「大人の名品図鑑」英国靴 #3
靴はファッションの“要”とよく言われるが、ここ十数年続いたスニーカーブームも落ち着きを見せ、次に履く靴を探している人も多いはず。時代のムード考えると、何年も流行に関係なく履ける本格的な革靴を手に入れたいと考えている人もいるだろう。そんな革靴の代表として、英国で生まれ、今も英国で製作され続ける名靴を取り上げる。
ノーサンプトンを代表する靴メーカー、クロケット&ジョーンズが創業されたのは1879年。義理の兄弟にあたるジェームス・クロケット氏とチャールズ・ジョーンズ氏によって設立され、2人の名前を合わせたものがブランド名になっている。
クロケット&ジョーンズはいまでこそ多くの人から英国の靴ブランドとして認知されているが、かつてはOEMメーカーとしてたくさんのブランドやショップの高級靴を製造してきた歴史がある。ジョンロブ・パリ、ジョージ・クレバリーなどの名だたる高級ブランドの既製靴や、ブルックス ブラザーズ、ポール・スチュアートなどのアメリカの専門店や著名ブランドの靴も製造していたと聞く。それは靴メーカーとしてクオリティの高さと高い生産性が多くのファッション関係者に知られていたことの証明でもあるが、そんなクロケット&ジョーンズが90年代に入ると積極的なブランド戦略に打って出る。
1997年、高級靴のショップが立ち並ぶロンドンのジャーミンストリートに直営店を出店し、ロンドンではシティやバーリントンアーケードと次々に店をオープンし、翌年にはフランス・パリにも進出、直営店を開いた。そして2017年には英国王室御用達の称号を受け、名実ともに英国を代表する靴メーカーの地位を確立した。
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タッセルローファーの名品「キャベンディッシュ3」
現在、クロケット&ジョーンズの経営を担っているのは4代目のジョナサン・ジョーンズ。彼が掲げているのが「これまでの伝統的な靴製造の基本は変えずに、新たなる機械によるスピードと精度を向上させる」こと。さらに「10年以上履いていても趣味が良いと言われ続ける靴をつくる」と彼が語っている。生産量はノーサンプトンの靴メーカーの中でもトップクラスの規模を誇る。
クロケット&ジョーンズの1足の靴をつくるのに要する工程は200を超え、約8週間をかけて靴を仕立てる。革の品質や傷などを見極めるために、革の裁断は柔らかい光が入る工場3階の北向きの窓際と決まっていて、革に蒸気を当てて木型に馴染ませる専門の部屋がある。クオリティを追求するその姿勢は徹底していて、なおかつ変わらない。そればかりか、クロケット&ジョーンズは世界でもっともラスト=木型を所有する靴メーカーとしても知られており、最近ではアジア圏向けの木型の開発までしている。これらが世界中からクロケット&ジョーンズが支持される大きな理由に違いない。
多彩なコレクションを持つクロケット&ジョーンズだが、今回選んだのはタッセルローファーの名品「キャベンディッシュ3」だ。そもそもタッセルローファーが生まれるきっかけとなったのは20〜60年代まで活躍したハリウッド俳優のポール・ルーカスという人物。彼が英国で手に入れた「タッセル=房飾り」が付いた革靴を「よりシンプルにデザインして」とアメリカの靴メーカーに注文して出来上がった靴が、タッセルローファーの始まりと言われている。
いまや多くの靴メーカーがタッセルスリッポンを製作しているが、「キャベンディッシュ3」はシャープなシルエットを備えた英国的なデザインが特徴だ。スーツやジャケットなどのドレススタイルはもちろんのこと、デニムなどのカジュアルスタイルにもマッチする。加えて「キャベンディッシュ3」は従来のモデルより甲回りから踵を小ぶりに改良したバージョンアップモデルで、ソールも柔軟性を追求した「SUPERFLEX leather sole」を採用、屈曲性と耐久性が向上している。今回紹介するモデルはアッパーの素材にきめ細かい茶のスエードが使われ、品格さえ備えている。流行に左右されず長く履き続けることができる、英国製のタッセルローファーだ。
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トレーディングポスト 青山本店 TEL:03-5474-8725
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