ささやくような声とブロンドの髪。夜の街を我が物顔で闊歩し、まるで自分が世界の中心かのように振る舞う女性。2000年代初頭にメディアによってつくられたパリス・ヒルトンのイメージは、「自ら問題を起こしにいく、地に足がつかない危うい女性」だった。 だが42歳になった今、パリスは息子に慈しみの視線を向けて微笑む。代理出産で生まれた息子は、現在7カ月。これまでの人生で数々の裏切りに遭い、人間不信であると公言してきた彼女は、やっと心から信頼できる対象を得たかのようだ。
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制御不能なパーティーガール
パリス・ヒルトンは、ヒルトンホテルの創設者でるコンラッド・ヒルトンの曾孫にあたる。母親のキャシー・ヒルトンはアメリカの女優で司会者だ。社会的な地位もあり、躾に厳しい両親に従ってきたパリスだが、10代の頃に引っ越したニューヨークで、夜の街の自由さの虜になった。毎晩外に繰り出していく娘に手を焼いた両親は、矯正を試みて幾度となく厳しいキャンプに参加させたという。それでも反抗的な態度のパリスは、問題行動を起こす青少年を教育するユタ州の寄宿学校プロボ・キャニオン・スクールに入れられることになる。
2020年9月に配信されたYouTubeオリジナルドキュメンタリー『This is Paris』によると、パリスは「夜中にベッドから叩き起こされて（プロボ・キャニオンに）連れて行かれた」そうだ。訳が分からず両親に助けを求めたが、その声は聞き入れられなかったらしい。
プロボ・キャニオン・スクールは、暴力や投薬で学生たちを管理する恐怖政治的な運営をする学校だったと振り返る。時には20時間以上も独房に監禁されたり、身体検査という名の性的虐待を受けたりもしたという。パリスはそこで過ごした悪夢のような11カ月で両親への不信感を募らせ、いつの日か、両親ですら自分の人生を左右できない、自立した成功者になることを夢見たそうだ。
プロボ・キャニオン・スクールを後にしたパリスは、モデルやソーシャリストとして積極的に公の場に姿を現すようになった。この時に受けた心身の傷を誤魔化すかのように派手な生活を送った。そんな彼女がブレイクアウトしたのは2003年。幼馴染で同じくソーシャリストのニコール・リッチーと共にリアリティショー『シンプル・ライフ』に出演したのがきっかけだった。
スポンジやモップの使い方も知らないとうそぶく、浮世離れした金持ちのブロンド。見る者全てが新鮮と言わんばかりに驚いたり失敗したりする姿はお茶の間の人気を呼び、番組は大成功した。放送開始直前に、パリスのセックステープが流出したことで彼女への関心度が高まっていたのもある。
後にパリスは、「番組内での言動や舌足らずな話し方は演技」で、「それなりに楽しんでいた」と明かしている。
だが、“賢くないブロンド”のイメージをつくった代償は大きかったと言える。この頃、筆者はロサンゼルスに住んでいたが、タブロイド誌もテレビ番組もパリス・ヒルトン一色だった。華やかな交友関係やナイトライフを楽しむ様子が誌面を飾り、問題行動の数々を面白おかしく書き立てた。パリスの私生活の写真は高値で取り引きされたため、常にパパラッチが取り巻き、彼女の一挙手一投足が消費されていったのだ。
メディアにとって、当時の彼女はひとりの人格をもった女性ではなく、制御不能な金を産む“きんのガチョウ”だったのかもしれない。
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起業家としての顔と人間不信
時を同じくして、パリスは名声をビジネスに生かし、香水をはじめとするライフスタイルブランドを展開した。また、DJや投資家としての側面も併せ持つようになる。最近では、ゲーミングプラットフォームの「Roblox」に自らの名前をつけたメタバース空間を作ったり、アーティストとしてNFTアートも制作している。
このような活躍の裏に、パリスの孤独と金への強い執着心が伺えるが、『This is Paris』でも「億万長者にならない限り真の幸せには到達できない」と発言している。
しかし、ビジネスは順調である一方で、両親に若かりし頃の反抗を受け入れてもらえなかったり、交際相手から裏切られたりした経験から、強い人間不信に陥っていることも口にしており、常に虚無と闘っている様子も見られた。
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念願の子どもを授かったパリス
そんなパリスは2021年にカーター・リウムと結婚。2023年に代理出産で念願だった子どもを授かった。
フェニックスと名付けられた男児は、愛情をパリスの愛情を一身に受けて育っている。だが、写真から伝わってくるのはフェニックスの無垢な愛らしさだけではない。心から満たされたようなパリスの表情にも注目したい。「人間より動物の方が信じられる」と公言し、ペットを増やし続けていた彼女を知る世代からすると、やっと落ち着ける場所を見つけたようで嬉しくなる。
今後、フェニックスが成長する中で、パリスは自分の若かりし頃の行動を振り返るだろう。『This is Paris』で、彼女は両親に心配をかけたことを謝罪していないと語る。自分もたくさん傷ついたというのが彼女の主張だ。だが、その気持ちも変化するのかもしれない。
パリスのメディアにおけるブランド力は、お騒がせセレブ当時と比較すると下がったと言われているが、同年代の私にとっては今が一番、魅力的に見えるのだ。
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パリス・ヒルトンのInstagram
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