各書体との比較からつくり方まで、明朝体のデザインを徹底解剖

  • 文:印南敦史(作家/書評家)

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【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『明朝体の教室―日本で150年の歴史を持つ明朝体はどのようにデザインされているのか―』

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鳥海 修 著 ブックアンドデザイン ¥3,520

私がグラフィックデザイン業界の端っこにいた1980年代後期、すなわちDTPが普及する前の時代には、写真植字メーカー、写研の書体見本帳とにらめっこしながら文字指定をしていた。いまとなっては懐かしさすら感じるが、本書の著者に写研の書体デザイナーとして働いていた時期があったという記述を目にした時、遅まきながら気づいたことがある。「そういえば、明朝体のような『書体』がどのようにデザインされているかなんて考えたこともなかったな」と。恥ずかしい話だが、だからこそ本書には強く心惹かれたのだ。

著者は、写研が「本文用明朝体」をつくらなくなったことから同社を離れ、先輩とともに書体デザインを手がける字游工房を立ち上げたという経歴の持ち主。いわば書体設計のプロであるが、本書は美術専門学校での連続講座「明朝体の教室」で全17回にわたって話してきた内容をもとにしたものだ。具体的には、明朝体のつくり方を、字游工房がつくった游明朝体を基準としながら、漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、約物(記号)の順に解説しているのである。とはいえ決して難解ではなく、説明は簡潔でわかりやすい。

幾何学的なフォルムをもつ漢字と、すべてが曲線で構成されたひらがな、楷書のようなカタカナと、それぞれ異なるスタイルをもつ文字を組み合わせた時、意識すべきことはなんだろう? いうまでもなく重要なのは、「似た雰囲気がして読みやすい」と感じてもらうことだ。そこで、デザインには最低限の親和性が求められるのである。

「その文字が、そのようにデザインされた理由」が無理なく理解できる内容。専門職の方はもちろんのこと、文字のデザインなど気にしたことがないという方にも大きな気づきを与えてくれることだろう。

※この記事はPen 2024年4月号より再編集した記事です。