【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第186回“英国騎士のように色気が“むんむん”な、孤高のメーカーによるリアルスポーツの到達点”

  • 写真 & 文:青木雄介
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コンパクトなスーパーカーをイメージさせるエクステリア。

完全なEVメーカーになる宣言をしたロータス。そのエンジン最終モデル「エミーラ」に乗った。405馬力のスーパーチャージャー付きV6エンジンをミドシップにレイアウトした3ペダルマニュアルシフト。英国のバックヤードビルダーとして創業したロータスの浪漫を感じさせつつ、大人のリアルスポーツとして有終の美を飾ったと言えるはず。

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視認性に優れたコクピットは英国製スポーツカーならではの上質な職人技を感じさせる。 

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ここでいうリアルスポーツというのはコンピューターの介入が少ないオーセンティックなスポーツカーってこと。シフトタイミングを制御する機能はないし、デフで左右輪の差をつけて鋭く曲がる機能もない。けれどもスキルを賭けてリスクを取れば、スポーツカー操縦の原点を彷彿させる体験をすることができる。

基本的な構成は、ロータスお馴染みのバスタブ型の高剛性アルミニウムフレームにリアミドシップのスーパーチャージャー付きV6エンジン。そしてトレードマークのような重めの油圧アシストのパワーステアリングや、ダブルウイッシュボーン式の足回りがもたらすハンドリングが素晴らしい。路面状況や接地感、シャフトの駆動感まで感じながら、わずかな舵角でぐいぐい曲がる。ロータス党を熱狂させるハンドリングマシンとしての色気が“むんむん”なんですよ(笑)

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チタン削り出しのシフトノブ。スターターには、セーフティロックが奢られる。

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重いクラッチを踏み、ガチンと音がしそうなショートストロークのHパターンシフトを操作、そしてコントローラブルなブレーキに感心しながら操縦するとライトウェイトスポーツに大人の色気を加えた、ロータスの到達点が見えてくる。アクセルを踏み込めば、3000回転付近からスーパーチャージャーが重奏し、メカニカルなノイズが車内を支配する。

鎧を纏った騎士の剣技のようなハードなドライバビリティがスピードへの衝動を生み出し、ランニングハイのようにその先の桃源郷を追い求める。「もっと速く」と願うその瞬間に、いまどきのスーパースポーツとは一線を画す、ロータスらしい孤高が表れるのだ。

ドライブアシスト満載のスーパースポーツはいつでもフラットにドライバーに接してくるけど、エミーラはドライバーに相応のモチベーションとテンションの高さを要求してくる。「全開にする気はあるのか?」ってね(笑)

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「エヴォーラ」「エキシージ」と近年のロータスを支えてきた3.5ℓ V型6気筒エンジン。

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足回りは近年のロータスらしくいたって快適だし、コーナー手前でヒール&トゥをかましながらクルマをコントロールする峠の下りに訪れる多幸感は類を見ない。基本に忠実で職人的な繊細さが求められるドライバビリティは、旧車のようでもある。

流麗なスポーツカーデザインを纏いつつ、とことんマナーにうるさい英国車の魂を見せつけるギャップもいい。そういえば都内を走っていると外国人観光客の注目がスゴかった。これってロータスが日本の街を走っているギャップ萌えなのかもね(笑)

これから上陸する2ℓ直列4気筒モデルもギャップ萌えだね(笑)。ロータスにメルセデスAMGの4気筒エンジンが載るんですよ。デュアルクラッチが組み合わされる上にトルクカーブが急激なので、容赦なくバッキバキに走るはず(笑)。たぶん、さらに過激な方向に変わるはずなんだ。

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ダウンフォースとエアロダイナミズムが追求されているリア。

ロータス・エミーラ V6 ファーストエディション

サイズ(全長×全幅×全高):4413×1895×1226㎜
エンジン:V型6気筒スーパーチャージャー
排気量:3456㏄
最高出力:405ps/6800rpm
最大トルク:420Nm/2700-6700rpm
駆動方式:MR(ミドシップ後輪駆動)
車両価格:¥15,730,000
問い合わせ先/ロータスコール
TEL:0120-371-222
www.lotus-cars.jp

※この記事はPen 2023年12月号より再編集した記事です。