【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第182回“まるで巨大なシューティングブレークのよう !? 「アズール・ジャイアント」と呼びたい旗艦モデル”

  • 写真&文:青木雄介
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アズール専用22インチ10スポークホイールは、3種類の仕上げから選ぶことができる。

ベントレーのSUV「ベンテイガ」の全長を伸ばした新型「EWB(エクステンデッド・ホイール・ベース)」がデリバリーを開始した。生産が終了したサルーン「ミュルザンヌ」の需要を取り込み、販売するベンテイガの約20%はEWBにしようという計画だそう。

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ファーストエディション専用のインテリア。

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実際に現車を目にしてみると「なるほど」と頷かされるのね。これは売れる。全長が伸びただけではなく、そもそも全高があるからバランスがとれ、巨大なシューティングブレークのよう(笑)。これ、めちゃくちゃカッコいいじゃないですか。

ハンドルを握ると、その予感は確信へと変わるのね。発売から8年、「熟成」という言葉ではもの足りない、生まれ変わったようなベンテイガの進化に度肝を抜かれるんだ。その間、ベントレーのライバルとなる「超」のつく高級メーカーが鳴り物入りで、きらきらしたオーラを纏ったSUVをデビューさせてきたわけです。そんなライバルの新人推し(笑)を横目で見ながら、日夜アップデートを重ねていたんだね……(涙)

足まわりの硬さや上屋(うわや)の重々しさは刷新されて、クラシカルかつ上品なSUVとしてアイデンティティを確立している。エンジンの出力音やロードノイズを一定の帯域で反発させ、水ももらさぬ車内の静けさと上品さを実現。品という名のスムーズさが車内全体に波紋のように広がっている。

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後部座席には世界初「オートクライメートシステム」と姿勢制御機能をオプションで用意。

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運転すると長大なサイズさえ、まるで感じさせない。後輪操舵の素晴らしさもあってロングホイールベースに特有の後ろをひきずっている感覚がまるでない。ハンドリングの正確さには舌を巻くし、峠のワインディングだってさらりとこなせる。

足まわりだってエアサスでのゆらし方にこだわる高級SUVがトレンドだけど、ベンテイガEWBはそれと気づかせずロールを抑え、スマートに乗員の快適性を守る。ドライバーズカーでありながら身についたマナーが走りに思わず出るようなこの所作は、アンダーステイトメント(控えめ)を身上とするベントレーらしさに他ならない。

走りはセダンのフライングスパーを手本にしていると感じられる。ヘッドライトがスワロフスキーで彩られた現在のラインアップは、車種を超えた「ベントレーらしさ」が共通言語として与えられている。サッカー用語でいえば「目が揃う」感じ。音楽的に言えばブルーノートやモータウン全盛の頃のレーベルとタイトルの関係にも似ているなぁと思ったんだ。

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ホイールベースは180mm延長。 

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ベントレーは不変の価値観として「クラシック」であることを大事にしている。ベンテイガに「ミュルザンヌと同じオーラがあるか」と尋ねられれば「否」だけど、これからの時代を創るカギはベンテイガにある。

ミュルザンヌはブルーノートのレコーディングエンジニア、ルディ・ヴァン・ゲルダーによる名盤のリマスタリングに近くて、ベンテイガはいまをときめくロバート・グラスパーといったところ。クールでソウルフルかつスタイリッシュ。そこに前衛とクラシックの薫りを乗せた現代の巨人ですよ。そうね。「アズール(ブルー)・ジャイアント」って感じがしっくりくるんだ。

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ベントレー ダイナミック ライドは、コーナリング中にキャビンを安定させ、全輪操舵により従来のベンテイガに匹敵する旋回性能をもつ。

ベントレー・ベンテイガ EWB アズール

サイズ(全長×全幅×全高):5305×1995×1755㎜
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3996cc
最高出力:550ps/5750~6000rpm
最大トルク:770Nm/2000~4500rpm
駆動方式:AWD(フロントエンジン4輪駆動)
車両価格:¥31,625,000
問い合わせ先/ベントレーコール
TEL:0120-97-7797
www.bentleymotors.jp

※この記事はPen 2023年10月号より再編集した記事です。