「まだ動く!?」ドアプラグ破損のアラスカ航空機事故、4900m上空から落ちたiPhoneは無事だった

  • 文:青葉やまと

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blackzheep-Shutterstock ※画像はイメージです

米オレゴン州ポートランドの空港を発ったアラスカ航空ASA1282便のドアプラグが破損し、客室内に急減圧が生じた事故で、機内から吸い出されたとみられるiPhoneが地上で発見された。

事故当時、当該機は1万6000フィート(約4900m)上空を飛行していたものの、地上に落下したiPhoneは画面割れもなく、完全に動作する状態だった。

iPhoneは乗客のひとりが所持していたものと見られている。発見時は機内モードになったままで、画面には電子メールで受信したASA1282便の手荷物レシートが表示されている状態だった。

発見は1月7日で、バッテリーがまだ半分残っている状態であった。道路脇の草地に無傷で落ちているところをワシントン州在住のショーン・ベイツさんが見つけ、写真付きでX(旧Twitter)で報告している。

傷もなくアプリも正常に動作

ベイツさんがXのポストに添えた写真では、ほぼ無傷のiPhoneを確認できる。スマホケースに入れられ、画面保護シールが貼られた状態だ。ケースにも画面にも目立った損傷は見られない。

パスコードは設定されておらず、画面ロックを開いたところ、メール送受信アプリ「メール」が正常に機能していたという。画面表示にも異常はみられない。

発見者のベイツさんはXで、「道端でiPhoneを発見……。バッテリーは半分、機内モードのまま、#アラスカ航空 ASA1282便の手荷物のレシートが表示されたまま、1万6000フィートの落下を完全に無傷でやり過ごした!」と発見時の興奮を語っている。

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まさか空からの落とし物とは気付かず…

ベイツさんは自身のTikTokで、草地を散歩していたところつまずいてよろめき、iPhoneが落ちているのに気付いたと語る。完動品であり、まさか空から降ってきたとは思いも寄らなかったようだ。はじめは誰かが通り際に、車から投げ捨てたのではないかといぶかしんだという。だが、残されたメールの内容から、事故機から吸い出された可能性に思い当たる。

米国家運輸安全委員会(NTSB)は事故に関連した落下物の報告を市民に呼びかけており、ベイツさんは要請に応じてNTSBに通報した。NTSBによると、発見時点でドアプラグ自体はまだ見つかっていなかったが、吸い出された携帯電話としては2台目の発見だったという。1台目の携帯の機種や動作状況は明らかになっていない。

ニューヨーク・ポスト紙によると、発見現場の道路脇にNTSB職員が向かい、現場を検分した。

2000万回以上閲覧される注目の話題に

この発見は海外で広く報じられたほか、ソーシャルメディア上で話題を集めた。ベイツさんのポストは約3週間で2080万回以上表示されている。

発見されたiPhoneは、減圧による衝撃のすさまじさを物語る。米CBSニュースは、iPhoneの充電端子内に、引きちぎられたケーブルの端子が残されたままであったと報じている。ケーブルを接続した状態で急減圧に見舞われ、ケーブルを破断して機外へ舞い出たとみられる。

iPhoneが無事だった理由についてニューヨーク・ポスト紙は、保護ケースを装着していたことが幸いしたとの見方を示している。シュピゲン社の耐衝撃ケース「クライオアーマー」が装着されていた。同シリーズは「軍用認定を受けた落下防止機能」を謳う。

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薄型のスマホに働いた、大きな空気抵抗

約4900mの落下をiPhoneが耐えた理由について、専門家は物理学の観点から分析している。オスロ大学・理論天体物理学研究所のポスドク研究員であるダンカン・ワッツ氏は、ワシントン・ポストに対し、無傷であった理由を科学的見地から説明した。

「基本的な答えは空気抵抗です」とワッツ氏は語る。「直感に反するようですが、空から落ちてくるiPhoneには空気抵抗が働くため、それほど速くは移動しないのです」

ワッツ氏は落下の原則を、「携帯電話の画面が地面に向かった状態で落下している場合には、かなりの(空気)抵抗を受けます。一方、垂直に落下している場合は、かなり少なくなります」と再確認。そのうえで、「現実には(落下中に)相当に回転したと考えられますので、これによって相応の量の風を受け、結果として相当な上向きの力が生じたことでしょう」との見立てを示している。

着地場所にも助けられた?

ワッツ氏はまた、重力による加速と空気抵抗はある時点で釣り合い、加速が停止するとも解説している。終端速度と呼ばれるこの段階に達したあとは、それ以上速度が上がることはない。

理論上は最終的に30mph(約48km/h)で地表に到達した可能性があるが、幸いにも落下地点が草地であったため、衝撃の多くを逃がすことができたのでは、とワッツ氏はみている。

装着していた保護ケース、空気抵抗、そして草地への落下と、数々の要因が生んだ不幸中の幸いとなった。

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発見されたiPhone。特に傷もなく完全に動作しているようだ。

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@seansafyre quick story of how I found a phone that dropped 16,000 feet 😅 definitely belonged to a passenger on #alaskaairlines #asa1282 ♬ original sound - Sean Bates

発見を振り返るベイツさん。「はじめは車から捨てられたのかと思った」