「バター100%のはずじゃ…」名物“バター牛”の彫刻がハリボテと判明し、ネット上はがっかりの嵐

  • 文:山川真智子
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アメリカの各州では晩夏から初秋にかけて、ステート・フェアというイベントが行われる。もともとは特産品の展示を通した販促が目的だったが、遊園地の設置やコンサートの開催などもあり、毎年たくさんの来場者で賑わっている。イリノイ州では「バター牛」と謳った、バターつくった巨大な牛の彫刻の展示が恒例だ。しかしソーシャルメディアでこの牛が純粋なバター牛ではないことを示す写真が投稿され、他州や大手メディアを巻き込んだ大騒ぎに発展した。

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100年間気づかなかった…バター牛の実態とは

イリノイ州のバター牛は、1922年からフェアの定番となっている。州によれば、この実物大の牛の彫刻には約230kgのバターが使用され、製作は手彫りで5日を要したということだ。

ところが、フェア閉幕後、バター牛の解体の様子を写した画像がX(旧ツイッター)に投稿されると、それを見たユーザーから驚きの声が上がった。写っていたのは像の表面のバターを削ぎ落す作業。バターの下に、土台のようなものが見え、実はハリボテだったことが分かる。

カンザス州の地元紙、カンザスシティ・スターは、像は純粋にバターのみでできていると多くの人が思っていたとし、この投稿で100年間隠されてきた秘密が明らかになったと述べた。「騙された気分」「バターの塊だったはずなのに、これから何を信じればいいの」「バター牛が塊じゃないと知ったときの失望感は、サンタが実在しないと知ったときの気持ちに似てる…」「宗教を失った気分…」など、大量のがっかりコメントが飛び交った。

バターだけじゃ立つわけない!専門家が解説

イリノイ州の事件は、バター牛をステート・フェアの目玉とする他の州にも飛び火。アイオワ州、オハイオ州のものもハリボテだったという事実がソーシャルメディアで話題になり、「ウォーターゲート」ならぬ「バターゲート」事件と呼ぶ人まで現れた。

この騒ぎに反応し、全国紙のニューヨーク・タイムズ紙(NYT)が記事を出した。それによれば、そもそもバターだけでなく他の乳製品でも、大きな彫刻は内部の骨組みを中心に組み立てられており、これは彫刻の基本原則だという。アイオワ、イリノイ、カンザス州のバター彫刻を担当する彫刻家は、木、金属、針金、スチールメッシュでできた枠を組んでバター牛を製作していると説明。枠なしでバターの塊から製作するのは、乳牛から全部骨を取り出してそれを立たせようとするのに等しいと述べている。

100%バターは思い込みの産物だった? 実際のバター牛は工夫の塊

バター牛は見る人にとっては魅惑的な存在ではあるが、結局のところその中身についてじっくり考える人は少ないだろうとNYTが述べる。今回の騒ぎは、勝手な思い込みが人々をがっかりさせた事件といえそうだ。

ちなみにバター牛彫刻にはかなりの修行と技術が必要とされ、さまざまな工夫の積みかさねで現在のようなリアルな牛が出来上がっているという。バターの多くは展示後再利用されており、アイオワでは18年間同じバターを使っているそうだ。

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問題の投稿。像の表面のバターを削ぎ落す作業をしている。

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 イリノイ州のバター牛。