優しい旨味が身体にしみわたる、宅飲みに外せない便利な純米酒【プロの自腹酒 vol.15】

  • 文:山内聖子
  • 写真:榊 水麗
  • イラスト:阿部伸二

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大七酒造/大七 純米生酛(きもと)

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福島県を代表する銘酒として名高い。天然の微生物を活かした生酛でつくるこの酒は今さんによると「骨太なのに押し付けがましくなく、器が大きい男らしい酒」だとか。膨らみのある旨味と優しい余韻の美しさが特徴で、寒い季節はぜひ燗酒にして飲みたい。お薦めは熱々燗。躊躇せず温度を上げよう。「レンチンしてもいい。酒質が強く味が崩れないところも魅力です」とズボラ派にうれしいアドバイスも。1800㎖¥2,780/大七酒造 TEL:0243-23-0007

燗番として25年。これまであらゆる日本酒をひたすら温め続けてきた「善知鳥(うとう)」店主の今悟(こんさとる)さん。いまや愛好家はもちろんのこと、日本酒のプロもその技を盗みに来るほど、日本酒業界では燗酒名人として知られている。

そんな日本酒を知り尽くした今さんが、仕事抜きでも飲みたいと推薦してくれたのが、福島の日本酒「大七 純米生酛(きもと)」である。

「初めて飲んだのは、善知鳥を開店する10年も前のこと。その頃はおそらく東京随一の品揃えだったいまはなき『与っ太』という日本酒居酒屋で、女将に薦められて飲んだのがきっかけでした。とにかく美味い!と感動したんです」

当時はまだ東京で無名だった大七と出合い、こんなに美味い酒が世間に知られていない事実に驚いたことが、後に善知鳥を開店する原動力にもつながったという。以来、いまに至るまでプライベートでも愛飲するように。特に友人との宅飲みでは外せない日本酒なのだとか。

「スーパーで手軽に買えますし、和洋中どんなつまみにも合う懐の深さがあります。冷酒から燗酒まで美味い温度帯の幅が広いのもいい。こんなに便利で無敵な酒は、なかなかないですよ。誰かの自宅に呼ばれて持参する時も、銘柄選びで困ったら私は大七の一択です」

この酒を進ませるおともは、今さんの生まれ故郷である青森名産の「鰊(にしん)の切込(きりこみ)」だ。新鮮な鰊を細切りし、塩や米麹、唐辛子で漬けたソウルフードであり、今さんも手づくりする善知鳥の名物でもあるが、既製品では内海水産のものがいち押し。「地元にいる時にいちばん食べていた故郷の味」とのこと。旨味たっぷりの大七が恐ろしく進む最強の肴だ。

「難しいことを一切考えずに体感してほしい。そうすれば、この酒の美味さがよくわかります」

今さんは、確固たる口調でそう主張した。

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飲んべえが泣いて喜ぶ、内海水産の「鰊の切込」

店主が手づくりする鰊の切り込みの味に近いのが、内海水産の「鰊の切込」。そのまま食べてもいいが、アンチョビのようにサラダやパスタ、ピザに入れてもおいしいとか。

今 悟

青森県出身。かつての青森市の鳥「うとう」の名を冠した同店は創業25年。燗酒の名店として日本酒のプロからも愛される。イベントなどの出張燗番人としても活躍。

善知鳥

東京都杉並区西荻北3-31-10 小西ビル 201
TEL:03-3399-1890

※この記事はPen 2024年2月号より再編集した記事です。