オーストラリアのゴールドコーストで、女性たちが「フリー・ザ・ピーチ」と猛抗議の行進

  • 文:山川真智子

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ゴールドコースト。Darren Tierney-Shutterstock

「女性が肌もあらわな水着でビーチに来るのは禁止すべき」。こんな地元の名士の発言に、オーストラリアのゴールドコーストで、女性たちの抗議運動が起こった。発言に憤った女性たちは、露出度の高い水着姿で「フリー・ザ・ピーチ(桃=“お尻”に自由を)」と書かれたプラカードを持って行進。何を着るかは個人の自由だと、男性目線の性差別に反対の声を上げた。

これでいいのか? 名士が極小水着の女子に苦言

ニュースサイト、ファースト・ポストによれば、ことの発端は、ゴールドコーストで長年コミュニティ活動に貢献し、2022年のボランティア・オブ・ザ・イヤーにも輝いた地元の名士、イアン・グレースさんが市長に送った書簡だった。

地元紙に掲載されたその書簡によれば、グレースさんはあるイベントで、ほぼ裸に見えるぐらい三角部分が小さなGストリング(フロントがV字型でヒップ部分がひも状のTバック)を付けた女性に遭遇したという。視線を送る人々に、「文句ある?」とでも言いたげなこの女性は、男性たちに「間違ったメッセージ」を送っており、自分自身を安っぽい性の対象として見せていたと主張した。

さらにグレースさんは、むき出し同然のTバックのお尻は、裸の胸と同様にエロチックだと指摘。ビーチだけでなく家族連れが多い公営プールやテーマパークでも、子供への影響を考え、露出の多い水着は禁止すべきだとした。

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個人の自由と社会の良識 どちらが優先?

グレースさんの書簡は多くのオーストラリア人を憤らせ、「フリー・ザ・ピーチ」と名付けられた抗議運動が起きた。お尻の見える水着でビーチに集まった女性たちは、ビーチでの選択の自由を訴え、時代に逆行するTバック禁止の求めに断固立ち向かうとした。デモを組織したレベッカ・パークさんは、子供に何が適切かを教えることは必要だが、それは各家庭ですべきことだとし、全面禁止は解決策にはならないと訴えた。

ニュースサイトBNNは、この議論はありのままの姿を受け入れようというボディ・ポジティブと個人の自由についての議論に火をつけたとする。禁止に批判的な人は、女性の体を管理し、辱め、自己表現の権利を抑圧するものだと主張。服装を規定するのではなく、受容性と包括性の促進に焦点を当てるべきだとしているという。

一方禁止を支持する人々のなかには、地域社会の良識基準を守るためにやむを得ないという意見がある。ビーチは公共の場であり、許容される服装には制限があるべきだという主張だ。

議論は白熱 市長の意見は?

禁止賛成派と反対派の熱い戦いは続いているが、そもそもグレースさんの書簡は単なる提案であり、法的な効力はない。

書簡を受け取ったトム・テイト市長は、女性のファッションに物申したグレースさんは勇敢だと述べつつも、禁止の求めを退ける発言をしている。理由は、「長年の経験から、何かを禁止したり制限したりすると、その人気は倍増する」ということを学んだからだそうだ。

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抗議活動の様子。

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 抗議には男性も参加。

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豪10ニュースの報道。