「UFO?」「ドラゴン?」宙に浮く黒いリングの珍現象、アルゼンチンで目撃報告  

  • 文:青葉やまと

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Marko Aliaksandr-Shutterstock ※画像はイメージです

アルゼンチンで、上空に浮かぶ謎のリングが目撃された。映像に収められ、「UFOではないか」あるいは「特異な自然現象ではないか」など、ソーシャルメディアで激論が交わされている。

映像は、低木が広がる果樹園のような一帯で撮影されたものだ。開けた上空の高さ数十メートルほどとみられる位置に、黒から濃い灰色をした細いリングが浮かぶ。直径は十メートルをゆうに超えているとみられる。

カメラがズームすると、リングは薄いもやで覆われていることが分かる。不定形に揺らめきながら、リングはもやと共にゆっくりと上昇してゆく。

このめずらしい物体は、アルゼンチン北部のトゥクマン州で目撃された。英メトロ紙は映像を取り上げ、「都市上空に浮かぶ謎の黒いリングがUFO騒動を引き起こした」と報じている。

「UFO!?」ソーシャルメディア騒然

ソーシャルメディアでは「UFOだ」「ドラゴンではないか」など、超常現象の一環であるとの説が飛び交っている。一方、何らかの原因で蚊や鳥が大群になって飛んでいるのではないかなど、自然現象とする説も多く書き込まれている。

スペイン語で配信するネットニュースチャンネルの「El Nuevo Amanecer」は、各種メディアは気象の専門家などに分析を求めたものの、気象分野の専門家らは答えを出しかねていると伝えている。

そのうえで同チャンネルは、答えは明白だと指摘する。地上で大規模な爆発が起きた際、このような円環状の煙が上空へ立ち上ることがあるとの指摘だ。

専門家「面白い現象ですが……」

類似の現象は興味深い科学現象として、以前からTV番組で取り上げられたことがある。米有料TV放送の「ヒストリー(旧ヒストリー・チャンネル)」は2021年、「謎のスモークリングを解き明かす」と題する動画を公開した。

天文学者で画像解析を専門とするマーク・ダントニオ氏は、番組の依頼にもとづき、今回とよく似た宙に浮くリングの映像を確認。UFOかと問う番組側に対し、「面白いですね。未確認飛行物体のようにも見えますし」と一定の同調をみせる。また直線状でないことから、飛行機雲の可能性は薄いと断言した。

しかし、そのうえでダントニオ氏は、「この物体は、ディーゼルエンジンによって生み出された可能性があります」と、あくまで科学現象であるとの分析を示す。

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大量の黒煙が上昇してリング状に

番組が別途用意した映像では、強力なディーゼルエンジンが実際に点火する様子を確認できる。ディーゼルエンジンは圧縮空気に軽油または重油を噴霧し、燃焼機関内の自然着火により動力を得る。

番組の映像では、着火と同時にエンジン上部の排気口から、火炎放射器のような激しい炎が空へ向けて放出される。炎自体は一瞬で収まるが、爆発的な燃焼により発生した大量の黒煙が空へ立ち上ってゆく。

黒煙は上昇しながら塊の内部で対流を続け、次第に中空の円盤状へと変化する。やがて、円盤を取り巻いていた薄いもやが周囲の気流に流されて取り払われると、中から細く濃い灰色のリングが姿を現した。アルゼンチンで目撃された物体と非常によく似た形状だ。

「正体は煙」との見方が濃厚

番組では司会男性が、「これで分かりましたね。このような(番組で取り上げた謎の)複数のリングは、背の高い煙突や大型エンジンによって生じたといえそうです」「私たちの結論としては、煙によるリングです」と締めくくっている。

今回目撃されたアルゼンチンのリングも、これと同様の現象だと捉える向きが多いようだ。メトロ紙のコメント欄では、「スモークリングだ。古いディーゼルエンジンから連続して出ているのを見たことがある」との声がみられる。

「El Nuevo Amanecer」の動画コメント欄には、チャンネルをいつも見ているという視聴者から情報が寄せられた。この視聴者は、現地の製紙工場であるパペレラ・ツクマンで働いていると名乗り、「リングはパペレラ・ツクマンの高圧変圧器の爆発で生じました」と説明している。

ロマンあるUFO説を支持する意見も聞かれるが、今回の現象は煙のリングという捉え方に落ち着きつつあるようだ。

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アルゼンチン上空で目撃された謎のリング。

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黒煙が上昇すると、対流でリング状になった様子。