フグがつくる幾何学模様の“ミステリーサークル”、不思議な波模様でメスに求愛

  • 文:青葉やまと

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p_anna-Shutterstock  ※画像はイメージです

フグは不思議な魚だ。危険を感じると身体を膨らませる姿は、なんともユニークだ。また、毒がありながらも身の美味しさで、古くから人々を魅了してきた。縄文時代には既に好んで食べられていたことが、遺跡から出土した骨によってわかっている。

そんなフグにもうひとつ、あまり知られていない興味深い習性がある。海底でせっせと砂を集め、不思議な文様を形成するのだ。細かな砂で描かれる美しい模様は、まるでミステリーサークルのようでもある。小さな身体でせっせと砂を集め、直径2mにも達するサークルを描く。

米公共放送のPBSが贈る人気の自然番組シリーズ『ネイチャー・オン・PBS』が、その不思議な生態に迫った。

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ロボットのフグが海底探索

フグを驚かさずに間近で観察できるよう、PBSは奇策に打って出た。「スパイフグ」なるフグのロボットを製作し、本物のフグがすむ海底で活動させる作戦だ。胸びれと尾びれを器用に動かして海中を進む。

ダイバーとともに海底を探索するスパイフグは、澄んだ水底に描かれた文様を発見した。その形はまるで、ていねいにデコレーションされたケーキのようだ。

粒度の小さな砂粒が土手のように盛り上げられ、ゆがみのない2重の円を描いている。それぞれの円には、規則正しいヒダが波打っており、人間が作った何かの記念碑のようですらある。

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小さなヒレが生んだ芸術作品

この不思議なサークルは、オスのフグがメスに求愛しようと、ときに1週間以上もの期間をかけて作り上げるものだ。小さなヒレで水流を起こし、砂を舞い上げることで形を少しずつ変化させ、根気よく海底に模様を刻んでゆく。

おおよその形ができあがっても、最後の仕上げが残っている。盛りあがった土手の頂点に貝殻を乗せていき、あたかもデザートにトッピングを施すように飾り付ければ完成だ。PBSによると、「貝殻は単なる芸術的な装飾ではない」のだという。「稜線を安定させ、中心をかき乱してしまう水の流れを遅くする働きがある」

小さなフグの身体で直径2mの芸術的なサークルを完成させるには、相当な体力が必要だ。求愛の場を完成させたスタミナのあるオスだけが、メスの興味を惹くことができる。メスは気に入ると、中心部に集められたひときわ細かな砂の上で卵を産む。

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90年代の日本で発見

米スミソニアン誌によると、フグがこのように不思議な模様をつくり出すことは、90年代の日本の海底で初めて発見された。その後の研究により、求愛行動の一環であることが判明した。

科学ニュースサイトのライブ・サイエンスは2013年の記事で、日本の千葉県立中央博物館分館 海の博物館の川瀬裕司氏の解説をもとに、サークルの効果を取り上げている。半分のスケールのモデルを作って流体力学の実験をしたところ、サークルの中心部では水の流れが25%穏やかになる効果が確認されたという。

美しく大きなサークルを作ることで、オスがメスに見つけてもらいやすくなるメリットもあるようだ。米テキサス大学オースティン校のアレックス・ジョーダン研究員は、ライブ・サイエンスに対し、「例えば、水深が深くて視界が悪かったり、個体間の距離が離れていたりする場合に、オスはメスに見つけてもらうために大きな巣を作らなければならないでしょう」と語る。

水底の芸術家たちが生む華麗な作品には、実用的な効果が隠されているようだ。

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水底に現れた不思議なサークルの映像。オスのフグが根気よくつくり上げる。

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