「魔法の足まわり」をもった、レンジローバースポーツSVの世界観に心底惚れ込んだ!

  • 文:大谷達也

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ポルトガルのアルガルヴェ・サーキットを疾走するレンジローバースポーツSV。

 

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「魔法の足まわり」6Dダイナミクスエアサスペンションを得たことで、サーキットではこれまで以上にダイナミックな走りが可能になった。

 

世界中の名だたるラグジュアリーカーブランドから高性能SUVが続々と登場している。

エンジンの最高出力が600馬力以上もあって、スポーティな雰囲気を引き立たせるモディファイを内外装に施している。乗り心地に関しても、スポーツカー並みのコーナリング性能を実現するために、どうしても硬くてゴツゴツしたものになってしまうのが一般的だ。

けれども「レンジローバースポーツSV」が目指した方向性は、少し違っている。

加速性能やコーナリング性能がスーパースポーツカー並みなところは、ほかの高性能SUVと変わらない。けれども、内外装の設えは、ライバルたちと違ってエレガントそのもの。乗り心地にしても、標準モデルとまったく変わらないくらい快適だ。そうした洗練されたクルマづくりは、かつて「砂漠のロールスロイス」と称されたレンジローバーの血筋を引く最新モデルにふさわしいものといえる。

まあ、そう言葉で説明するのは簡単だけれど、高性能なクルマをエレガントに仕上げるというのは並大抵のことではない。なかでも、レンジローバースポーツSVでとりわけすごいと思うのが、コーナリング性能はスーパースポーツカー並みなのに快適性は一切失われていない点。これは、ある意味で物理の常識を覆すといっても過言ではないくらい難易度が高い技術的チャレンジだ。そのため、彼らはこれまでにないまったく新しいサスペンションシステムまで開発してしまったのである。

 

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6Dダイナミクスエアサスペンションの透視図。前後左右に取り付けられたダンパーの油圧回路を相互に連結することで高い安定性を実現した。

 

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サーキット走行ではミシュラン・パイロットスポーツS5というオンロード用タイヤを装着。この状態で最高1.3Gのコーナリング性能を発揮するという。

その名も「6Dダイナミクスエアサスペンション」は、シンプルなメカニズムでボディが傾くのを防ぐ「魔法の足まわり」。構造としては、サスペンションダンパーという4輪に取り付けられた部品の油圧回路を相互に連結させることで、ボディが傾きそうになるとそれを自然に正そうとする力を発生。これまでスポーツモデルで一般的だったアンチロールバーというスプリングの一種を廃することにより、4輪が自由にストロークする余地を生み出して乗り心地を改善している点に特徴がある。

 

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V8ツインターボエンジンの最高出力は635馬力。0-100km/h加速は3.8秒、最高速度は290km/hと、スーパースポーツカー並みのスペックを標榜する。

 

国際試乗会が開かれたポルトガルの一般道や高速道路を走ると、その優れた快適性がよく理解できた。スポーツモデルにありがちな、“足まわりが突っ張っている”ような感触がなく、路面の凹凸をしなやかに受け流している印象がある。その優しい乗り心地は、前述したとおりレンジローバースポーツの標準モデルとまったく変わらないくらい。

それでいながら、アルガルヴェ・サーキットで全開走行を試みると、タイヤが滑り始めるほどのペースでコーナリングしてもボディの傾きがよく抑え込まれていて、ドライバーに不安を与えない。しかも、ボディの安定した姿勢が保たれるので4本のタイヤに均等に荷重がかかり、全体として理想的なグリップ力を生み出してくれる。これもまた、6Dダイナミクスエアサスペンションの優れた特徴といえるだろう。

635馬力を生み出すV8エンジンはただ高性能なだけでなく、低速域でも扱いやすいうえ、アクセルペダルを深く踏み込んでもエンジン音のボリュームが低く保たれる点が嬉しい。これに乗ると「スポーツモデルだからといってエンジン音がうるさいのって、ちょっと考え方が古いんじゃない?」と思ってしまうくらいだ。

 

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オプションで用意される23インチ・カーボンファイバーホイールは量産車として世界初の装備。ブレンボ製のカーボンセラミック・ブレーキも世界最大級の容量を誇る。

そうしたメカニズム面の優秀性も素晴らしいけれど、私がもっとも強調したいのは、レンジローバースポーツSVの優れたデザイン性にある。

2022年に発表された現行型レンジローバーのエクステリアデザインは、まるで未来からやってきた乗り物のように表面がつるっと滑らかで、しかもプロポーションがバツグンに美しかった。内装も、シンプルさをメインとしていながらも質感が高く、しかも細部までていねいにデザインされていることがひと目でわかった。この優れたデザイン性により、レンジローバーは「プレミアムカー」から「ラグジュアリカー」へとひとクラス押し上げられた。そしてこのデザイン性が世界中から高く評価され、一部モデルはいまだに品薄な状態が続いているという。

このレンジローバーをベースとして、そのスポーツ性をさらに高めたのがレンジローバースポーツ。内外装のデザインは、モデルのポジショニングにあわせて微調整が施されているものの、オリジナルのレンジローバーがもっていた美しさや質の高さは、ほぼそのまま受け継がれている。その品のよさ、とりわけインテリアの色合いが美しいことは、プレミアム、ラグジュアリーのセグメントを問わず、トップクラスに位置するといっていいだろう。

さらにスポーティなレンジローバースポーツSVともなれば、エクステリアに派手なエアロパーツを装着したり、いかにもホールド性が高そうなバケットシートを室内に取り付けたりしてもおかしくないが、このクルマにはそういった演出がほとんど見られない。それでいてサーキット走行でも機能面でなんの不満も抱かないのだから大したものである。

 

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ダイナミックなパフォーマンスを手に入れながら、エレガントなデザインがいささかも損なわれていない点もレンジローバースポーツSVの魅力だ。

 

そうした、スポーツ性を無闇に強調しない姿勢を「物足りない」と思うか「センスがいい」と思うかで、レンジローバースポーツSVの評価はまっ2つに分かれるように思う。

「じゃあ、オマエはどっちなんだ?」と訊ねられたら、躊躇なく「レンジローバースポーツSVの世界観に心底惚れ込んだ」と答えるだろう。