ガムフラテージが再考する、現代のためのシャンデリア【Penが選んだ今月のデザイン】

  • 文:猪飼尚司(デザインジャーナリスト)

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メモアは、写真の3灯のほかに、5灯や直列タイプ、また天吊りペンダント以外も壁付のブラケットなど、さまざまなデザインが揃っている。「メモア130シャンデリア・ブラスⅢ」(φ430×H270㎜)¥206,800

複数の光源を組み合わせながら、美しい光と空間をつくり出すシャンデリア。その歴史は実に古く、中世にまで遡る。元は大勢の信者が集まる教会の大回廊をろうそくで効果的に照らすために開発されたかたちが宮殿で転用されるようになると、デザインが複雑化。時代とともに次第に装飾性が増していき、いつしか豪華絢爛を象徴する存在に。住宅はもちろん、オフィスの応接室やレストラン、ホテルの宴会場など、さまざまな施設で使われていた。しかし、穏やかさが好まれる現代では、シャンデリアは華美すぎると敬遠される傾向にあるのも事実だ。

コペンハーゲンを拠点とするスティーネ・ガムとエンリコ・フラテージによるデザインデュオ、ガムフラテージ。常にその装飾性に魅了されてきたと語るシャンデリアラバーの彼らは、クラシカルで上質な造形の特徴を維持しながらも、日常にマッチする親しみあふれる現代的なプロダクトへとリデザイン。シンプルながら、さまざまな環境に対応する拡張性の高い照明「メモア」が完成した。

メモアの特徴は、果物の房を彷彿とさせるオーガニックなかたちのシェードと、水平に流れる真鍮色のメタルフレームの直線のコントラスト。シェードは、2枚のクリアガラスのあいだに乳白色のオパールグラスを挟んだ3層構造を取り入れることで、やわらかな艶肌が際立つ上品な佇まいに。メタル部はグラフィカルで合理的なかたちに抑えながら、どんな空間にも適応するすっきりとした見た目になるように考えられている。

製造は、ヴィンテージランプの魅力を知り尽くす1903年創業のデンマークのリーファが担当。一度は廃れかけたシャンデリアも、メモアの登場をきっかけにまた復活の兆しを見せるような予感がする。

「メモア」

リンインクープ
https://lynnbelys.com

※この記事はPen 2024年3月号より再編集した記事です。