16世紀に生まれた伝統的な英国教育が、いまでも最新な理由

  • 写真:齋藤誠一
  • 編集&文:久保寺潤子

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2022年に開校したハロウ校安比ジャパンに続き、23年8月、千葉県柏市・柏の葉キャンパスにラグビースクールジャパンが開校した。英国式教育の魅力を創設者が語る。

Pen最新号は『新しい学校』。正解のない時代を、一人ひとりがどう航海するのか? これからの子どもたちは、この未知なる難題をクリアしなくてはならない。そのプロセスは個人個人でまったく違う自由なもので、決まった道筋はない。だからこそ、学校も変わらなくてはいけないのだ。ここで紹介するのは、未来を見据えた26校の挑戦の姿でもある。

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ラグビースクール ジャパン

千葉/日本

種類:私立 中・高等学校
住所:千葉県柏市柏の葉6-2-5
設立年:2023年
生徒数:160人(2024年度募集人数は約160名を予定)
男女比:男子50%、女子50%
教員数:23人
学費(年間):450万円〜
寮費(年間):260万円~
おもな進路:未定

生活すべてに学びの環境を提供する、首都圏初のボーディングスクール 

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上:右手の校舎から門をくぐると緑地空間や講堂、食堂などの共有施設が点在。周囲は広い空が見渡せる開放的な環境で、多国籍な仲間たちと切磋琢磨しながら学びを深めることができる。 下:整然と並べられたテーブルが『ハリー・ポッター』を想像させる食堂。毎日ここで生徒と先生が食事をともにする。夕食はマナーやコミュニケーションのスキルを学ぶ、楽しくも重要な時間。

日本での大学在籍中にオックスフォード大学に留学したフェイフェイ・フウ。同世代のイギリスの若者が自分の未来を生き生きと語る姿に接し、受験戦争を勝ち抜いた日本の学生との違いにショックを受けた。イギリス滞在中に王室とアジアをつなぐ慈善事業と文化教育に8年間関わり、「世界は人のつながりでできている」ことを実感する。

「イギリスの教育は単に模範的な市民や人材の育成を目指すのではなく、世界のルールメイキングができる人物に価値を置いています。いままでのアジアの教育は、決められた枠組みのなかで成功するプレイヤーを育てることを重んじてきました」 

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フェイフェイ・フウ Fei-Fei Hu
CEAグループ代表、ラグビースクールジャパン創設者
1981年、上海生まれ。7歳から日本で育ち、早稲田大学在籍中にオックスフォード大学留学。イギリス滞在中、チャールズ国王の皇太子時代にその側近として慈善事業に携わる。都内にインターナショナルの幼稚園と小学校を開設。2023年よりラグビースクールジャパンを創設。

イギリスにはオックスブリッジのような世界最高峰の高等教育研究機関があるが、本物の人材の育成は前段階の中等教育にカギがあるとフェイフェイさんは言う。

「中学から高校という人格形成にとって大切な時期に全人的な教育を行っているのが“ザ・ナイン”と呼ばれる名門ボーディングスクールです。この伝統的なイギリス教育をモデルとして、日本でインターナショナルスクールを開校しました」

1567年創立のラグビースクールは13〜18歳までの生徒が「ハウス」と呼ばれる寮で生活をともにしながら学ぶ。ハウスは16世紀に通学困難な生徒のために周辺の住民が下宿を提供したのが発端。それがまとまり、学校の敷地内の寮になった。フットボール発祥の学校であり、映画『ハリー・ポッター』の原型ともなった名門だ。

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上:つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅から徒歩5分の好アクセス。都心からは電車で約30分。周囲には東大や千葉大の研究室がある。 下:広大な敷地には国際規格のラグビー場が。右手に見えるのが生徒が暮らす「ハウス」棟。

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生活をともにする寄宿舎と充実の課外授業

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インターナショナルスクールでは多様性が当たり前。7年間の学校生活のなかで、他者理解と自分の個性、アイデンティティについて考えるマインドセットが自然と身につく。

首都圏初のボーディングスクールとなるラグビースクールジャパンには3つの選択肢がある。完全全寮制の「タームリーボーディング」、週末を家族と過ごす「ウィークリーボーディング」のほか、毎日自宅から通学することも可能。入学試験や授業はすべて英語で行われ、イギリス本校と同レベルのプログラムを実施。14〜16歳ではIGCSE(イギリスが義務づけている学校卒業資格試験)、18歳までにはAレベル(ケンブリッジ大学傘下の教育機関が提供する高校卒業資格および大学入学資格)に向けた学習が行われる。

多彩な課外授業も同校の魅力だ。国際規格のラグビー場、レコーディングスタジオを併設した「音楽室」、本格的な舞台装置を備えた「シアター」、最新機材が揃う「スポーツジム」など好きなことにとことん熱中できる環境がある。

夕食の時間も大切な学びの場である。食堂に集まった寮生と先生は整然と並んだテーブルにつき、1時間会話を交わしながら食事をともにする。

「社会に出たらどんなバックグラウンドの人とも1時間は会話できることが若き紳士淑女としての基本です。夕食は人間力を養う場なのです」とフェイフェイさん。

夕食を終えハウスに戻ると、そこでは生活全般を見守るハウスマスター、学習を担当するチューター、家事担当の3人体制で生徒をサポートする。

「学習状況はもちろん、生徒が抱えている興味や問題意識、心配事を丸ごと受け取めます。一人の生徒を多面的に見ることができるのが、ボーディングスクールの特徴といえるでしょう」

5ヘクタールという広大な敷地をもつ同校の周囲には東京大学、千葉大学、国立がん研究センターなど世界トップクラスの施設が集まり、公・民・学連携による「柏の葉国際キャンパスタウン構想」が進められている。

「日本の社会課題も地球規模で考えるべきです。インターナショナルスクールはそのための新しい血を吹き込むきっかけになるのではないでしょうか」

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校舎にはリビングのように寛げるライブラリーやカフェ、談話室がいたるところに設けられている。
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生徒構成はYear7〜13の男女共学で、各学年は100〜120人を予定。
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ラグビーフットボールの起源となった少年、ウェブ・エリスの名を冠した国際規格のラグビー場を設置。他にも水泳や空手、ヒップホップダンスなどあらゆるスポーツを身につけることができる。
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クラシック音楽に室内合唱団、ジャズ、ポップスまで学べる音楽室。防音装置を完備した個室も多数用意されている。
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イギリス議会を模したディベート・チャンバー。生徒は左右に分かれ議論する。グローバル人材の育成を目指し、探究心、コミュニケーション能力、協調性、国際性、多様性の理解、内省力、回復力などを養う。

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