「大人の名品図鑑」ダウン編 #1
軽くて暖かく、アウトドアスポーツはだけでなくデイリーユースにも使えるダウンジャケットは、いわば冬の最強アウター。機能性はもちろんのこと、最近ではファッション性を備えたダウンジャケットも数多く登場している。今回の「大人の名品図鑑」は、そんなダウンジャケットの名品を集めてみた。
ダウンジャケットとは、ガチョウ(グース)やアヒル(ダック)など、水鳥の羽毛を使った防寒用のアウターのことだ。ダウン製品の品質表示には「ダウン○%、フェザー○%」と書いてあるが、このダウンとは水鳥の胸から生えてくるタンポポの綿毛のような羽毛のことで、一つひとつの羽毛を「ダウンボール」という。ダウンボールは毛と毛が絡み合わないという特性があるため、空気を溜め込むことができる。その空気が断熱材となって、体温を外に逃さず身体を温めてくれる。1羽の水鳥から採れるダウンの量は約5gから10gと言われ、まさに貴重な素材だ。
一方、フェザーとは水鳥の胸以外から採取された羽軸を持つ羽根のこと。フェザーは保温性ではダウンに劣るが、通気性が高く、羽軸が湾曲しているので弾力性がありボリュームを保つ役割を果たしてくれる。ほとんどのダウン製品がダウンとフェザーを混合しているのは、保温性と弾力性を両立させるためだ。
いくら保温性が高いからといってダウンだけでジャケットをつくってしまうと、ふっくらとした質感が得られず押し潰れたような状態になってしまうという。つまりダウンジャケットにはダウンとフェザー、どちらもが必要というわけだ。最近では羽毛の代わりに中ワタにポリエステルなどの人工繊維を用いたアウターもあり、ケアが簡単で優れた性能を持つタイプも多いが、軽さと保温性の点ではダウンの方が優れている。
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世界で初めて製品化されたダウンジャケットとは?
ではダウンジャケットはいつ頃できたのだろうか? 初めて製品化したのは、エディー・バウアーというアウトドアブランドだ。ブランド名にもなっている創業者のエディ・バウアーがアメリカ西海岸のシアトルで「Bauer’s Sport Shop」を立ち上げたのが1920年。最初はバドミントンのシャトルコックやフライフィッシング用の毛ばりなどを開発・販売して高い評価を得ていた。そんなある日、根っからのアウトドアーズマンだったバウアーは、真冬の時期に釣りに出かけたが、寒さで低体温症になってしまった。死にそうになったバウアーだったが、それでもウインタースポーツがしたいと、防寒に優れたアウトドアウェアの開発に乗り出す。
彼が着目したのが、保温性が高い羽毛だ。しかし洋服の内側に羽毛を均等な量に配置するのは当時の技術では極めて難しいことだった。試行錯誤の末、羽毛を菱形の状態でキルティングすることで、羽毛を動かさずに仕立てる製法を開発する。1936年、バウアーはこの製法の特許をアメリカで取得、「スカイライナー」の名称で世界初のダウンジャケットを販売する。その製品タグには「地球上で最も軽く、暖かい」と書かれていたと聞く。その後、エディー・バウアーが製作したダウンジャケットは、エベレストや南極などに出掛ける登山家や冒険家に提供され、ダウンジャケットはエディー・バウアーのアイコン的なアイテムとなった。
この秋冬に日本再上陸を果たしたエディー・バウアーにも、この記念すべきダウンジャケット「スカイライナー」がラインナップされている。オリジナル同様、「ダイヤモンドキルティングデザイン」を施したクラシックなボンバースタイルに700フィルパワー(1オンス=約30gの羽毛をシリンダーに入れた際の体積を示した単位。数値が大きいほど、羽毛の膨らみが大きく、中に含まれる空気の層により熱を外に逃しにくくなる)の良質なダウンを封入した機能溢れるモデル。襟や袖にはニットリブが使われ、クラシックなムードを醸し出す。アウトドアシーンはもちろんのこと、街着としても着やすいデザインだ。
「スカイライナー」は、これまでのダウンジャケットのお手本となった記念碑的なモデルであり、エディー・バウアーのアウトドア・ブランドとしての出自を物語る名品だ。一度袖を通してみる価値はあるだろう。
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