「大人の名品図鑑」英国靴 #6
靴はファッションの“要”とよく言われるが、ここ十数年続いたスニーカーブームも落ち着きを見せ、次に履く靴を探している人も多いはず。時代のムード考えると、何年も流行に関係なく履ける本格的な革靴を手に入れたいと考えている人もいるだろう。そんな革靴の代表として、英国で生まれ、今も英国で製作され続ける名靴を取り上げる。
今回の「大人の名品図鑑 英国靴編」では、世界的に有名な靴の産地であるノーサンプトンで生まれた靴に注目し、紹介してきたが、日本でも早くからノーサンプトンで革靴を生産してきたブランドがある。ロイドフットウェアだ。現在は銀座以外に大阪の南船場にも店を構えているが、どちらの店も「これぞ英国」という佇まいをもち、扱っている本格派の革靴はすべてノーサンプトン製とその姿勢は徹底している。
ロイドフットウェア 銀座があるのは、ランドマークの銀座4丁目の交差点から歩いて数分の場所だ。ロイドフットウェアがここに店を構えたのは1991年。実はその前身となる有名なショップがある。歴史的な建造物として知られた代官山の同潤会アパート1階にジャンクシティを開いたのが72年。その隣にロイドクロージングをオープンさせたのが77年。両店とも前オーナーである豊田茂雄さんが英国で集めたアンティークや洋服などを集めた店で、英国好き、ファッション好きが集まる有名店だった。
豊田氏は英国に何度も行くうちに「英国で良質な靴をつくるのならばノーサンプトン」と耳にし、ノーサンプトンにロイドクロージング用の革靴を注文したが、一度にたくさんの量の靴をつくりすぎたので、83年に青山の骨董通りの奥に靴専門店のロイドフットウェアを開いた。これらの店は都市開発などの理由で閉店を余儀なくされるが、91年に開いた銀座店は雰囲気もその3店と同じ。商品構成やテイストもほとんど変わっていない。
ロイドフットウェアの革靴の特徴はなにより日本人の足型に合うことだろう。現在銀座店の店長を務める浦上和博さんは「(前オーナーの)豊田が何度もノーサンプトンの工場に通って、木型から素材まで吟味して、試作を重ねて現在のロイドフットウェアの靴が出来上がったのです」と話す。
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「私たちは合わない靴は売りません」
ロイドフットウェア銀座には「私たちは合わない靴は売りません」と書かれた額縁が掲げられている。靴専門店としての矜持が感じられる一言ではないか。浦上さんは「お客様の足を見ればだいたいのサイズはわかります。お客様の足をどこまで把握できるかが大事なんです」と話すが、時間をかけて靴を選んでもらう、これもロイドフットウェア流の靴の売り方だ。
ノーサンプトンで製作されたロイドフットウェアの靴はグッドイヤーウェルト製法が用いられている。履き込んで行くうちに履く人の足型に合わせて底が沈み込んで、さらに履きやすくなる。この店で靴を購入する際にはそうしたことも計算してフィッティングは行われる。短い時間で済むことはほとんどない。しかし本格派の革靴は、ケアして履けば何十年でも愛用できるいわば一生ものだ。だからこそ十分に時間をかけて、自分の足型に合う靴を選ぶことが重要。そんな英国流の靴の選び方を日本にいながらにして堪能できる。それもこの店が靴好きから支持される理由かもしれない。
現在、ロイドフットウェアではいくつかのラインが展開されているが、今回紹介するのは、最上級に位置する「マスターロイド」のパンチキャップオックスフォードだ。この「マスターロイド」はノーサンプトンで「マスター」の称号を持つトップランクの職人によってハンドメイドで製作されたコレクションで、既製靴としては例を見ない最高の材料と技術によって、一足一足丁寧に製作されている。この「Surrey」というモデルは、つま先のブローギングが一文字状で、シューレース周りのU字型の装飾も美しい。職人技が感じられる素晴らしい出来栄えのモデルだが、履き心地も最高。フィッティングしたその瞬間に違いが体感できると聞く。その履き心地をぜひ東京と大阪にある店で、英国流のフィッティングを味わいながら堪能して欲しい。
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ロイドフットウェア 銀座 TEL:03-3561-8047
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