「なぜいけると思った?」マネキンに扮した男、閉店後に宝石盗むもあえなくご用

  • 文:青葉やまと
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※画像はイメージです。 RUSSO PHOTOGRAPHY-Shutterstock

ポーランドの首都・ワルシャワに住む22歳の男が、マネキンに扮して宝石や服飾類を盗む事件が発生した。男性はショッピングバッグを持ったまま、店頭のマネキンの隣で動かずに立ち、スタッフが帰るのを待ったという。

ポーランド警察の声明によると、「彼はバッグを手に持ってマネキンになりすまし、店のショーウィンドウにじっと立っていた」「安全だと感じるたびに彼は“狩り”に出て、宝石のショーケースから盗みを働いた」という。

だが、不審なマネキンに気付いた警備員が身柄を確保し、警察に引き渡した。さらには素顔のまま堂々とマネキンとして立つ様子が監視カメラに捉えられていた。

なぜ安易な発想が成功すると思ったのか、海外各紙で珍事件として取り上げられている。男はほかのショッピングモールでも犯行に及んでおり、英ガーディアン紙によると、最大で懲役10年に処される可能性があるという。

監視カメラが捉えた2体のマネキン

英TV放送大手のITVなどが、実際の犯行の様子を収めた監視カメラの映像を公開している。動画ではナレーターが、「何かがおかしいのですが、分かりますか?」と視聴者に語りかける。

監視カメラに残されたこの映像は、ショッピングセンターの一角にある服飾店のショーウインドウを映している。ショーウインドウ内には少なくとも、2体のマネキンが確認できる。

1体はウインドウ奥に控えており、Tシャツにジャケット、そしてデニムを纏いポーズを取っている。顔の部分は樹脂製のつるりとしたマネキンがそのままのぞいており、表情や毛髪はない、明らかなマネキンだ。

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リアルすぎるもう1体は…

かたや手前の“マネキン”は、非常にリアルだ。からし色のパーカーに白のボトムスといった出で立ちで、店舗の紙のショッピングバッグを右手に持っている。両腕や肩の角度がどこかぎこちなく、その点ではマネキンらしいともいえる。

だが、ボディが黒一色の奥のマネキンとは異なり、こちらは血色の良い白人の肌の色が忠実に再現されているようだ。短く刈り込んだ頭髪もリアルで、作り物ではあり得ないほどの出来映えとなっている。

この“マネキン”こそが、閉店後の店舗に忍び込んだ犯人だった。営業終了間際の店舗に侵入すると、よりによって最も人目に付くショーウインドウに堂々と立ち、警備をやり過ごそうと考えたようだ。

じっと動かずにいれば大丈夫だと思った

ITVによると男は、店舗が閉店準備に入りシャッターが床近くまで下りていたところ、身を滑り込ませるようにして侵入。マネキンに擬態して「閉店時間までじっと動かずにやり過ごし、宝石と服飾類を盗み出そうとした」という。

しかし、人間がマネキンのふりをしてバレないはずがない。ショッピングモールには閉店後も警備員が巡回し、監視カメラも随所に設置されている。とくにこの店舗は、ショーウインドウの向こう正面の天井にカメラが据えられており、少し下調べすれば気づけたはずだった。

実際のところ、店員や買い物客の目は欺けたというが、事は計画通りには運ばなかった。警備員が不自然な“マネキン”の存在を発見し、その後警察に逮捕されている。通報を受けたワルシャワのシルドミエシチェ警察管区は、男の身柄を確保。店舗通用口から連行した。

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穴だらけの計画、素人ほど自信満々

ニューヨーク・タイムズ紙は、この男が「ダニング=クルーガー効果」に陥っていたと指摘する。これは認知バイアスの一種で、専門知識を持たない人ほど自分の能力を過大評価する傾向を指す。

マネキンのふりとは子どものような発想だが、本人は名案と信じ実行したのだろう。同紙は「マネキンを装った男の武勇伝が、犯罪者が発覚を逃れるための創造的な戦略のリストに加わった」と皮肉る。

ガーディアン紙によるとマネキンの男は、窃盗罪で起訴された。男は別のショッピングセンターでも、バーで思いのまま飲食したうえに高級服飾店に侵入し、売り物の服と着ている服を交換していたことが発覚している。

男は今後3カ月拘留され、有罪になれば最大で懲役10年の懲役刑に処させる可能性があるという。警察は「男の運はついに尽きた」との声明を発表した。

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店頭ディスプレイのマネキンだが、なにかがおかしい……。