これはポップすぎる! 古生物学者が監修したまさかの恐竜御朱印が爆誕

  • 文:Pen編集部
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2024年の干支は龍(辰)。古来、日本を含む東アジアで瑞祥の象徴とされてきたこの動物にあやかって、全国の神社仏閣では様々な龍のデザインのお守りや縁起ものが目白押し。

そんな中、茨城県石岡市の古社・常陸國總社宮(ひたちのくにそうしゃぐう)で元旦午前0時から頒布を開始するのは龍は龍でも恐竜の御朱印、その名も「古龍印(こりゅういん)」だ。

デザインは2種類。1つはティラノサウルスのような2足歩行の恐竜が、初日の出をバックに失踪する様子を描いた「ヒタチノクニサウルス」。もう1つは映画『ジュラシックワールド』で登場した海の古生物・モササウルスのような姿をした「サシノサウルス」だ。作画を手がけたのはサイエンス・イラストレーターのツク之助さん。博物館の展示における恐竜などの専門的な復元図を手がける一方、人気絵本『フトアゴちゃんのパーティ』の作者としても知られている。

この恐竜たち、実は未来に発掘されるかもしれない想像の姿なのだという。常陸國總社宮の禰宜で神主ライターの石﨑貴比古さんはこう語る。

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サシノサウルス古龍印

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「現在、日本各地で恐竜の化石が次々に発掘されていることをご存じでしょうか?常陸国≒茨城県ではまだ見つかっていませんが、いずれ見つかるであろう想像の姿をカタチにしたのです」

昭和53年、岩手県でモシリュウと呼ばれる恐竜の化石が発見されたことを皮切りに、現在まで発見が相次いでいる。兵庫県のタンバリュウ、福井県のフクイサウルス、北海道のムカワリュウなど現在まで全国1道18県から見つかっているのだ。

茨城県での恐竜発見も夢物語とは言い切れない。事実、ひたちなか市にある白亜紀の地層「那珂湊層群」では茨城県自然博物館の調査により、同時代のスッポンの化石が見つかるなど、恐竜発見の機運が高まっているという。先述した「モササウルス」の化石は、この地層からも見つかっている。

しかし、龍の代わりに恐竜とは、このアイディアはどこから生まれたのだろう?

「私どもが管理している神社の一つに佐志能神社(さしのじんじゃ)があります。高さ180mほどの低山の中腹に拝殿があるのですが、この山は龍神山と呼ばれています。昔から雌雄の龍が住んで降雨を司っていると信じられているんです。そして社殿から少し離れた境内地に“波月岩”と呼ばれる大きな岩壁があります。実はこの周辺には恐竜時代(ジュラ紀~白亜紀)の海の地層が存在しているのです」

石﨑さんは茨城県自然博物館で古生物を担当する学芸員に、波月岩周辺で恐竜が発見される可能性について相談。現在の地層の状況から判断すると化石発見の可能性は極めて低いものの、神社の境内が恐竜時代には海であったことは間違いなく、そこに棲んでいたであろう古生物に「サシノサウルス」という名前をつけて想像を膨らませるのは面白いのではないか、という話になったのだとか。さらに茨城県でいずれ発見されるかもしれないティラノサウルスのような恐竜には「ヒタチノクニサウルス」という名前をつけてみることにした。石﨑さんは続ける。

「化石を中心としたハードエビデンスを、我々が映画で見るような恐竜の姿に昇華させるのは人間の想像力。人類は誰も見たことのない生物たちについてかなり具体的なイメージを共有していると言えます。一方、想像上の龍も同じ。洋の東西で性格に違いはあるものの、古代人から現在まで龍やドラゴンのイメージは全て人間の脳内で醸成され、共有されてきたものです。実は神社で神様に祈る気持ちも根本は同じ。目に見えないものをどれだけ想像し、大切に出来るか。祈りの心、龍の伝説、恐竜への憧憬は想像力という同じ源泉から生まれるものだと考えています」

近い将来、茨城県で発見されるかもしれない恐竜たちの姿をカタチにした「古龍印」。突飛な話と思いきや、意外にも深い話が隠されていたのである。

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茨城県石岡市の古社・常陸國總社宮(ひたちのくにそうしゃぐう)。

常陸國總社宮

茨城県石岡市総社2-8-1
TEL:0299-22-2233
https://sosyagu.jp/