世界21カ国に店をもつ「% Arabica」が麻布台ヒルズにオープン! 東海林代表が語った東京進出5つのポイント

  • 写真・文:一史
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「%」マークが映える人気メニューのカフェラテ。エチオピア産の自家焙煎豆を使い、自慢のエスプレッソマシンで抽出するコーヒードリンク。各¥550

何棟もの高層ビルが立ち並び、新たな街を生み出した広大な東京・麻布台ヒルズ。2023年11月24日に華々しくオープンしたこの施設のテナントのうち、コーヒー店好きを「あっ」と言わせたのが「% Arabica(アラビカ)」の出店である。「京都から世界へ」を標語に掲げ、日本を発信基地にする世界21カ国168店舗(23年11月現在)展開のコーヒーチェーンだ。ところがこれまで日本では京都に3軒、北海道に1軒しかなかった。SNSを賑わせる「%」のカップ写真は各地で撮られたもの。もしくは店がある香港、上海、シンガポール、ドバイ、ロンドン、ニューヨーク、カサブランカ ……。東京でも間違いなく“映える”のに店がない希少性がブランド力を押し上げた。
アラビカ躍進のはじまりは、創業者で代表の東海林克範(しょうじ・かつのり)が14年に京都にオープンさせた2号店から(1号店は13年の香港)。現在も直営は京都3店のみで、ほかはフランチャイズ。京都の路面店にいまも行列を生み出す人気の主な理由は、内装とグッズのミニマルモダンなデザイン力、良質なコーヒーの味、世界における知名度の高さだろう。
独自のコーヒーカルチャーを築き上げた代表がこのたび、拠点にする海外から麻布台ヒルズの内覧イベントで来店。アラビカ成功の秘訣と東京出店の狙いについてのインタビューに応じた。明かされたユニークなエピソードの数々を、5つのポイントにわけて紹介する。

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1. 東京初出店のいきさつ

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麻布台ヒルズ タワープラザ4階の店舗。アラビカらしい白を基調にする内装。コーヒー豆の輸出で使う麻袋はアラビカのベーシックなディスプレイ。※記事内写真はすべて、関係者らを招いた内覧イベントでのスナップ。

ついに東京進出した狙いについてまず東海林代表が口を開いた。入念なマーケティング戦略があると思いきや、その答えは意外なものだった。
「実は7年程ほど前からヒルズを運営する森ビルさんに、六本木ヒルズや表参道ヒルズへの出店をお誘いいただいていました。しかしそのときは「京都から世界へ」という活動に力点をおいており世界展開に気持ちを向けていました。今回出店を決めたのは、我々の世界展開も軌道に乗り森ビルさんが35年もかけて準備をしてきたこの麻布台ヒルズのプロジェクトに感銘を受けたからです」

もちろんビジネスの発展も視野に入れての決定だろうが、アラビカの個性とイメージを崩さず東京で運営できる機会がようやく訪れたのが重要なようだ。立地のユニークさでいうと、ごく近い将来にエジプトのピラミッドの周辺、さらにヨルダンのペトラ遺跡の目の前(!)にも店を設ける計画が進んでいる。
「“見聞”という言葉が大好きで、アラビカで働く若者たちには『世界で見聞を広めて、人生の目標を設定しよう』と伝えています。世界のアイコニックな場所に店舗を持ち、そこでシンプルでタイムレスなコーヒーをお出ししつつ、バリスタたちが見聞を広めるプロジェクトにしたいと常々考えております。」
映画『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』のロケ地でもあるペトラ遺跡に、モダンデザインのアラビカが佇む光景がいまから楽しみだ。

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2. 同時オープン2店舗の内装

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地下鉄・神谷町駅に直結する麻布台ヒルズ入口にできた「アラビカ東京 B1店」。テイクアウト客に便利な最高の立地だ。photo:Takumi Ota

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「アラビカ東京 4F店」は自然光が差し込む開放的な空間。屋外テラスも併設している。photo:Takumi Ota

麻布台ヒルズ内のアラビカは2店舗ある。ひとつは駅直結で多くの人が行き来する地下、もうひとつはファッションや飲食の店が入居するビル4Fの屋外テラス併設店である。気軽にテイクアウトする店と、店内でゆっくり味わう店の2タイプが設けられた。世界各地のアラビカの内装はホワイトとブラウンのバイカラーで統一され、それ以外は立地に合わせたダイナミックなインテリアを採用している。デザインも担当する東海林代表は、東京の2店にどのようなスタイルを込めたのだろうか?
「世界のアラビカ他店と比べると、さほど個性的とは言えないかもしれません。商業施設ですと空間が限られます。天井の高さも一定ですし、この制約のなかで思いついた構成にしました」

代表にとってはベーシックな位置づけの店のようだ。とはいえ一般のコーヒー店のあり方とは異質な、客の目を輝かせる空間である。まぶしいほど照明が明るく、壁も什器も真っ白。そこにコーヒー豆の輸出で使う麻袋や、家具のような佇まいの「スレイヤー社」のエスプレッソマシンが優しさを添える。女性が似合うお洒落カフェを狙った結果なのだろうか?
「それも特にそういうわけでは……。内装の白は、もともと自分が白好きだからです。印刷資材業からコーヒーの道に進んだ経緯もありデザインが好きで、コーヒーが出発点の人とは発想が異なるのかもしれません。店舗のこだわりでいえば、普遍的であることを強く意識しています。トレンドに乗る姿勢は避けるようにして。インテリアはほぼオリジナルですが、イームズの椅子も取り入れています。イームズも時を超えた存在でアラビカに合います」

