
2階建ての立派な住宅が、ぷかりぷかりと海面を進んでいく——。とくに洪水が起きているわけでもない米カリフォルニア州のサンフランシスコ湾で、不思議な光景が目撃された。
住宅の外観は、アメリカの一般的な戸建て住宅ほぼそのものに見える。レンガ調の外壁に、凝った造りの三面出窓やポーチを囲うフェンスなどが設けられている。グレーの屋根と壁面が重厚感を演出するが、白いペンキ塗りがアクセントになっており、ほどよくモダンな印象が漂う。
柵の腐食などが多少の古めかしさを感じさせるものの、一部のペンキは真新しく見え、よく手入れされているようだ。使われていない廃屋には見えず、人知れずどこかから押し流されてきたとは考えにくい。
2日間にわたり湾内を進む姿が周辺の市民たちの興味を惹いてきたが、その正体が判明した。米ABCネットワークのロサンゼルス局は、この住宅は「ハウスボート」と呼ばれる水上住宅なのだと報じている。
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2日間かけてサンフランシスコ湾を北上
ハウスボートはサンフランシスコ湾南部のレッドウッド・シティを発ち、湾内を北上。ゴールデン・ゲート・ブリッジ付近を越え、50kmほど離れたリチャードソン湾まで2日間をかけて航行した。
ハウスボートとは、もともと水に浮くよう作られた、水上生活用の住宅だ。建物全体が水面に浮かび、内部に居住できるよう設計されている。
よく観察すると、玄関は水面から1mほどの高さに設けられている。浸水を避けつつ、桟橋に停泊した状態で出入りができるようになっている。1階よりさらに下、水面付近に大きな開口部が用意されているが、こちらは自家用ボートの格納庫となっているようだ。
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「まるでピクサー映画」
サンフランシスコのニュースサイト「SFist」は、「2階建ての一軒家サイズのハウスボートが大海原に浮かぶ姿は、ピクサーの映画『カールじいさんの空飛ぶ家(原題:"UP")』を彷彿とさせた」と例える。
同作では立ち退きを迫られた老齢の男性が、亡き妻との思い出が詰まった古い2階建て住宅を取り壊しから守ろうと決意。大量の風船を付けて、家ごと空の旅に出る。今回のハウスボートにも、これと似たようなドラマがあった。
ハウスボートが長年係留されていたレッドウッド・シティにはかつて、ドックタウンと呼ばれる水上住宅の集積地があった。ところが水路を占有しているとして近隣住民が不満を述べ、サンマテオ郡を相手取った法廷闘争に発展。長い年月の末に郡側が敗訴し、60〜80軒が建ち並んだ水上住宅の移転を指示せざるを得なくなった。
昨年7月までに大半が退去しており、今回目撃されたハウスボートは残されたうちの1軒だった。
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老朽化の家がこなした大移動
ハウスボートのなかには自力で航行できるものもあるが、今回はボートに曳航されたという。実際のところこのハウスボートは、かなり古いものだったようだ。米ABCが公開する動画からも、やや傾きながら移動に耐える様子が確認できる。
レッドウッド・シティのハウスボート事情に詳しいエドワード・スタンシル氏は、地域のニュースを扱うサンフランシスコ・スタンダードに対し、「不安定ですね」と曳航への不安を口にした。
「いまにも沈没しそうです。でも、レッドウッド・シティで一番大きなハウスボートでした」
曳航をエスコートした沿岸警備隊によると、当初の目的地であるサンラファエルから付近のリチャードソン湾に目的地を変更したものの、ハウスボートは安全に旅を終えたという。
今後の詳細は明かされていないが、新たな地でまた、持ち主一家の愛しの我が家となるだろうか。“年老いた”家が移動に耐えられるか心配されたが、無事に長旅を終えたようだ。
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【動画】サンフランシスコ湾を進み、長旅に耐えたハウスボート。
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A two-story house — actually a houseboat — was seen floating across San Francisco Bay during Monday's solar eclipse, and it captured the imagination of many who wondered where it had come from and where it was headed. https://t.co/Dm6ha0pTA0
— SFist (@SFist) April 10, 2024
【写真】ぷかぷかと浮かぶ2階建て住宅が話題に。