注目のドイツ自動車ショーでは、「デザインを強化」したフォルクスワーゲンのID.GTIコンセプトに注目!

  • 文、写真:小川フミオ

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ドイツ・ミュンヘンで、2023年9月初旬に国際自動車ショー「IAAモビリティ」が開催。ひとことで特徴をいうと、ドイツの自動車メーカーが、少し先の未来をいろいろ見せてくれた。

フォルクスワーゲン・グループは、ひときわ気を吐いていた印象だ。目玉は、電気自動車時代のゴルフGTIというべき「ID.GTIコンセプト」。

 

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フロントモーターになるID.GTIコンセプトの目に掲げられた「好感度(Likeable)」は「安定感(Stable)」と「感動(Exciting)」というデザイン3本柱のひとつ。

 

「俊敏な運動性能と、遠乗りにも使える快適を併せ持つことが、従来のゴルフGTIのDNAだと認識しているので、電気化したあかつきには、まったく同じとは言えませんが、同じような感覚を実現したいと考えています」

そう語るのは、フォルクスワーゲン(VW)で開発を統括する取締役会のカイ・グリューニッツ氏。

ゴルフGTIは、1976年に発表され、ホットハッチ(高性能ハッチバック)なるジャンルを確立した、歴史に残るモデルだ。VWではことのほか、GTIのヘリティッジを大切にしてきた。

ID.GTIコンセプトのみどころは、もうひとつ、デザインだ。オリジナルGTIのイメージを随所に盛り込んでいる。たとえばリアクォーターパネル。

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ぱっと見で好かれることがVW車の要件と説明するミント氏。

 

「オリジナルのGTIを手がけたジョルジェット・ジュジャーロの特徴的なデザインで、後ろにほうでややテーパーがかけられ力強さが感じられます。あのリアクォーターピラーこそ、コンパクトな車体でありながら、安定感を感じられる重要な要素です」

2023年1月に就任早々、このID.GTIコンセプトを手がけたというVWブランドのヘッド・オブ・デザイン(デザイン統括)をつとめるアンドレアス・ミント氏は説明してくれた。

 

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ID.GTIコンセプトのインテリアは未完成で、レンダリングのみ発表されている。(画像=Volkswagen)

 

デザインにこだわるのは、ID.GTIコンセプトにとどまらない。VWグループはこのショーで、「デザインによる成功」なるテーマを打ち出した。

「グッドデザインは顧客に喜んでもらうためもっとも基本的なファクター。(VWグループの)ブランドを明確に差別化して、存在感を明確にするためにも必要。VWグループはデザインを主軸に据えた会社になります」

VW、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレー、シュコダ、セアト、クプラ、それに二輪のドゥカティを傘下に持つVWグループのオリバー・ブルーメCEOは、IAAモビリティ前夜にジャーナリストを集めてのプレゼンの席上で語った。

 

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VWグループはデザイン中心の会社になる、とするVWグループのブルーメCEO。

 

このプレゼンの場では、ID.GTIコンセプトに加え、スペイン・バルセロナで興した新ブランド、クプラによる「ダークレブル Dark Rebel」という大胆な造型の2座シューティングブレーク・コンセプトがお披露目された。

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2座のシューティングブレークがデザインコンセプトというクプラのダークレブル。

「電気自動車は退屈なデザインでいい、なんて思っていません。私たちのCEO(ウェイン・グリフィス)はつねに、デザイナーに、自分を驚かせてくれ、って言います。いままで誰もいったことのないレベルまでデザインをもっていくのが、クプラの目標です」

クプラのヘッド・オブ・デザインであるホルヘ・ディエス氏の言葉だ。ダークレブルがおもしろいのは、27万におよぶクプラ・トライブの構成員の意見をもとに組み立てていったという事実。

 

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パルセロナで2018年にVWグループ内のブランドとして独立したクプラのグリフィスCEO。

 

新しいデザインの可能性ではないか。デザインで顧客とブランドをつなぐというVWグループの方向性のひとつとみることができる。

ドイツ自動車ショーを意味する独語の頭文字からIAAという国際ショーはずっとフランクフルトで開催されていたものの、前回の2021年からミュンヘンのメッセ会場に移った。

23年の特徴は、出展が電気自動車一色だったこと。部品メーカーやスタートアップも、EV化を前提とした技術を展示。欧州は完全にそっち(電気)を向いていることを印象づけられた。

 

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今回のIAAモビリティで公開されたID.7は最大621キロの走行距離とされる。

 

VWは、日本でも「ID.4」で知れられるEVの「ID.シリーズ」にもっとも大きなサイズの「ID.7」を追加発表。全長5メートル近いリフトバック(ハッチゲート付きセダン)で、室内の広さは特筆ものだ。

アウディは、新型にあたるQ6 e-tron(のダッシュボード)を公開。左右幅の長い液晶パネルを使ってインフォテイメントシステムの拡張性を強調。ボディの公開はもうすこし先になるそう。

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湾曲した有機LEDの大型モニターをそなえるアウディQ6e-tron(EV)のダッシュボード。(画像=Audi)

 

BMWはまもなく量産化という「ビジョン・ノイエクラッセ」なる電気化された4ドアセダンをショーで初披露。フロントグリルの部分にメッセージ的なものを映し出すなど、ユニークな技術が採用されている。

 

IMG_6628.jpeg電動化、デジタル化、そして高リサイクル率がこれからのクルマのありかた、とするBMWが手がけたビジョン・ノイエクラッセ。

 

ノイエクラッセ(新しいクラスを創出するクルマ)とは、かつてBMWが1961年に発表したBMW1500で使われたコンセプト。スポーツセダンというジャンルを開拓したモデルであり、のちの3シリーズにつながる。

ミニは、「ミニ・クーパー」と、「ミニ・カントリーマン」の新型を、ショー会場でなく、ミュンヘン市内の特設会場で公開。両モデルともに、電気モーター仕様が設けられていて、一般にお披露目されたのも、それだった。

 

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新型ミニ・クーパーには、ピュアEVのクーパーEと、エンジン車のクーパーCが用意され、2025年モデルとして発売されるという。

 

ミニの2つのモデルでは、ボディデザインの方向性が、明確に分かれたように感じられたのが興味深い点。クーパーは力強いが要素はできるだけシンプルにまとめられていた。

いっぽう、カントリーマンは、これまでで最も大きなボディサイズとなり、ディテールもけっこう盛り盛りで、こちらはいまのSUVのトレンドに合致するようなデザインが採用されている。

 

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新しいミニ・カントリーマンは全長4433ミリ、全高1656ミリ。

 

メルセデス・ベンツは「コンセプトCLA」を、ミュンヘン市内の特設会場に置いた。暗闇のなかの光のショーで、グリルを輝かせたり、ダッシュボードがゲーム機のように光ったりするコンセプトCLAの特徴を強調。

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メルセデス・ベンツのエントリークラスは、このCLAセダンを皮切りに、シューティグブレークと2種類のSUVが登場するとされる。

 

省エネが重要なテーマで、軽量化とシステムの高効率化がめざされている。満充電からの走行距離は750kmにおよぶとされる。いっぽうキラキラしているのは、「若い層へのアピール」とメルセデス・ベンツではしている。

 

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ミュンヘン市内オデオンスプラッツに一時的に開設されたポルシェのオープンスペースの建物は911のキャビンを模すという凝ったデザイン。