ミニのおもしろさは、デザインにある。ミニブランドの責任者、ステファニ・ブルスト氏の言葉を借りると、「ミニは共通のDNAを持っていながら(モデルごとに)個性が異なるファミリーのようなもの」となる。新型カントリーマンも、ミニの多様性の好例だ。

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これまで日本ではクロスオーバーの名で販売されてきたミニシリーズでもっともボディサイズに余裕のあるステーションワゴン版が、2023年にフルモデルチェンジを受けて、日本でもカントリーマンの名称で発売された。
2023年11月にガソリンエンジン仕様が発売され、続いて24年3月にバッテリー仕様(ピュアEV)が追加された。私が最初に新型カントリーマンを見たのは、23年10月のミュンヘンでの自動車ショーにおいて、クリーンな印象の強くなったボディが斬新だった。
デザインの解釈を、もっと広義にとらえるなら、新しいカントリーマンの見どころはボディにとどまらない。リサイクル素材を多用しながら、クリーンで、素材の質感を追求したインテリアデザインや、初めてアンドロイドベースで開発された「ミニOS9」で動くインフォテイメントシステムなど、じつは内容的にかなりあたらしい。

私が実車に乗れたのは、24年2月のポルトガルで。リスボン近郊のカスカイスなる海岸沿いのリゾート(複数のホテルとゴルフ場のコンプレックス)に、ガソリン仕様のトップモデル「ジョンクーパーワークス(JCW)カントリーマン」と、バッテリー駆動の「SE ALL4」が、世界各地から招かれたジャーナリストのために、試乗用にずらりと並べられていた。
ボディのディメンション(全高、全幅、全高の3サイズ)は、従来のクロスオーバーよりやや大型化。JCWでみると、全高は4315mmから4445mmへ、全幅は1820mmから1845mmへ、全高は1595mmから1645mmへ。ホイールベースも2670mmから2690mmへと延長されている。ボディサイズ拡大の大きな理由は、衝突安全性強化のためだろう。
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といっても、さきに書いたように、イメージはミニそのもの。ヘッドランプの意匠が矩形(四角)に近くなったり、グリルのなかにバンパーの一部が組み込まれたりといったぐあい。各ピラーがブラックアウトされた、いわゆるフローティングルーフのテーマは継承されている。
ユニークなのは、先述した「ミニOS9」という最新のOSをベースにしたインフォテイメントシステム。円形のモニターをフルに使ったビジュアルにとどまらず、音楽やライティングと連動したドライブモードや、ウィジェットを使ってアプリをすぐ呼び出せるデザインなど、ユーザビリティが上がっているのだ。

ドライブモードは実際は「エクスペリエンスモード」と改称されていて、スポーツ走行の「ゴーカート」、ノーマルの「コア」、エコの「グリーン」に加えて、たとえば「ビビッド」というものがある。
「ビビッド」を選ぶと、流している音楽(ストリーミングも楽しめる)に合わせて室内のライティングの色も変わる。たとえば、私が乗ったときかかっていたのは、米アトランタのラッパー、21サヴェージの「アメリカンドリーム」と今っぽいもの。
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さらにアイコンを押すと、円形のモニター全体が回転するビニール盤になる。これに手を当ててこすると、キュッキュッとスクラッチ音。ナビゲーションを使ったとき表示されるポインターを押すと、矢印がミニの図案に変わる。こういう遊びが随所に見られる。

走りの印象は、加速性にすぐれ、ステアリングホイールの操舵に対する車体の反応は速く、ブレーキも立ち上がりが速い。ガソリンのJCWも、バッテリーのSEも、ともにスポーティな全輪駆動なので、ドライブが楽しめた。
足まわりはシャキッとしているのだけれど、路面の凹凸はうまくいなして、乗り心地はけっして硬すぎない。カーブを曲がるときの車体の動きはなめらかで、おとなっぽいという印象だった。
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エクスペリエンスモードによっては、あえて疑似排気音を聞かせてくれたりするのだけれど、総じて静粛性は高く、この点でも洗練度は高いと感じられる。個人的には”やる気”のあるときは、ひととクルマとの一体感が強い「ゴーカート」モードで、リラックスしていきたいときは「グリーン」モードがいいなと思えた。
室内は長めのホイールベースのおかげで、後席スペースもじゅうぶん。とくにエンジン車だと後席に前後スライド機構がそなわるので、荷物が多いとき、あるいはゆったり座っていたいとき、使いわけができるのもよい。

「ジョンクーパーワークス・カントリーマン」の価格は667万円(カントリーマンはベーシックな前輪駆動「C」の489万円から)。電動モデルは2モーターの全輪駆動「カントリーマンSE ALL4」は662万円で、シングルモーターの前輪駆動「E」だと593万円。