とてつもない獰猛さと繁殖力…北米で急増する“スーパー豚”の動きが怖すぎると話題に

  • 文:宮田華子

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@CCFR_CCDAF - Xのキャプチャ画像。

現在「ある脅威」がカナダとアメリカで問題となっている。

その脅威とは「スーパーピッグ」と呼ばれる豚の個体群。通常の豚ではなく、ユーラシアイノシシとカナダの家畜豚の交雑種である。Sky Newsをはじめとする各メディアの報道によると、野生化したスーパーピッグはユーラシアイノシシの高い生存能力と、家畜豚の大きさと繁殖能力を兼ね備えているという。

USA Todayによると、スーパーピッグはカナダで急激に増加した。アルバータ州、サスカチュワン州、マニトバ州周辺を徘徊するスーパーピッグだが、すでに制御不能な状態となっている。そして今後カナダとアメリカの国境を越え、アメリカ・ミネソタ州、ノースダコタ州、モンタナ州に侵入する恐れがある。

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この問題に詳しいサスカチュワン大学のライアン・ブルック教授は、野生豚について「地球上で最も侵略的な動物である」と語っている。野生の豚は賢く、かつ順応性があるためカナダの厳しい冬を生き抜く力がある。また雌豚は1度に6頭の子どもを産み、年に2回出産することが可能だ。管理を徹底し65%に頭数制限をしたとしても、雪だるま式に頭数は増えていく。

ブルック教授のチームは、カナダ国内で6万2000頭の野生豚の観測を記録した。また航空調査により、カナダとアメリカ・ノースダコタ州の国境の両側からスーパーピッグの生息が観測されている。

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豚は北米原産の動物ではないが、1500年ごろから北米に生息している。現在問題となっているスーパーピッグの増加の発端は、1980年代、カナダが畜産農家にイノシシの飼育を奨励したことに始まる。2001年頃に市場が崩壊し、不満をいだいた畜産業者がイノシシを柵から放ったため野生化し、増殖が制御不可能となった。

豚は野生化すると土地や農作物を荒らし、病気のまん延にも貢献してしまう危険な動物だ。スーパーピッグを含め、カナダもアメリカも野生豚の増殖に警戒し対策を講じている。野生動物の管理法として代表的なものに「狩猟」があるが、野生豚の場合、狩猟による管理は「問題を悪化させるだけ」とブルック教授は解説。狩猟の成功率はわずか2~3%だが、銃を使うことで豚の警戒心が高まり夜行性になってしまう。これにより追跡が困難になり、管理がさらに難しくなるという。

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テキサス州ではマシンガンを使用した野生豚の殺傷を行っているが…。@FirstPost – YouTubeのキャプチャ画像。

アメリカの一部の州ではクラウドソーシングによる「Squeal on Pigs」追跡プログラムを採用している。また科学者は亜硝酸ナトリウムなどの毒による管理方法を研究しているものの、他の種にも害を与える可能性があるため注意が必要だ。アメリカ農務省によると、野生豚は少なくともアメリカ国内・35州で報告されており、合計600万頭と推定。農作物に年間約25億ドルの被害を与えている。

野生豚との戦いを長年続けてきたアメリカだが、そこに現れた新たなる難敵・スーパーピッグ。アメリカは北部国境沿いの監視を強化し何とか侵入を食い止めようとしているが、現状では完全に食い止めることは困難と予想される。

野生豚のパワーと繁殖能力が人間に勝り、スーパーピッグが真のインベーダー(侵略者)となるのか、それとも人間の知恵が野生に勝つのか? 結果はそう遠くない日に明らかになるだろう。

【次ページ:動画あり】スーパーピッグの獰猛さを動画で確認。

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狩猟の様子や草原を走るスーパーピッグの姿を映したニュース番組。その猛進ぶりを見ると、「人間、勝てないかも…」との思いが頭をかすめてしまう。