【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】第192回“まるで浮遊する球体が高速移動するよう !? 新型ニスモZが『フォートナイト』な理由”

  • 写真&文:青木雄介

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専用エアロで強化され、特徴的なニスモカラーが施される。

日産フェアレディZは発売から1年が経った現在でもオーダーがままならないほどの人気らしい。そんな中、ハイパフォーマンスバージョンである「フェアレディZニスモ」が発売。言わずとしれた日産のモータースポーツ部門ニスモが手がけた“ニスモZ”ですよ。

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ニスモ特注のレカロ社製シートはドライバーの体幹を安定させる。

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乗ってみると、いっそう過当競争を招くだろうと感じる乗り味に「罪なクルマをつくったな」と思ったね(笑)。新型Zの魅力をいっそう濃くするようにエンジン、ブレーキ、フレーム、エアロダイナミズムと全方向的に性能を上げている。これがどこまでも痛快かつ、いつまでも乗っていたくなる仕上がりなんですよ。

ニスモモデルでいえば日産GT -Rが、テクニカルで競技者に人気のタクティカル・シューティングの金字塔『レインボーシックス シージ』だとすると、ニスモZは世界的なムーブメントになったバトルロイヤル・シューティング『フォートナイト』って感じ。ユーザーフレンドリーな仕様で間口が広く、誰でも参加できて楽しめる。なるほど。「話はそれからだ」というわけね(笑)

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19インチの鍛造ホイールを採用。

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新型Zの特徴的な走りをさらに濃くするのは2550㎜というコンパクトカー並みに短いホイールベース。極端に短ければゴーカートになっちゃうけど、ショートホイールベースで旋回性に優れたこのクルマは街乗りが軽快かつリズミカル。エンジンはターボのブースト圧をあげ、GT -R ニスモでも採用されている最先端のマネジメントシステム「気筒別点火時期制御」を組み込んでいる。

その結果、アクセルを入れると即座にトルクが発生するので、まるで浮遊する球体が高速移動するかのようにぎんぎんに走るんだ(笑)。嗚呼、これがめちゃくちゃ愉しいのね。この「ぎんぎんさ」からどの速度域でも隙を感じさせない剛性感や、インフォメーションと快適性を両立した足まわりの改良も実感できる。ここがこのクルマの肝なんだ。

峠に行くとハンドリングマシーンとしての本領を発揮する。ニスモバージョンはノーマルより重量が増えつつも、トルクベクタリング機能によって安定感も増している。フラットで素直なハンドリングは、北米で「ワンショットステアリング」と呼ばれているらしい。ターンインで舵角が一発で決まる感じとともに、コーナーを脱出するまでの所作がものすごくスムーズなんです。

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電動ウエストゲート制御やサブラジエターも追加される。

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北米のマニアたちの間では、3ペダルのミッションが用意されていないことも話題になってた。でもギア間ストロークを短くした9速オートマチックは十分に速くなっているし、このぎんぎんに走る新型ニスモZの魅力を際立たせているのはスムーズなトルクコンバーター式だからこそ。

とはいえですよ(笑)。もともと鋭い挙動へのポテンシャルは高いクルマだから、ノーマルの3ペダルミッションをフルチューンするか、移植して軽量化してカリッカリにする夢も捨てがたい。シューティングゲームでいえば『エスケープ・フロム・タルコフ』ばりのド・ハードコア(笑)。武器となるパーツを精査して理想のマシンを仕上げよう。うん。そんな猛者には私から「貴君の健闘を祈る」と敬礼したいっ!

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フロントのコアサポートとリアフロアを補強し、全速度域でリニアで連続性のある剛性感を実現した。

日産 フェアレディ Z ニスモ

全長×全幅×全高:4410×1870×1315㎜
エンジン:V型6気筒DOHCターボ
排気量:2997㏄
最高出力:420ps/6400rpm
最大トルク:520Nm/2000~5200rpm
駆動方式:FR(フロントエンジンリア駆動)
車両価格:¥9,200,400~
問い合わせ先/日産自動車お客さま相談室
TEL:0120-315-232
www.nissan.co.jp

※この記事はPen 2024年3月号より再編集した記事です。