予想外の方法で熟睡へ!長い長いインスタの利用規約を聴いて安眠に誘う新サービス

  • 文:青葉やまと
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※画像はイメージです recep-bg-istock

InstagramやTikTokの長くわかりにくい利用規約を逆手に取った、新たなサービスが誕生した。スウェーデンの芸術家集団「レイジー・データ・リサーチ・インスティテュート」が公開したサービス「リーガル・ララバイ(法の子守唄)」だ。

サービス提供元のサイトを訪れると、ブラウザいっぱいにInstagramやTikTokの利用規約全文が表示される。画面には再生ボタンが備えられており、押すと、眠りを誘うようなソフトなボイスで利用規約がゆっくりと読み上げられてゆく。音声はプロの男性の声優を起用し、サービス専用に録音した。

全文でおよそ4万字におよぶこのInstagram版のほか、2万8000字のTikTok版が用意されている。全文を聴くと、合計で1時間半ほどの長さになる。難解な法律用語を聴きながら眠りに落ちるには、きっと十分な長さだ。

長い規約に一石投じる

開発元の芸術家集団は別名をTLDR(Too Long; Didn't Read)と名乗っており、これは「長くて誰も読まない」「要約するならば……」という意味合いを持つ。今回のプロジェクトには、長すぎる利用規約を皮肉る意図があるようだ。

発起人のひとりであるアイザック・レンホルム氏は、米メディアのヴァイスに対し、「どの利用規約も、ある程度理解できると同時にまったく理解できないという絶妙なバランスを保っています」と指摘している。「時折、風の時に見る夢から抜け出せないような感覚に陥ります」

改めて読むと恐ろしい

海外ニュースサイトのペタピクセルは、各種規約の問題点を指摘している。

たとえばInstagramのユーザーは、アップロードしたコンテンツの所有権を保持することが認められているものの、写真や動画の「使用、配布、変更、実行、コピー、公に実行または表示、翻訳、派生物を作成」することをInstagramに対して許可し、Instagramはこの権利を第三者に譲渡することができる。

すなわち、ひとたびInstagramが第三者に対して許可すれば、結果として自分の写真が第三者によって改変・再配布されたとしても、ユーザーとして異を唱えることができない内容だ。

TikTokの利用規約にも注意すべき内容があり、ユーザーの位置情報や閲覧履歴を収集するほか、顔画像や声紋などの生体情報を分析することに同意する内容となっている。

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ユーザーの9%しか読んでいない

長い利用規約を通読することは、時として現実的ではない。ほとんどのユーザーは内容を確認せずに同意の意思表示をしてしまっているようだ。

米シンクタンクのピュー・リサーチ・センターは2019年、プライバシー規約をきちんと読んでから同意しているかについて、アメリカの消費者を対象にアンケート調査を実施した。

結果、「常に」確認すると答えた人々は、全体の9%に留まった。「頻繁に」と回答した人々を含めても、計22%に留まる。全体の74%は、利用規約を「時々読む」あるいは「まったく読まない」と回答している。

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米教授が仕掛け、学生たちが見事はまった実験

2016年にカナダ・トロントのヨーク大学で行われた社会実験では、規約への警戒感の薄さが一段と浮き彫りになった。米大手日刊紙のUSAトゥデイがその内容を取り上げている。

実験では大学教授2名が、NameDropという架空のソーシャルメディアをつくり上げ、学生たちに参加を求めた。実はこの規約には、内容を確認したかを試す罠が仕込まれていた。

規約に同意することで、学生自身のもとに将来生まれてくる子どもたちをNameDrop社に譲渡する、常識では考えられない契約となっていた。ところが、ほとんどの学生は特に異を唱えずに同意したという。もちろん注意喚起を目的とした実験であり、実際には子どもの譲渡は行われていない。

熟読した女性が報奨金を勝ち取る

保険会社自ら、ほとんどの顧客が規約を読んでいないことを実証した例もある。ワシントン・ポスト紙は2019年、米ジョージア州に住む59歳女性の例を報じている。

大学時代に消費経済学を専攻したという彼女は、友人たちとの旅行に向けて旅行保険に加入した際、不利な条件がないかを確認しようと保険約款を通読したという。すると約款の奥底に、「この細則を最初に発見した者に報奨金1万ドル(現在のレートで約140万円)を贈呈する」との記載が含まれていた。

女性は保険会社に連絡を取り、見事1万ドルを手にした。保険会社は同じ約款をすでに73人の契約者に発送していたが、賞金の件で連絡を取ってきたのは彼女が初めてだったという。この保険会社によると、保険約款を細部まで通読する契約者は、全体の1%に満たない。

読めないほど長い規約に問題提起

各種サービス規約は長大化し、通読することが困難になってきている。暮らしを便利にするためにサービスを利用したいのに、利用の前に難解な法律用語とにらめっこを強いられる事態は、消費者としても本望でない。

今回、スウェーデンの芸術家集団が公開したリーガル・ララバイには、こんな現状を皮肉交じりに指摘し、問題を提起する狙いがあるようだ。

なお、リーガル・ララバイ自体にも利用規約は存在する。Instagramよりは短いものの、その全文は4650文字と、こちらもまずまずの長さだ。

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全文でおよそ4万字におよぶInstagram版

 

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2万8000字のTikTok版