「ばかばかしいけどなんか可愛い…」オランダ人が一斉に“パンケーキを頭に被った”理由とは?

  • 文:山川真智子
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MO MED DOM-shutterstock ※画像はイメージです
 

オランダでは、11月29日は「聖パンネクークの日」だ。人々がパンケーキを頭に載せて、伝説の聖人パンネクークへの祝福を祈るというものだが、実は漫画家の作り話から始まった新しい習慣だという。ソーシャルメディアには、パンケーキをかぶったオランダ人たちの写真が続々と投稿されており、新たな伝統が作られようとしている。

始まりは漫画 その後奇跡の物語へと発展

ニュースサイト、AOL.comによれば、聖パンネクークの日は、1986年に漫画家のヤン・クラウスが考案した。漫画の中で、主人公の女の子が夕食に豆料理を食べることに不満を漏らす。そんな孫娘に、おじいちゃんが「今日11月29日は、『聖パンネクークの日』だ」と話し、この日はパンネクーク(パンケーキ)を頭にかぶる習慣があるのだと説明した。早速家族は夕食のテーブルで、この習慣にトライ。仕事から帰宅したパパを、びっくり仰天させたというストーリーだ。

クラウスはその後、2015年に別の漫画で聖パンネクークの日の起源を説明した。英スカイ・ニュースによれば、舞台は12世紀のロッテルダムにあった修道院。若い修道士の15歳の誕生日が祝われ、お祝いの食事として一人1枚ずつパンケーキが出された。ところが老いた修道院長が寒さを訴えたため、若い修道士は自分のパンケーキを修道院長の禿げ頭の上に載せて暖めたという。

すると、天から黄金のフライパンを持った天使が降臨。フライパンの中のパンケーキをひっくり返して、若い修道士の頭の上に載せた。「ハレルヤ!主は我々に奇跡をお与えになった!我々のなかに聖人がいる!」。修道士たちは叫び、それぞれ自分のパンケーキを頭に載せたということだ。

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人気上昇中! 見せたい欲求がソーシャルメディアへ

スカイ・ニュースが、聖パンネクークについて英シェフィールド大学のオランダ語上級講師、ヘンリエッタ・ローワース氏に聞いたところ、「もちろん全くの作り話」だが、人気になっているのは確かだということだ。

2016年には、新たに作り出したパンケーキの伝統を広めるため、クラウスと友人たちが「聖パンネクーク全国委員会」のウェブサイトを立ち上げており、記念グッズまで販売されている。

AOL.comは、聖パンネクークの日の知名度アップに貢献したのが、ソーシャルメディアだと述べる。老若男女問わず、パンケーキをかぶった自撮り写真を投稿したいという誘惑には逆らえず、数年前から11月29日に続々と投稿が集まるようになったという。

本家パンケーキの日を超える? 求められていたアイデア

実は、世界の多くのキリスト教国では、年の初めの数カ月間に、「懺悔の火曜日」ともいわれるパンケーキを食べる日があり、オランダでも「パンケーキ・デー」として祝われている。それにも関わらず、聖パンネクークの日が新たな伝統として定着しそうな予感だ。

クラウスは6年前に亡くなったが、彼のシンプルでばかばかしいアイデアこそ、寒い冬に暮らすオランダの人々に必要だったとAOL.comは述べ、広く記憶される価値があるとしている。

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ソーシャルメディアに投稿された、今年のパンケーキかぶりの写真。

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クラウスが描いたパンケーキの漫画。

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伝説の聖人パンネクーク。

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聖パンネクーク全国委員会がオランダ語で紹介するストーリー。