「大人の名品図鑑」帽子編 #3
かつて帽子は日除けや防寒などの実用的な目的、あるいは社会における身分や階級の象徴として進化したが、いまやファッションアイテムとして、老若男女に愛用される装身具=アクセサリーだ。今回の「大人の名品図鑑」では、いま注目を集めるカジュアルな帽子について考察する。
ブーニーハット、サファリハット、ブッシュハット、アドベンチャーハットなど、タイプによって、あるいはブランドによって呼び方はさまざまあるが、トップが平らなバケット型のクラウンに幅広のつばを備えたミリタリーな帽子が、ここ数年人気を集めている。全周に日除けがあることから、顔だけでなく後方の首も太陽の日差しから守ってくれる実用的なデザイン。飛ばされないようにアゴ紐が付いるものも多く、釣りや登山などのアウトドアスポーツにも適している。アゴ紐を上で絞ってつばを丸め、カウボーイハットのようにも被ることも可能だ。その機能性の高さから最近では野外での音楽フェスティバルなどで被っている人も多い。もちろんアウトドアでのアクティビティだけでなく、街中でこの帽子をスタイリングに活用する人も増えている。
これらの帽子のオリジナルとなったブーニーハットは、熱帯の森林地帯やジャングル向けに軍用に開発されたものと言われ、1960年代にアメリカ軍に採用されたものだ。軍用のモデルはクラウンの外周にリボン状の帯が縫い付けられたものがほとんどで、これは「ブランチループ」と呼ばれ、枝や葉などをループに刺して、被る人をカモフラージュしていたという。
多くの兵士たちは戦闘時にヘルメットを被っていたが、ヘルメットは重くて首が疲れる。自然界に存在しないヘルメットの丸い外観はかえって敵兵から発見されやすいとも言われていた。一方、ブーニーハットはシルエットが背景に溶け込むので偽装効果も高い。コンパクトに折り畳め、携帯しやすいということでこのブーニーハットは兵士たちから好評だった。ちなみに「ブーニー」とはタガログ語由来の言葉で、文化から離れた田舎や僻地を揶揄した表現とも言われている。
ブーニーハットを検索すると、ブーニーハットは米国式のつばの広いタイプを指し、つばが狭い同様の帽子は英国式で「ブッシュハット」と呼ばれていたと解説しているサイトもあった。しかし戦場もしくはその地域でミルスペック(軍が定めた規格基準)等を無視してつくられたローカルメイドのブーニーハットもたくさんあったらしいので、基本は同じでも細かいディテールが違う帽子があったことは容易に想像できる。現在でもアメリカだけでなく、世界中の軍隊でこのタイプの帽子が採用されている。
---fadeinPager---
ザ リアルマッコイズの本格派ブーニーハット
今回取り上げるブーニーハットは、ザ リアルマッコイズからリリースされている本格的なモデル。同ブランドは1988年に日本で創業、創意と工夫に満ち、合理性に優れた20世紀のアメリカンガーメンツの傑作をアーカイブしたようなコレクションを展開するブランドだ。A-2ジャケットに代表されるフライトジャケットなどのミリタリーウェアや、ワークウェア、バイカースタイルのアイテムを幅広く展開して、多くのファッション好きから支持を集めている。
「MA22005 JUNGLE HAT」を品名にもつ帽子は、ベトナム戦争時のハットにも用いられていたコットン100%のポプリンを素材に採用、クラウン外周には「ブランチループ」も付くブーニーハットのお手本のようなデザイン。同ブランドのWEBサイトを見ると、「ベトナム戦争の時にはこのブランチループにグレネードピン(手榴弾のピン)を付けてデコレーションしている兵士が多く写っている」と書かれているので、徹底してリサーチしてこのモデルを製作したことが伺える。そのほか、クラウン部分に付いた通気穴の金具やレザーパーツを使ったストラップ、商品タグに至るまで、すべてにこだわりを感じる。さらに同ブランドがつくる製品は「オリジナルの“模倣”ではなく、“蘇らせる”。時にはオリジナルを凌駕する」と書かれている。そのコンセプトを体現するような、本格派のブーニーハットだ。
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---
ザ リアルマッコイズ 東京
TEL:03-6427-4300
therealmccoys.jp
---fadeinPager---