現在、さまざまな分野で活躍するドローン。火災の消火活動支援にも利用されているが、火災そのものから安全な距離を保たなければ使用できないという問題点がある。そこで、スイスとイギリスの研究者たちが、危険な高温部に近づける耐熱ドローンを開発。火災の被害拡大防止や人命救助に、威力を発揮すると期待されている。
消防士の命も守る!ドローンの課題に挑戦
スイスのオンライン・ニュースサイト、スイスインフォによれば、消火活動を支援するドローンは、すでに実戦投入されている。空撮したり、消火ホースをビルに持ち上げたり、森林火災に消火剤を投下したりしているが、高温による損傷を避けるため、火災から安全な場所でしか利用できないという。
そこで、スイス連邦材料科学技術研究所(Empa)とインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者たちが、危険なホットスポットから重要な初期情報を提供することができる、耐熱ドローン「ファイヤー・ドローン」を開発した。
ファイヤー・ドローンの開発者たちは、危険区域に入るまで、消防士にはどんな試練が待っているのか分からないと指摘。炎上するビルに到着しても、中に誰か残っているのか、建物の配置はどうなっているのか、またどのエリアがまだ安全なのか、といった情報はなく、やみくもに突入すれば命を失いかねないと述べる。高温に耐えるファイヤー・ドローンなら、先回りして、こういった情報を収集することができるという。
内部温度維持に3つのアプローチ 自然界からインスピレーション
科学系ニュースサイト、アドバンスト・サイエンス・ニュースによれば、研究チームは、極限状態でも機能する内部温度を維持する方法のヒントを、自然界に求めたという。温度調節には、3つのアプローチを組み合わせた。
まず、アワフキムシという昆虫が発泡層を作って外気から身を守るように、エアロゲルタイルの層でドローン内部を保護した。エアロゲルは優れた断熱性を持つ軽量素材で、熱を伝えにくくし外部の熱(または寒さ)からデリケートな部品を保護する。ガラス繊維でこの素材を補強することで、過酷な条件下での飛行に理想的な、丈夫で軽い断熱材になったという。
次に、ドローンに熱を反射する薄いアルミコーティングを施した。これは、ペンギンの黒い羽が熱を吸収するのと逆の仕組みだという。さらに、部品として配置したCO2センサーからのガスの放出と蒸発を利用して、冷却システムを構築した。これは、人体の汗の蒸発による冷却効果を模倣している。
低温にも耐えられる可能性 ドローンの未来を切り開くか?
ファイヤー・ドローンを温度制御された空間で飛行させた後、消防士の訓練施設で炎にさらしたところ、最高200℃の温度に10分間耐えられたという実験結果が出ている。さらに、高温とは逆の過酷な低温の環境下でも、このドローンが遭難者救助などのために活動できる可能性も確認したという。
現在はまだ試作品の段階だが、将来的には山火事、都市の緊急事態、極寒の地での冒険といった状況下での使用を、研究チームは目指している。環境要因を克服することが、未来のドローン・パワーの開花につながると確信しているそうだ。
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高温にも耐えるファイヤー・ドローン。
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Researchers from #Empa and @imperialcollege develop heat-resistant drone that analyzes source of danger at close range. High-risk operations become more calculable to firefighters before entering the danger zone.
— Empa (@Empa_CH) June 26, 2023
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Empaによるファイヤー・ドローンのツイート。
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