華やかな今昔の旅へ……アーティスト・松山智一、巡回展『グッチ ビジョンズ』を体感

  • 写真:TISCH(MARE Inc.)
  • 編集&文:佐野慎悟

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グッチ創設の地、フィレンツェを皮切りに世界の都市を巡回するエキシビション『グッチ ビジョンズ』が、いよいよグッチ銀座に上陸。アーティストの松山智一をナビゲーターに迎え、グッチが誇るクリエイティビティとクラフツマンシップの真髄に迫る。

 

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松山智一
Tomokazu Matsuyama

アーティスト

1976年、岐阜県生まれ。アメリカ・ニューヨーク在住。絵画を中心に、アジアとヨーロッパ、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素を有機的に結びつけて再構築し、異文化間での自身の経験や情報化の中で移ろう現代社会の姿を反映した作品を制作する。2024年3月17日まで、弘前れんが倉庫美術館で個展『雪月花のとき』が開催中。

拡大されたフローラ プリントの意匠で埋め尽くされた、グッチ銀座屋上スペースに佇む松山智一。その姿はまるで、松山自身の作品世界に迷い込んだかのようにも見える。松山はプライベートでもフローラ プリントの総柄ブルゾンを愛用中。

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「表現が制限された時にこそ、イノベーションは生み出されます」

1921年のブランド創設以来、グッチが長い歴史のなかで生み出してきた、数々のシグネチャーアイテムやアイコニックなモチーフ。常に先進的なクリエイティビティによって時代を切り開いてきた歴代のクリエイティブ・ディレクターや、卓越した技術を受け継いできた職人たち。グッチを彩るあらゆる要素にオマージュを捧げるエキシビション『グッチ ビジョンズ』が、グッチ銀座で開催中だ。日本では自身初となる大規模個展に合わせて来日中のアーティスト松山智一が、華やかなグッチ ワールドへの扉を開いた。

グッチの創設者であるグッチオ・グッチのストーリーを伝える「トラベル」、ブランドを象徴するハンドバッグを並べた「アイコンズ」、セレブリティたちが着用したドレスを展示する「スターズ」、バンブーハンドルの製法をひも解く「クラフツマンシップ」、グッチが誇る不朽のデザインコードを取り入れたアイテムが並ぶ「コード」、自然界への愛を表現した花々のモチーフで埋め尽くされた「フローラ」と、6つの展示ルームで構成された会場を、松山はゆっくりと巡っていく。

「こうやって、創設時のエピソードや歴史の背景を改めて学んでいくと、ブランドの見え方はガラリと変わりますね。私の活動の拠点であるニューヨークでも、近年は美術館でファッションを歴史のアーカイブとして紹介することが一般的になっています」

 

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グッチ ビジョンズ最初の展示ルームとなる「トラベル」では、1921年のブランド創設から、グッチがたどった100年にわたる歴史をタイムトラベルするような、フューチャリスティックな展示が観られる。壁面には初期のラゲージもディスプレイされている。

 

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グッチのビジョンを具現化する、職人たちへのオマージュを表現した「クラフツマンシップ」ルームでは、ホログラムに投影されたグッチの職人が、バンブーハンドルを仕上げるための巧みな技を紹介。

 

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レディ・ガガ、ビリー・アイリッシュ、ナオミ・ワッツなど、映画界や音楽界のスターたちのために仕立てられたドレスが並ぶ「スターズ」ルーム。写真はレディ・ガガが2022年放送映画批評家協会賞の授賞式で着用したドレス。

 

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フロアをつなぐ階段スペースでは、1921年から現在までのタイムラインとともに、ブランドの歴史にまつわるストーリーを展開。京都・清水寺で開催された創設100周年イベントなど、日本関連のエピソードも紹介。

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「100年続くものの裏にあるのは、一貫したフィロソフィーの強さ」

戦後間もない物資難の状況下で誕生したバンブーバッグの歴史に触れた松山は、コロナ禍の混乱によって、スタジオメンバーの大半が自国へと帰国していった時の、自身の経験と重ねる。

「イノベーションというものは、ときに制限の中でこそ生み出されます。創作活動が制限された状況下では、なにができないかではなく、なにができるのかを考えることが重要です。状況の変化に呼応して進化を続けていくことで、時代のふるいにかけられても残り続けていくことができる。そんなことに気づかされました」

グッチが102年の歴史の中で進化を続けてきたとはいえ、改めてその歴史の断片を振り返ってみると、どの瞬間もユニークで、同時にどの瞬間もグッチらしさにあふれている。松山はそのことの重要性についても触れる。

「ファッションでも、アートでも、音楽でも、進化の中で新しいものが生まれる時には、必ず『変わってしまった』というタイプの評価にさらされます。しかし、いつまでも変わらないものよりも、常に時代を反映して表現を変容させていけるもののほうがよっぽどリアルですし、その根底にあるフィロソフィーが強ければ、後から振り返った時に、必ず一本筋が通ります。最終的にクリエイティビティというものは、作品やプロダクトの連続によって、フィロソフィーという概念を表すことなんです。それをこうやって体系的に観られるということは、とても有意義なことだと思いました」

ゆるぎないフィロソフィーとともに生み出された、各時代における最先端の表現が蓄積していくことで、やがてはそれがレガシーとなり、タイムレスな価値となる。

「ピカソの作風だって、時代の流れの中でさまざまに変化しましたが、後から振り返ってみると、どれもピカソらしさにあふれています。グッチもしかり、そういった一貫したフィロソフィーをもつものだけが、長い時間軸の中で、いつまでも強い魅力を放ち続けられるのだと思います」

 

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フィレンツェにあるアーカイブの保管庫を想起させる「コード」ルームには、迷路のように配置されたトランク型の什器の中に、さまざまなデザインコードが並ぶ。写真右はトム・フォード時代、左はアレッサンドロ・ミケーレ時代のデザイン。

  

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エキシビションの最後を飾る「フローラ」ルームには、巨大な花々が咲き誇るイマーシブなインスタレーションが登場。階段から屋上にかけても、床や壁面のすべてがフローラ プリントで覆い尽くされており、華やかな世界観に没入できる。

『GUCCI VISIONS』

会場:グッチ銀座 ギャラリー
住所:東京都中央区銀座4-4-10 グッチ銀座6-7F
会期:開催中〜2024年春
開場時間:11時~20時
入場無料 予約不要
www.gucci.com/jp/ja/st/stories/article/gucci-visions-ginza
www.gucci.com/jp/ja