スーパーマリオ、グランツーリスモ…日本のキャラクターが、世界のエンタメ界を席巻

  • 編集&文:佐野慎悟
Share:

気になる未来の姿に迫った、Pen最新号『2033年のテクノロジー』。その中から、さらに加速する、クリエイターエコノミーの記事を、抜粋して紹介する。

Pen最新号は『2033年のテクノロジー』。AIの進化でどう変わる!? モビリティ、建築、アート、ファッション、食&農業、プロダクト、ゲーム、金融と8つのジャンルで2033年の、そしてさらなる未来のテクノロジーを占った。気になる未来の姿に迫る。

『2033年のテクノロジー』
Pen 2023年9月号 ¥880(税込)
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら

---fadeinPager--- 

海外発のゲームを中心に、クリエイターエコノミーが盛り上がる中、
世界のエンタメ業界で、日本の大手ゲームメーカーの躍進が始まっている。
この新たな流れは今後、勢力図をどのように塗り替えていくのだろうか?

これまで欧米が覇権を握り続けてきた世界の映画市場に、新興勢力の波が押し寄せている。その源は、日本のゲーム業界だ。

「世界のゲームファンの数は、映画ファンの数と比べるとケタが違う多さです」と、noteプロデューサーの徳力基彦は語る。

「しかも本業となるゲームの宣伝と捉えれば、潤沢な製作費を投じることもできる。日本には世界中に数えきれないほどのファンをもっているコンテンツが、まだ手付かずのままの状態で豊富に残されています。映画化のコツさえつかんでしまえば、今後ヒット作を連発していけるはずです」

この徳力さんの話を裏付ける象徴的な事例といえるのが、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の世界興行収入13億ドルにも及ぶ記録的なヒットだ。

DMA-A_SMB_JPN_Payoff_ONE_SHEET_01 (2).jpg

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

ユニバーサル・ピクチャーズ

『怪盗グルー』シリーズや『SING』のアニメ製作会社イルミネーションと任天堂が共同で制作した、ゲーム「スーパーマリオ」シリーズを題材とした3DCGアニメ映画。『ティーン・タイタンズGO!トゥ・ザ・ムービー』でタッグを組んだアーロン・ホーヴァスとマイケル・ジェレニックが監督を務め、脚本は『ミニオンズ フィーバー』のマシュー・フォーゲル。イルミネーション作品の累計興行成績の新記録も樹立し、現在も全国の映画館で大ヒット上映中。© 2023 Nintendo and Universal Studios

DMA-B_【Main】SNW_DONKEY_KONG.jpg

スーパー・ニンテンドー・ワールド

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン

2021年にユニバーサル・スタジオ・ジャパン、23年にユニバーサル・スタジオ・ハリウッドにオープンした、任天堂のゲームの世界を題材にしたテーマパーク。「マリオカート 〜クッパの挑戦状〜」などのライドのほかに、パーク内にはインタラクティブに楽しめる仕掛けも豊富。24年には「ドンキーコング」をテーマにした新エリアが日本を皮切りに登場するほか、今後はフロリダやシンガポールへの展開も予定されている。© Nintendo 画像提供:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン

「ソニーも『プレイステーション』のソフト10作以上の映画化を発表しており、ドラマ『THE LAST OF US(ラスト・オブ・アス)』の人気に加え、この秋には話題の映画『グランツーリスモ』も公開予定です。『鬼滅の刃』のアニプレックスもソニーグループなので、アニメ映画のノウハウもあります。任天堂もソニーも、具体的なビジョンをもって戦略的に展開を進めているので、今後の動きは非常に楽しみです」

 

DMA-C_FIX UNCH_sellBD_JK.jpg

アンチャーテッド

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

トレジャーハンターのネイサン・ドレイクが伝説の秘宝や古代都市の謎に挑む人気アクションアドベンチャーゲーム『アンチャーテッド』シリーズを、『スパイダーマン』シリーズのトム・ホランドと、『トランスフォーマー』シリーズのマーク・ウォールバーグの共演で実写映画化。デジタル配信中。ブルーレイ&DVDセット ¥5,280/発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント  © 2022 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

 

DMA-E_LASTOFUS_horizontal_.jpg

THE LAST OF US

HBO

全世界200以上のゲームアワード受賞の傑作を、HBO『チェルノブイリ-CHERNOBYL-』製作スタッフが巨額の製作費をかけてドラマシリーズ化。脚本・製作総指揮はゲームシリーズのクリエイティブ・ディレクターであるニール・ドラックマンが担当し、ゲームの世界観を余すところなく再現した。寄生感染症のパンデミックによってゾンビ化した人間がはびこり、現代文明が崩壊した世界を描く。U-NEXTにて見放題で独占配信中。  © 2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

 

DMA-D_日本版ポスタ_ランツーリス_GT_t easer1sheet_online_02.jpg

グランツーリスモ

ソニー・ピクチャーズ

世界的人気を誇る日本発のドライビングゲーム「グランツーリスモ」から生まれた実話を、ハリウッド映画化したレースアクション。ゲーマーからレーサーを育成するGTアカデミーの設立者ダニーをオーランド・ブルーム、指導役をデヴィッド・ハーバー、主人公ヤンを『ミッドサマー』のアーチー・マデクウィが演じる。監督は『第9地区』のニール・ブロムカンプ。 2023年9月15日(金)から全国の映画館で公開。配給:ソニー・ピクチャーズ

 

ゲーム作品の映画化はこれまでも幾度となく行われてきたが、その成功例は少ない。しかし世の中のマジョリティが幼少期からゲームとともに成長してきた世代となったいま、その前例を比較対象として挙げるのはもはや的はずれといえるだろう。

「マリオの映画がヒットした事例の中で印象的だったのは、作品に対する評価のうち、評論家からの評価よりも、ファンからの評価のほうが圧倒的に高かったこと。海外の人たちの反応を見ても、予告編を観ただけでも大興奮でした。ここで評価すべきは、既存の映画の文脈から見たストーリーの深さよりも、どれだけ人を熱狂させることができたかだと思います」

任天堂は映画に加えて、テーマパークの展開にも力を入れている。ゲーム、映画、テーマパークと、コンテンツに触れるタッチポイントを多角的に設けることで、ファンのエンゲージメントは飛躍的に高められていく。

「さらに言うと、いまでも既に一部の作品で始まっていますが、10年後の映画業界では、視聴者が自分でストーリー展開の方向性を選ぶ、分岐型の作品が増えていると思います。そうやって映画がインタラクティブになればなるほど、さらにゲーム会社が有利になると想像しています」

日本生まれのキャラクターたちは、今後世界のエンタメをどのように変えていくのか。期待は高まるばかりだ。

Pen0728.jpg

『2033年のテクノロジー』
Pen 2023年9月号 ¥880(税込)
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら