キャサリン妃だけ“儀式ローブ”を着なかったのはなぜ? スコットランド戴冠式が話題に

  • 文:宮田華子

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@celebitchy – Twitterのキャプチャ画像

去る7月5日、チャールズ国王のスコットランド戴冠式がエディンバラのセント・ジャイルズ大聖堂で行われた。チャールズ国王はエリザベス女王死去と同時に即位。5月6日にロンドンにあるウェストミンスター寺院で戴冠式が行われた。今回の2度目の戴冠式は「スコットランドの王位の宝石」を受けとるための儀式である。5月6日の戴冠式と比較すると小規模ではあるものの、チャールズ国王、カミラ王妃に加え、ウィリアム王子、キャサリン妃も参列し、華やかに繰り広げられたのだが……。

 


スコットランド戴冠式で、王冠を前にするチャールズ国王。

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こちら↓の写真を見て、「あれっ?」と思うかもしれない。

国王を始め3人が儀式用ローブを着用する中、キャサリン妃だけがドレス姿である。

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Catherine Walkerのコートドレスを着て出席したキャサリン妃。

5月6日の戴冠式では、キャサリン妃も儀式用ローブ(マント)を着用していたにもかかわらず…である。 


ブルーと赤のローブは、ロイヤル・ヴィクトリアン騎士団を象徴するもの。キャサリン妃は、2019年、エリザベス女王から「ロイヤル・ヴィクトリア勲章」最高位の「デイム・グランド・クロス」を授与した。

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不思議に思ったロイヤルウォッチャーは多かったが、この謎についてHello Magazineを始めとするメディアが詳細に伝えている。

チャールズ国王、カミラ王妃、ウィリアム王子の3人は、スコットランドの騎士団である「シッスル騎士団」のメンバーである。スコットランド戴冠式で3人が着用したのは「シッスル騎士団」のローブだったが、キャサリン妃は「シッスル(アザミ)騎士団」のメンバーではないので着用できないのだ。

シッスル騎士団とは?

イギリスには数種類の勲章があるが、スコットランド最高の勲章「シッスル勲章」は、イギリスにおいてイングランドの「ガーター勲章」に次ぐ2番目の高位勲章である。

 


サッシュ(たすき)につけられた「シッスル勲章」。

「シッスル勲章を授与されること」=「シッスル騎士団のメンバーに任命されること」を意味しており、シッスル勲章の授与権は国王だけが有している。

 


カミラ王妃は6月に、夫・チャールズ国王によってシッスル勲章を授与された。

BBCの報道によると、スコットランド国王ジェームズ7世(イングランドおよびアイルランド国王ジェームズ2世)が1687年にシッスル騎士団を創設したとされているが、もっと古い歴史をもつ可能性もあるという。

エディンバラのセント・ジャイルズ大聖堂はシッスル勲章の礼拝を主催しており、この勲章について「伝統的にスコットランド人またはスコットランド人の祖先を持つ人々に与えられる」と説明している。基本的には国(スコットランド)に貢献したり、公職に就いた個人に授与される。

正規の騎士団は最大16人まであるが、王室メンバー等「特別団員」は16名規定の中には入らない。1987年以降、エリザベス女王は女性にもシッスル勲章を授与している。

 


シッスル騎士団のローブをまとった故エリザベス女王。

現在イギリス王室メンバーでシッスル勲章を授与されているのはチャールズ国王、カミラ王妃、アン王女、ウィリアム王子の4名だ。将来的にキャサリン妃にもシッスル勲章が授与されるかは未定だが、今回のカミラ王妃の例を見る限り、ウィリアム王子即位時にはその可能性が高いだろう。

ちなみにイギリスにおけるキャサリン妃の正式称号は、王位継承権首位・またはその配偶者に与えられる「プリンセス・オブ・ウェールズ」だが、スコットランドにおいては「ロスシー公爵夫人」という称号も有している。

イギリスは「4つの構成国(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)」からなる「連合王国(United Kingdom)」ゆえ、複雑な歴史と文化的遺産をもっている。今回、5月に行われた戴冠式とは別にスコットランド戴冠式が行われたことからも分かるように、儀式から日常生活に至るまで「4つの構成国」各々に尊重と配慮が見られる。イギリスならではの特徴であり、興味深い点と言えるだろう。

【次ページ】映像で見る「スコットランド戴冠式」

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「スコットランド戴冠式」の主要場面を3分46秒でまとめたハイライト動画はこちら↓から。