹は5月に1歳の誕生日を迎えるため、関係者は今年後半に繁殖を開始したいと考えているそうだ。

絶滅危惧種のクローン作製に関しては、倫理的な問題もあるという。サイエンス誌によれば、家畜のイタチの卵を使ったクローンは、その種のミトコンドリアDNAを持っていることを意味し、研究者が救おうとしている種と実際に同じかどうかという点が問われている。また、希少種のクローンを作ることができれば、野生種存続の努力への支持が損なわれるとし、懸念を抱く保護活動家もいるという。

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昨年5月に誕生した、ノリーンとアントニア。

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 赤ちゃんだったころのエリザベス・アン。

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 エリザベス・アンの動く様子。

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約500匹いるとされるクロアシイタチだが、ほぼすべて7匹の個体の子孫であるため、遺伝的多様性は乏しい。