世界的な物価上昇…フランスのスーパーが、“ステルス値上げ”該当商品に警告ステッカーを表示

  • 文:山川真智子

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Hispanolistic-istock ※画像はイメージです

商品の内容量を減らし、価格は据え置く「ステルス値上げ」が、日本以外でも広がっている。物価上昇が続くフランスでは、大手スーパーがステルス値上げされた商品の棚に警告用のステッカーを貼るという大胆な対応を開始。消費者に事実を知らせ、メーカーの価格付けを見直させるのが目的だという。

海外でもこっそり進行中 フランスのスーパーが対抗策実施

ステルス値上げされた商品に「この商品は数量または重量が減少し、サプライヤーによる実質価格が上昇しました」の表示を始めたのは、フランス第2の大手スーパー、カルフールだ。海外では、ステルス値上げはシュリンク(縮む)とインフレーションを合わせた造語、シュリンクフレーションと呼ばれ、多くの国で行われている。

CNNによれば、カルフールのボンパールCEOは、原材料価格が落ち着いてきたのに、多くの消費財メーカーが値下げに協力していないと繰り返し述べてきた。「カルフールが警告表示で商品に汚名を着せる目的は、メーカーに価格決定方針を見直すよう指示できるようにすることだ」と説明している。

大手ブランドが標的に…ステルス値上げを見える化

カルフールは、大手食品メーカーが製造する26製品をステルス値上げに該当すると判断した。ペプシコ社の無糖ピーチ味のリプトン・アイスティーは、1.5リットルから1.25リットルに変更され、1リットル当たりの実質価格は40%上昇している。ネスレの粉ミルク「ギゴス」は900グラムから830グラムへ、ユニリーバのアイスクリーム「ヴィエネッタ」は350グラムから320グラムに減っていた。

BBCリールは、通常消費者は量ではなく値段を見るとし、「見慣れた価格と比べて安いか高いか」で購入を決めると指摘。以前と同じ商品価格でも量を見ることで、値上げかどうかを判断してほしいとアドバイスしている。

『シュリンクフレーション』の警告はフランスのカルフール全店舗で行われ、対象のサプライヤーが値下げに同意するまで続くとCEOは述べている。CNNは、大手ブランドとの年間価格交渉のため、カルフールが消費者の支持を集めようとしていると見ている。

PB商品に同じ手法? 偽善と批判される可能性も

カルフールの大胆なやり方について、イギリスの小売専門家は、イギリスのスーパーがこれに追随する可能性は低いと指摘。スーパー側も自社ブランド商品に安価な材料を使用したり分量を少なくしたりして同様の対応をしているとBBCに説明している。結局ステルス値上げだとメーカーを非難すればブーメランとなり、結果的に偽善的と批判されたり、メーカーとの関係を悪化させたりすることになると述べた。

小売業界誌、リテール・ディテールによれば、フランス政府は誤解を招きやすいステルス値上げを新法で規制したいとしている。ドイツ政府も同様の考えで、今後の対応が注目される。

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ステルス値上げ認定された商品。

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フランスのスーパーの店内の様子。

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アメリカのティッシュも枚数減少。フランス以外でも頻繁に見られる。

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イタリアのパスタも減量されている。