ガチガチに固いカシミヤ!? 訳わからない「リジッドカシミヤ」ニットを思わず即決購入

  • 写真・文:一史
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無駄金を使わないこと、コスパを見極めることに人生を掛けているわたしが、シンプルなニット1着にポンッと6万円近く出すのはよほどのことです。
着た姿を見た人はこの価格と思わないでしょう。
手に触れたとしても、高級なカシミヤ100%だなんて気づくはずもなく。
「ファッションは自分のため〜。短いスカート穿くのもただ好きなだけだから〜」なんて女子発言には疑いの目しか向けない人間ではありますが、この服に関しては明らかに自己満足率高しです。
その自己満足、もとい自己充足を得るために、ワードローブに加える意義があると信じて購入したカーディガンを今回ご紹介します。

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普通に写真撮りするとフツーのカーディガン……。実物を見ると確かな貫禄を感じるものの。

アパレル界隈の人なら誰もが名を知る、山形県に工場を構えるニット専業の米富繊維
委託製造に甘んじずオリジナル発信に力を入れる彼らの実験的な試みのひとつがこの「リジッドカシミヤ」。
カシミヤなのにコシが強くタフ。
デニム風の名称の通り最初は固く、洗ううち柔らかくなっていくのがこのニットシリーズ。
ニット製品は洗いとリンス加工で柔らかくしてから出荷するのが通常の製造工程ですが、それにも反して水通ししてません。
糸を編む潤滑油の匂いまで残ってる。

カシミヤ山羊の産毛からつくった糸を強く捻って(強撚)、さらにギュウギュウに目を詰まらせて編む(度詰め)手法で実現させた、ハリのあるカシミヤニット。

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よほどニットが好きな人、詳しい人なら「ん、なんだ?」と思う表面のムラ感。前立てとのつなぎ目のビンテージ感も何気に素敵。

ここでどなたも頭に浮かぶ疑問があるでしょう。
「軽く柔らかで暖かいのがカシミヤのよさならば、固い質感にする意味は?固くするのが目的なら低価格なウールでつくれば安くできるのでは?」と。
その答えになるかわかりませんが、わたしが購入した理由は以下の通りです。

1. スウエットシャツ気分で気楽に着られるカシミヤ。
2. 糸が細いのにハリ感がある不思議なシルエット。
3. 水洗いで縮みにくいとされるカシミヤの特性を活かした家庭洗濯仕様。
4. 寒い日に屋外で着ても風を通しにくそう。(予想)
5. カシミヤなら、きっと暖かいはず!(期待)
6. ビンテージセーターのようなムラ感で、無染色の色も美しい。
7. ビッグすぎない適度なゆとりで、流行と無関係に長く着られる。

要するに、「これは毎日着る!」が購入の決め手です。
家のなかでも着たい。
フリースジャケットをこれに置き換えて日常を過ごせるから。

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ボタンを外すと内側にロール。着ると身体に自然にフィット。ポケットがないので「前が開くセーター」扱いで着ます。
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ブランド名は「Yonetomi」。毛玉が出にくいのもこの服のよさのひとつだそう。

暖かさについては、一冬試してみないと不明です。
糸を強撚したことで、空気を含み体温を保つカシミヤの特性が損なわれたかもしれませんし。
度詰めがすごいから、並のニットより遥かに暖かいと予想されるものの。

なお“固い”といっても、滑らかなヌメリと柔軟性はしっかりあります。
それがカシミヤを使った意味のひとつ。
羊毛でもイタリアのロロ・ピアーナ社が独占で買い付ける世界コンテスト優勝品のように驚くほど細く繊細なものも存在しますが、普及品で同じつくりをしたらそれこそ固い布になってしまうでしょう。

リジッドカシミヤは洗うたびに柔らかくなり、カシミヤ本来の風合いに近づいていくそうです。
ただわたしはタフな固めを維持して気軽に着続けたくて。
着用経験のある米富繊維の方に伺ったら、さらりと押し洗いして平置き(バスタオルを敷いた上に置くなど)で乾かせばさほど柔らかくならないそう。
柔軟剤を使うのはタブーですね、固さを保つなら。
スタッフさんのなかには、肩のゴロつきだけを取り除きたくて、着たまま寝て馴染ませてた人もいました。
ツワモノですね!

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ポップアップショップに並んだリジッドカシミヤシリーズ。クルーネックセーターとカーディガンがあり、カーディガンは2023年秋冬より展開。

カーディガンを購入したのは、9月に東京で開催された米富繊維のポップアップショップにて。
メディア掲載するほどここの服が好きで、ショップに来ていた山形の本社の方々の実体験を交えての商品説明も素晴らしかったこともあり、購入の決意へとつながりました。
モノを買う行為ってその会社の利益のサポートでもあります。
「信頼できる。服愛がある」と感じた人たちの会社やブランドの品にお金使うのが正しいと思うのです。

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ふだんは本社勤務のPR担当女性に着ていただいた姿。独特のハリ感がおわかりでしょうか?ジェンダーレスでサイズレンジが豊富。

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米富繊維のブランド、コーヘンのノルディックセーター。ファンシーヤーンを編み込んだ立体感とグラフィックが最高!大手セレクトショップでよく取り扱われてる人気アイテム。メンズもあります。

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東京・代々木上原の貸会場で行われたポップアップショップ。

米富繊維はシーズン毎に自社ブランドのポップアップショップを開催してます。
ラインナップを一望できる絶好のチャンス。
日本ニットの精密なつくりとファッション性の高さは知ってソンなしです。
東京以外の県での出店状況は不明ですが、次に開催されるときはぜひ皆さんもお見逃しなく。
公式ECサイトでも買えるものの、なるべくモノに触れてスタッフさんの説明を聞き、真摯なモノづくりに共感して入手するのがベストだと思います。

All photos&text©KAZUSHI

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www.pen-online.jp/columnist/kazushi-takahashi/

KAZUSHI instagram
www.instagram.com/kazushikazu

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【画像】ガチガチに固いカシミヤ!? 訳わからない「リジッドカシミヤ」ニットを思わず即決購入 

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普通に写真撮りするとフツーのカーディガン……。実物を見ると確かな貫禄を感じるものの。

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よほどニットが好きな人、詳しい人なら「ん、なんだ?」と思う表面のムラ感。前立てとのつなぎ目のビンテージ感も何気に素敵。

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ボタンを外すと内側にロール。着ると身体に自然にフィット。

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ブランド名は「Yonetomi」。毛玉が出にくいのもこの服のよさのひとつだそう。

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ポップアップショップに並んだリジッドカシミヤシリーズ。クルーネックセーターとカーディガンがあり、カーディガンは2023年秋冬より展開。

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ふだんは本社勤務のPR担当女性に着ていただいた姿。独特のハリ感がおわかりでしょうか?ジェンダーレスでサイズレンジが豊富。

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米富繊維のブランド、コーヘンのノルディックセーター。ファンシーヤーンを編み込んだ立体感とグラフィックが最高!大手セレクトショップでよく取り扱われてる人気アイテム。

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東京・代々木上原の貸会場で行われたポップアップショップ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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