「暴風の機内で叫ぶ乗客を再現…」アラスカ航空機事故をパロディ化した動画が話題「日本だったら絶対無理な内容!」

  • 文:山川真智子

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Wang An Qi-Shutterstock ※画像はイメージです

日本では年明け早々、羽田空港での日本航空機と海上保安庁の航空機の衝突・炎上という大事故が発生したが、アメリカでも、飛行中のアラスカ航空機から機体の一部が吹き飛ぶトラブルが起きていた。あわや大惨事の可能性もあったこの事故を、アメリカの人気バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』がパロディ化。日本なら作れないレベルのその絶妙なセンスが、話題になっている。

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機体に穴…緊急着陸で全員無事

アラスカ航空機の事故は、1月5日に発生。オレゴン州ポートランドからカリフォルニア州に飛行中、機体側面のドアプラグという部分が外れて、大型冷蔵庫ほどのサイズの穴が開いた。高度1万6000フィートに達していた機内では、減圧で酸素マスクが降下。パイロットはすぐに引き返し、20分後に緊急着陸した。数名のけが人が出たものの、171人の乗客と6人の乗員は無事だった。

この事故を受けて、アラスカ航空のパロディ宣伝映像を制作したのがSNLだ。SNLは1975年から続く長寿番組で、土曜の深夜に放送されている。コメディアンたちの寸劇や音楽ゲストの演奏などで構成され、特に政治的な風刺や時事ネタのパロディで、高い人気を得てきた。

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あわや大惨事だったのに…ネタ化が容赦ない

パロディ・ビデオでは、冒頭で自社機の事故に言及。ネットフリックス配信のドラマなどで知名度が高まった俳優のジェイコブ・エロルディが従業員役で登場し、「安全は我々の最大の関心事です」と述べた。

しかし、別の従業員役を演じるコメディアンのケナン・トンプソンが、「でも飛んでいるのにドアがないなんて、実は結構かっこよく見えたことはあなたも認めなくっちゃ」とおちゃめに発言。エロルディも「みんなが悲鳴を上げ、携帯が空に飛び交うなんて…、すごかったよ」とほほ笑んだ。

2人のコメントの後、女性従業員役の女優、ハイディ・ガードナーが、「だから新しいアラスカ航空のスローガンは、『あなたは死ななかったし、クールなストーリーも手に入れた』になりました」と説明した。

その後も、グレーを超えた赤裸々なジョークは続々と放たれた。「他の航空会社では映画を見ることができるが、アラスカ航空では、あなたたちは映画の中にいるんです」と真顔のエロルディが発言。その後映像は突然切り替わり、風が吹き荒れるキャビン内で、乗客が悲鳴を上げるカオスの再現シーンが流れた。これとは別に、穴の開いた壁の近くに座っていた乗客の少年のシャツが、引き裂かれ飛んでいく再現シーンも挿入されていた。

さらに、事故後の改善点として、安全のしおりを分厚い本に置き換えたこと、飛行機があらかじめ緊急脱出用スライドを展開したまま飛行することなどを乗務員が報告。また、サービスとして、ジェットコースターばりの記念写真の撮影があることも発表された。

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これってアメリカ式? 視聴者は受けていた

日本的な感覚からすると、洒落にならないのではないかと思ってしまう衝撃のパロディだが、アメリカでは好評だ。ソーシャルメディアでもたっぷり効いた皮肉を楽しんだという声が多い。番組を放送するNBCは、文化的時流を的確にとらえているときに、SNLのパロディはうまくいくと指摘しており、航空業界への世間の不満も反映しているようだ。

実はSNLはこれまでに何度も航空会社をターゲットにしているが、今回の事故でアラスカ航空を責めるのは酷だという声もある。ビジネスインサイダー誌によれば、事故の原因はボルトの緩みであるとされ、規制当局は製造したボーイング社に責任があると指摘している。

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 放映されたパロディ映像。34秒くらいで乗客が叫び出す。

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 分厚くなった安全のしおり。

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記念品のスリリングな写真。

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実際の事故が起きたときのフライトの映像。