ラスベガスの新名所「Sphere(スフィア)」が9月29日、U2のライブイベント「U2:UV Achtung Baby Live」でこけら落としを迎えた。
大観衆に囲まれたU2は、1991年のアルバム『アクトン・ベイビー』を軸にしたセットリストを展開。広大な球体ホールの初舞台で、名曲「Where The Streets Have No Name」など数々のナンバーを披露した。
最先端の設備が揃うスフィアで、観客たちは圧倒的な音楽体験を楽しんだようだ。米CNNは、スフィアでのコンサート体験は視覚的にも圧倒的だと報じている。世界最大級の高解像度LEDスクリーンとクリアな音響により、観客は真の没入感を味わえるという。
ソルトレイクシティから妻と共に訪れた男性は、CNNに対し、「圧倒的なビジュアル体験だった……頭が混乱するほどだった」と語った。
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最高のビジュアルに、最高のオーディオ
スフィア内部の巨大な球形スクリーンは、アーティストを最大高さ80フィート(約24m)のサイズで映し出す。また、会場全体に埋め込まれた無数のスピーカーは綿密に設計されており、アーティストの言葉をクリアに聞き取ることが可能だ。
スクリーンは状況にあわせて、さまざまに変化する。開演前に抽象的な文様を映し出し会場上空を包み込んでいた球体スクリーンは、ときにコンクリートの天蓋のように変化し、ライブの進行にあわせてゆっくりと開いては外の光景を映し出す。映像上の演出ではあるが、あたかも天蓋が実際に動いているかのような感覚をもたらしている。
その後もネバダ州の砂漠に悠然とたなびく狼煙など、曲にあわせたイメージを展開。CNNは「数分間はまるで外にいるかのよう」な錯覚を覚えるほどだったとしている。
豪華なスクリーンならではの課題とは?
一方、問題点も指摘された。スフィアの問題点は、ライブの本質である音楽が、スクリーン上のビジュアル面の演出によって埋もれてしまうことだ。米テックメディアのワイアードは「ミュージシャンではなく、映像に目が釘付けになってしまう」と指摘している。
さらに、ニューヨーク・タイムズ紙が述べているように、会場があまりに巨大であるため、没入感が失われる瞬間もあるようだ。
これまでのライブ体験とはまったく違う感覚に、訪れた観客も戸惑いを隠せないようだ。今後会場に慣れた再訪者が増えることで、こうした問題も目立たなくなってゆくのかもしれない。
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総工費340億円の新イベントホール
Sphereはラスベガスのメインストリート「ストリップ」付近に位置する巨大な複合娯楽施設だ。開発元のMSG Venturesによると、2.3億ドル(約340億円)を投じて建設された。
外形は高さ366フィート(約112m)、直径516フィート(約157m)と桁外れのサイズを誇り、世界最大の球状構造物となっている。
未来型エンターテイメント施設としての活用が見込まれ、外部は球形LEDスクリーンとして娯楽コンテンツや広告を配信する一方、その内部はシアターとして活用される。
広大なシアターは16K解像度のスクリーンが天頂まで伸び、水平方向は170度にわたって広がる。ディスプレイの背後には16万8000個のスピーカーが設置され、包み込むような音響を提供する。
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総延長1600kmのケーブルが支える映像美
高規格のビジュアルとオーディオを制御するため、大量の光ファイバーケーブルが敷設された。ワイアードは、「言うなればスフィアは、膨大なデジタル情報をストリームする超高帯域幅の伝導装置であり、独自のサーバー群と約1000マイル(約1600km)の光ファイバーケーブルを備えている」と解説している。
なお、U2のライブチケットは400〜500ドル(5万9000〜7万4000円)と高額だが、ほぼ完売だったという。気軽に出せる額ではないが、ラスベガスのカジノで失ってしまうよりは、よほど有意義な体験になりそうだ。
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