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3. コーヒー&フードの探求

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オリジナルブレンドに加えシングルオリジンのスペシャルティ豆を多数用意。販売するこれらの豆の選定も東海林代表が行っている。
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常時10種類の豆を販売中。客のオーダーを受けて店内で焙煎するパーソナルサービスの店だ。アラビカの基本的な焙煎スタイルはミディアムロースト。

アラビカのコーヒーの豆の軸は、中南米、アフリカ、アジアから選ばれたスペシャルティコーヒー。抽出は看板メニューのカフェラテに象徴されるエスプレッソだ。東京では浅煎りハンドドリップのコーヒースタンドが人気でも、東海林代表は多くの人がコーヒーらしさを感じる普遍的な味のエスプレッソにこだわる。
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アラビカが日本と香港の輸入代理店を務めるスレイヤー社のエスプレッソマシン。コーヒーマシンらしからぬ有機的なデザインが店内のお洒落ムードを生む。

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自家焙煎機を設置するアラビカ流の店づくりは麻布台ヒルズでも健在。「焙煎したてはやはり味が違います。コーヒー豆がいい味を保てるのは粉に挽かなくてもわずか2週間ですから、少量を買い足していくのがお薦めです」と東海林代表。

豆の選定は自身で行い、その作業がたいへんだと笑顔で話す。
「世界中の店の豆をすべて自分で選んでいます。年間に1000種類以上カッピングしていますので、業界でも相当カッピングしているほうでしょう。店舗数が多くなり、1度の豆の買い付けもコンテナー数十本などのすごい量になってきました。豆の仕入れは真剣勝負です」

コーヒービジネスを行うにあたり、東海林代表はハワイにコーヒー豆の農園を購入することからはじめている。収穫目的でなく、豆の生産を学ぶためだった。
「店で使えるほど多くは生産できない小規模な農園でした。いまは手放しましたが、ここで得た栽培体験が豆選びの仕事に役立っています」

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「アマムダコタン」が手掛ける新店「ダコー」のパンも販売。「彼らも世界進出を計画していて、そのお手伝いができればと考えています」

「おいしいものを適正価格で」を掲げる東海林代表の価格設定にもユニークな目線がある。
「日本だと1杯¥500〜550が適正なんじゃないかなあ?¥600だとちょっと高い気がするんですよね、感覚的に」
豆の産地やフランチャイズ店の訪問を含め、年に11カ月は世界中を旅して住居もバリ島にある代表。国際人の彼が日本暮らしの我々と日常的な感覚をシェアするセンスに驚かされる。

ランチタイムに販売するパンも大注目の品揃えだ。福岡から東京・表参道に進出して連日大行列をつくる「アマムダコタン」系列のミニパン業態「ダコー」とコラボレート。同系列でこちらも大人気店の「アイム ドーナツ」に通じるダコーのドーナツも置いている。アマムダコタンは日本的な惣菜パンが評判の店。外国人の来店が予想される麻布台ヒルズだからこそ、フードも日本スタイルで勝負している。

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4. 「%」ロゴのアイディア

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店内には「%」マークがたくさん。このマークだけでひと目でアラビカと気づかせる巧みなブランディング。

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アイコン入りのグッズ類もファッション性が高い洗練されたデザイン。

「%」マークは欧文の店名ではArabicaの前に置かれ、「% Arabica」となっている。ナイキのスウッシュ、アップルのりんごマークに相当するブランドアイコンだ。目線を引き付け好奇心を掻き立てられるこのデザインも、東海林代表の深い観察目線によるもの。
「ヒントになったのは、イギリスのウォールペーパーマガジンのロゴです。『Wallpaper*』で、右端に『*』がついてるんですよ。これが好きでパソコンのキーボードをじっと眺め目に止まったのが%。形の面白さで選んだ記号です」
%はコーヒーの木の枝になるコーヒービーンが実る様子を表現したそうだ。ミニマルでありつつ温もりもあり、流行に左右されない普遍的な記号。まさしくアラビカが目指す姿と合致する。

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世界を旅し続けた人生の答え

アラビカの誕生と世界展開は、東海林代表の人生そのもの。子どもの頃から両親とともに世界中を巡り、現在まで行った国は120カ国を越える。コーヒーを好きになったのは、アメリカのUCLA大学留学時代。スターバックスが台頭して革新的なコーヒーカルチャーが生まれてきたタイミングだった。家業である印刷資材メーカー商社を引き継ぐも、会社のアジア展開と共に香港に移住したのちにコーヒービジネスへの参入を決めた。
「当時の香港に自分が納得がいくコーヒーがなかったのがきっかけです。第1号店は香港につくり、その後世界展開を夢見て京都にフラッグシップストアをつくりました。東山の八坂通に出店すると瞬く間に評判になり、世界から毎日フランチャイズ依頼が来るブランドに成長。中東、アジア、ヨーロッパ、北米と、京都から世界展開をするユニークなブランドをつくりあげました」

東海林代表へのインタビューの終わりにざっくりと、「アラビカとはどんな店か?」と尋ねてみた。代表が返してくれた答えが次のものだ。
「正直においしいコーヒーの店。直球勝負です」

% ARABICA Tokyo Azabudai Hills 4F店

東京都港区麻布台1-3-1 麻布台ヒルズ タワープラザ4F
営業:11時〜20時
定休日:不定休 ※麻布台ヒルズ タワープラザの休業日に準ずる
TEL:03-6277-6098

% ARABICA Tokyo Azabudai Hills B1店

東京都港区虎ノ門5-9-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザB B1F
営業:8時〜20時
定休日:不定休 ※麻布台ヒルズ ガーデンプラザBの休業日に準ずる
TEL:03-6721-5551

https://arabica.coffee/

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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