ドイツは寒い。近年の温暖化で暖冬になっているとはいえ、2022/23年冬の平均気温は2,7度。11月、冷たい雨がそぼ降る首都ベルリンで、ユニクロの「ヒートテック®20周年」記念イベントが行われた。
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ヒートテックへの注目度を高めた、欧州エネルギー危機
日本人では知らない人はいないだろう「ヒートテック®」。しかし、世界各国のプレスや世界中からのファッション、アウトドアなど多彩なインフルエンサーの関心度がここまで高いとは!世界中での累計販売枚数は、なんと約15億枚以上にのぼるそうだ。
しかもパリコレでの調査では、ここ数年で買い始めたという人が多いという。大きな理由のひとつは、意外なところにあった。ロシアのウクライナ侵攻で加速した、エネルギーの価格高騰である。
2022年、EUでは人口の9.3%が、自宅を十分に暖かく保つことができないと回答している。状況は国によって異なるが、ドイツも公共の建物では最高室温を19度に保つように呼び掛けられたりと、洋服によって室内の寒さの問題を解決する必要性が高まっているのだ。
北国ドイツでは、外は寒くても建物の中は暖かいことが多いため、歴史的にも防寒着は外で羽織るための分厚いものが中心だった。ウィンタースポーツ用品なら充実しているが、タウンユースのものはほとんどない。薄手で動きやすくじんわりと暖かいヒートテック®は、ドイツ人にとって目から鱗の画期的な製品だったのである。
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天然素材やサステナビリティ、時代によって変遷する課題に取り組む
高機能インナーとして、2003年に市場に登場したヒートテック®。より薄く、より暖かく。ストレッチ性を高め、形状保持や消臭効果などの機能を加えて……ユーザーの声を反映し、毎年のように地道にブラッシュアップされている。ドイツをはじめヨーロッパのユーザーの声を取り入れ、2021年には、肌にあたる面を天然素材コットン100%にした商品も登場した。
また、2023年からヒートテックとエアリズムの一部商品で、リサイクルポリエステルやリサイクルナイロンを採用している。ポリエステルに限っていえば、ブランドでの全使用量の30%がリサイクル。ファーストリテイリンググループ全体では、2030年までにリサイクル素材など温室効果ガス排出量の少ない素材の使用割合を全使用素材の50%とする目標を掲げ、商品開発を進めているという。
環境への影響が問題となっているマイクロプラスチックも、大きな課題だ。国際自然保護連合(IUCN)の調査によると、海に存在するマイクロプラスチックの約35%が合成繊維の衣料品の洗濯時に発生しているという。2021年、ユニクロの母体である株式会社ファーストテイリングは「マイクロファイバーによる自然環境への影響を最小化する国際的取り組み」に署名。世界各国250社と共同し、マイクロファイバーによる自然環境への影響を最小化、商品のライフサイクル全体を通じて環境への放出を減らすために努力していくという。
それに加え、公式サイトで環境負荷を減らすお手入れ法も紹介している。
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高機能インナーから、アウターへ。進化は続く
ユーザーの意見や取り巻く環境、意識の変化に合わせて改善され、年月とともに変遷していくヒートテック®。ファッショントレンドも意識し、インナーとしてだけでなく、1枚で着れるようなデザイン性の高いものも考えている。会場の天井には、定番のTシャツだけでなくパンツやレギンス、などの幅広いバリエーションがずらり。PRINCESSE TAM TAMとコラボした、カラーストライプが印象的なリブタートルネックのヒートテック®もイベントで発表され、注目を浴びていた。ウィメンズではあるが、くすみカラーのストライプは男性にも似合いそう。これから、もっともっと世界中の人たちを包み込み、温めていってほしい。